先に結論:炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT)

  • IMTは筋線維芽細胞の増殖と炎症細胞の浸潤からなる中間悪性(局所再発しうる)の腫瘍で、小児・若年成人の肺に最も多く、腸間膜・大網・後腹膜・肝などにもできます
  • 約半数でALKが陽性になり、発熱・体重減少・貧血・炎症反応上昇を伴うことがあります
  • 画像は境界明瞭で不均一に造影される腫瘤と非特異的で、悪性リンパ腫・肉腫などとの区別は生検が必要です。治療は完全切除が基本で、ALK陽性の切除困難例にはALK阻害薬が使われます
  • 膀胱のIMTは血尿で見つかることが多く、筋層や膀胱の外へ広がって進行した膀胱癌に似て見えることがあるため、画像だけで判断せず経尿道的切除の病理(ALK染色など)で確かめます

炎症性筋線維芽細胞性腫瘍

・inflammatory myofibroblastic tumor:IMT。炎症性偽腫瘍(原因の異なる炎症性腫瘤の総称)のうち、腫瘍性のものと位置づけられる。

・リンパ球、組織球、形質細胞、好酸球など種々の程度の炎症細胞浸潤と間質の膠原線維増生を伴った筋線維芽細胞の増殖からなる。

・良悪性の中間群に分類される腫瘍性病変。

・小児、若年成人の肺>肝、大網、腸間膜・大網、眼窩、後腹膜、皮膚、消化管、軟部組織、神経系、内分泌系器官に好発することが知られている.

・検査所見では貧血・炎症反応の上昇などを認める。

・肺外のIMTでは、時に発熱、体重減少、貧血などの全身症状をきたす。

・病理組織学的には紡錘形細胞の渦状の配列がみられ、種々の程度にリンパ球や形質細胞の浸潤がみられる。

・免疫染色でVimentin、α-SMAなどが陽性となり、IMTのマーカーとしてALKが約半数(56%との報告)で陽性となるとされている。

・59例の検討では、ALK陽性は局所再発と関連した一方、遠隔転移した6例はすべてALK陰性でした。p53など他のマーカーは形態や経過とよく相関しませんでした(Coffin 2007)。

・中間悪性(局所再発しうるが転移は稀)の腫瘍であり、lymphomaやcarcinoidと予後や治療方針が大きく異なる。

・治療は外科的切除が原則である。根治切除であれば予後良好であるが、核出術などで不完全切除である場合は局所再発しやすいとされる。特に肺外のIMTに多い。

・稀ではあるが、遠隔転移(脳、肺、肝臓、骨)や浸潤性に発育した症例も報告ある。

画像所見

・CT では境界明瞭で内部吸収値は不均一、大きくなると壊死伴うことがある。また、時に石灰化を伴うこともある。造影効果は一定の傾向にない。

・MRIではT1強調画像で筋と等信号、T2 強調画像にて軽度高信号を呈することが多いが,線維化と炎症細胞浸潤の程度により様々である。画像所見は炎症細胞・間質・筋線維芽細胞の成分の割合を反映し、境界不明瞭な浸潤性病変から境界明瞭な軟部腫瘤まで幅がある。

膀胱のIMT:膀胱癌との見分け

泌尿器・生殖器のIMT167例では膀胱が106例と最も多く、症状や画像は泌尿器の癌と似ていました(Moring 2024)。中高年にもみられ、血尿で見つかるため、画像だけで膀胱癌と分けることはできません。

項目 膀胱・尿路のIMTの報告
年齢・症状 尿路のIMT46例は3〜89歳(平均53.6歳)(Montgomery 2006)。膀胱の42例では31例が血尿(Harik 2006)、9例では55.6%が貧血を伴った(Teoh 2015)
きっかけ 最近の内視鏡操作・手術歴が46例中8例(Montgomery 2006)
広がり 筋層浸潤41%、壊死30%(Montgomery 2006)。CTで膀胱周囲脂肪の毛羽立ちを伴い、cT3の膀胱癌に見えた例もある(Chen 2026)
病理・経過 ALK陽性57%。32例中10例で再発したが、典型的なIMTで転移した例はなかった(Montgomery 2006)

画像上のT分類で全摘などを決める前に、経尿道的切除で病理(ALK染色)を確かめることが勧められています(Chen 2026)。初診時に癌と誤診され放射線・化学療法を受けた例(Harik 2006)や、IMTと肉腫様の尿路上皮癌が同時にみられた例(Montgomery 2006)もあります。血尿が出たときは、痛みがなくても泌尿器科を受診してください。

似た名前の腫瘍との違い

「筋線維芽細胞」がつく腫瘍はいくつかあり、名前が似ていても性質は違います。

名前 性質 特徴
炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(IMT) 中間悪性 炎症細胞が多く混じる。小児・若年成人の肺や腹部に多い。ALK陽性が約半数
筋線維芽細胞腫(myofibroblastoma) 良性 乳腺(男性にもできる)に多い。乳腺の外にできるものは乳腺型筋線維芽細胞腫と呼ばれ、鼠径部などにみられる
低悪性度筋線維芽細胞肉腫(myofibrosarcoma) 悪性(低悪性度) 筋線維芽細胞の性質をもつ肉腫。18例の検討では年齢中央値42歳で、口腔(舌)や手足に多く、痛みのない大きくなる腫瘤として見つかった(Mentzel 1998)

「悪性筋線維芽細胞腫」「筋線維芽細胞腫」と検索される病気は、IMTではなく表の2段目・3段目の腫瘍を指していることがあります。病理診断の名前を正確に確認することが大切です。

症例 10歳代女性 発熱・全身の痛み

炎症性筋線維芽細胞性腫瘍 造影CT 横断像
引用:Radiopaedia(Inflammatory myofibroblastic tumor)

造影CTの横断像です。右骨盤内に境界明瞭で分葉状の大きな腫瘤があり、内部は不均一に造影されています。手術で盲腸に癒着した腫瘤が見つかり、病理で炎症性筋線維芽細胞性腫瘍と確認された症例です。

参考文献

  1. Coffin CM, Watterson J, Priest JR, et al. Extrapulmonary inflammatory myofibroblastic tumor (inflammatory pseudotumor). A clinicopathologic and immunohistochemical study of 84 cases. Am J Surg Pathol. 1995;19(8):859-72. PubMed
  2. Coffin CM, Hornick JL, Fletcher CD. Inflammatory myofibroblastic tumor: comparison of clinicopathologic, histologic, and immunohistochemical features including ALK expression in atypical and aggressive cases. Am J Surg Pathol. 2007;31(4):509-20. PubMed
  3. Surabhi VR, Chua S, Patel RP, et al. Inflammatory Myofibroblastic Tumors: Current Update. Radiol Clin North Am. 2016;54(3):553-63. PubMed
  4. Mentzel T, Dry S, Katenkamp D, et al. Low-grade myofibroblastic sarcoma: analysis of 18 cases in the spectrum of myofibroblastic tumors. Am J Surg Pathol. 1998;22(10):1228-1238. PubMed
  5. Moring N, Swerdloff D, Htoo A, et al. Inflammatory myofibroblastic tumor of the genitourinary tract: a narrative review. Transl Androl Urol. 2024;13(2):308-319. PubMed
  6. Montgomery EA, Shuster DD, Burkart AL, et al. Inflammatory myofibroblastic tumors of the urinary tract: a clinicopathologic study of 46 cases, including a malignant example inflammatory fibrosarcoma and a subset associated with high-grade urothelial carcinoma. Am J Surg Pathol. 2006;30(12):1502-12. PubMed
  7. Harik LR, Merino C, Coindre JM, et al. Pseudosarcomatous myofibroblastic proliferations of the bladder: a clinicopathologic study of 42 cases. Am J Surg Pathol. 2006;30(7):787-94. PubMed
  8. Teoh JY, Chan NH, Mak SM, et al. Inflammatory myofibroblastic tumours of the urinary bladder: multi-centre 18-year experience. Urol Int. 2015;94(1):31-6. PubMed
  9. Chen HX, Liu SL, Huang CP, et al. Inflammatory Myofibroblastic Tumor of the Urinary Bladder Presenting as a Radiological cT3 Mass: A Case Report and Narrative Review of 89 Cases. In Vivo. 2026;40(5):3191-3204. PubMed

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