先に結論:下大静脈後尿管
- 下大静脈後尿管は右の尿管が下大静脈の後ろを回り込んで内側を下る先天異常で、下大静脈の発生異常が原因です
- 右の水腎症の原因になることがあり、尿路造影で上部尿管がL3付近で内側へ曲がる釣り針状(S字状)の形が見られます
- CT(特に排泄相)で尿管が下大静脈の後ろを通ることを確認すれば診断でき、症状や腎機能低下があれば手術を考えます
下大静脈後尿管(retrocaval ureter)
- 右側の尿管が下大静脈の背側を走行し、内前方に出たあと、下大静脈の前内側に沿って下降する先天異常。下大静脈の発生異常が原因。
- 屈曲部より近位部の右腎盂と上部尿管が拡張する。
- 尿管はL3の高さでS状に走行する。下大静脈の後ろを回る高さにより、低位ループ型(I型)と高位ループ型(II型)に分けられ、I型が多く、20例の手術例では19例がI型であった(Gao 1998)。
- 尿管が単に下大静脈の後方に位置するだけではなく、部分的に取り囲むので、circumcaval ureterと呼ばれる。
- 男性に多く(男女比3:1)、発生頻度は約1000出生に1人と推定される(Pérez-Bertólez 2025)。
- 20〜40歳で診断されることが多い(Pérez-Bertólez 2025)。
- 尿管閉塞による側腹痛や水腎症、感染を合併したり、尿管結石を合併することあり。
- 検診で水腎症で偶然発見されることもある。約2割に心血管系や泌尿生殖器系などの他の先天異常を合併すると報告されている(Perimenis 2002)。
- ただし、尿管の狭窄〜閉塞を合併しない例もある。
下大静脈と右尿管の正常な走行(なぜ後ろを通るのか)
下大静脈(かだいじょうみゃく)は大動脈の右側を上行して心臓へ戻る静脈で、右尿管は通常その外側を下ります。胎児期に右下主静脈が下大静脈として残ると、尿管が後ろを回り込みます(Pérez-Bertólez 2025)。
下大静脈後尿管の画像診断
- 右尿管の内側偏位と水腎症を認める。
- 尿管の狭窄〜閉塞を合併する場合は、排泄性尿路造影では、上部尿管の拡張とその先端の釣針様変形を認める。
- CTでは、右側尿管がL3椎体レベルで下大静脈の背側を走行することが確認できる。尿管が造影剤で満たされる排泄相で撮影する。
下大静脈と右尿管の続きをシェーマで表すと以下のような位置関係である。

下大静脈後尿管でよくある疑問(Q&A)
Q. 「後大静脈」とは?
A. 動物の解剖学で使う名前で、ヒトの下大静脈に当たります。なお英語のureterは「尿管」です。
Q. 手術は必要ですか?
A. 症状があれば手術(腹腔鏡などで尿管をつなぎ直す)が選ばれます(Pérez-Bertólez 2025)。
※わき腹の痛みや血尿が気になるときは、医療機関を受診してください。
関連記事:尿管瘤とは?画像診断のポイントは?
参考文献
- Pérez-Bertólez S, Salcedo P, Tapia L, et al. Retrocaval ureter: a narrative review. Transl Androl Urol. 2025;14(8):2456-2466. PubMed
- Perimenis P, Gyftopoulos K, Athanasopoulos A, et al. Retrocaval ureter and associated abnormalities. Int Urol Nephrol. 2002;33(1):19-22. PubMed
- Hoffman CF, Dyer RB. The “fish hook” sign of retrocaval ureter. Abdom Radiol (NY). 2018;43(3):755-757. PubMed
- Gao B, Ma T, Dong K, et al. [Retrocaval ureter]. Zhonghua Wai Ke Za Zhi. 1998;36(3):136-7. PubMed
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