MRIによる質的診断の基本事項
・臨床所見、他の画像所見の把握。
→MRIのみで診断しない。
・無理に良悪性鑑別を行わない(カテゴリー判定を行う)。
→臨床所見や他の画像所見との乖離がある場合には注意。
・組織学的診断が必要と考えられる病変には、まずMRIを行うことを勧める。
→穿刺、生検による所見の修飾の回避。不必要な生検の回避。組織学的診断法の選択や部位の決定、新たな病変の同定のために。
MRIにて生検を回避できる場合 (カテゴリー 1-3)
濃染のない病変
- マンモグラフィの石灰化病変は除く
- 元々病変がない(超音波での非腫瘤性病変)
- 古い線維腺腫、fibrous disease
- USでの乳管内または嚢胞内の充実部(clot)
脂肪を含む腫瘤
- 非腫瘤性病変はのぞく。(DCISなどあり)
- 乳房内リンパ節、過誤腫、oil cyst
典型的な良性所見
- 隔壁様構造があり、漸増性に均一に染まる(C2-3)
MRI撮像法と注意点
・両側乳房を同時に撮影する。
・T1WI、T2WI、ダイナミック撮像が必須。
・乳房は脂肪が多いため、腫瘍性病変を明瞭に描出するためには、脂肪抑制併用での撮影を行うか、造影前後の画像をサブトラクションすることにより、背景脂肪を除いた画像を作り評価することが重要。
・MIP像の作成も病変の位置関係が分かりやすくなる。
・ダイナミックでは早期相がとにかく重要。良性や背景は遅延性に造影されるが、多くの乳癌は早期に造影される。
・乳癌では細胞密度高く、拡散が制限されることから、拡散強調像の撮影が有用(DWI高信号、ADC低下を示す)
両側乳房撮影
・対側乳房の検索が可能。
・両側同時多発癌は3−5%に見られる。
・MRでのみ検出可能な病変あり。
・乳腺症の診断が容易。
・乳腺症は左右対称性。
T2強調像
・コントラスト向上のため脂肪抑制を併用。STIRでも可。
・乳房は脂肪が豊富であり、腫瘍性病変を明瞭に描出するためには、脂肪抑制併用での撮像が必要。
・乳癌の検出能は低い。
・乳癌は乳腺実質と等信号で描出は困難。
- 嚢胞性病変
- 粘液腫様間質を有する線維腺腫
- 粘液癌
T2強調像で高信号を示す充実性腫瘤を認めたら…
- 高信号とは乳房内の静脈と同程度の信号強度のこと。
- まず線維腺腫を考慮し、粘液癌を否定して行く方向で。
T1強調像
・乳癌の検出能は低い。
・乳癌は乳腺実質と等信号で描出は困難。
・脂肪化乳腺では腫瘤の検出、形状、辺縁の評価に有用。
・腫瘤内の脂肪の描出に有用。
・脂肪は高信号を示す。脂肪抑制で信号低下。
・脂肪を含む病変は良性。→脂肪腫・過誤腫
・乳房内リンパ節の同定(リンパ節門の脂肪の確認)
・血性乳汁、嚢胞内出血などに見られるメトヘモグロビンも高信号を示す。
【最重要】ダイナミックMRI
Time intensity curve
・乳癌の多くは早期に濃染し、後期に漸減性の増強効果を示す。
・乳腺は漸増性の増強効果を示す。
・2分までを早期相、2分以降を後期相(2-8分。できたら5−7分)という。
静注開始後1−2分(早期相)
・乳癌の描出能が最も高い。
・1分を第一早期相、2分を第2早期相と呼ぶ事あり。
・2分を超える場合、早期相でのpeakを捉えられず、washout patternを見逃す可能性あり。
後期相
・後期相の解析は良悪性判定の特異度が高い。
・後期相とは2分-8分(できたら5-7分で判定)
・persistent:早期に濃染後、増強効果が更に増加。良性に多い。
・plateau:早期に濃染後、増強効果が横ばい。乳癌でも良性でもあり。
・washout:早期に濃染後、増強効果が減少。乳癌に多い。
差分画像(subtraction法)
・乳房内には脂肪組織が多いので、ダイナミックMRIの撮像には脂肪抑制を使用した方が病変の増強効果を捉えやすい。
・脂肪抑制を使用できない場合は、subtraction法を用いる。
DWI
・乳癌は細胞密度が高く、拡散が制限されるため、DWIにて高信号、ADCが低下することから検出や良悪性鑑別に有用といわれる。
・ただし、現時点では診断の確実性が低く、BI-RADSでの評価には用いられていない。
参考)乳癌発症ハイリスクグループに対する乳房MRIスクリーニングに関するガイドラインver.1.0 (日本乳癌検診学会、乳癌MRI検診検討委員会)