腎機能の悪い人にはヨード造影剤を用いた造影CTを行うことができません。

特に重度腎機能障害の人には禁忌(行ってはならない)となります。

では、

  • なぜ腎機能の悪い人に造影CTを行うといけないのか?
  • 重度腎機能障害とは具体的にどの程度の人なのか?
  • 重度じゃないけれども腎機能の悪い人は通常通り行ってもいいのか?

などと様々な疑問が生じてきます。

そこで今回は、「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012」に基づき、造影CTと腎機能の関係についてまとめました。

なぜ腎機能の悪い人に造影CTはいけないのか?

それは造影CTで用いるヨード造影剤により腎機能がさらに悪くなる可能性があるからです。

これを造影剤腎症(ぞうえいざいじんしょう)と言います。

英語ではcotrast induced nephropathy、つまり「造影剤が誘発した腎障害」という意味で、英語の頭文字をとって、CINと呼ばれることもあります。

造影剤腎症の定義

これは、造影剤を使用してから72時間以内に

  • 血清Cre(クレアチニン)の値が0.5mg/dl以上もしくは25%以上上昇したもの(腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012 P3)。

と定義されています。

実はこの造影剤腎症による腎機能の増悪は一時的なもので、1-2週間で元の値(機能)に戻るとされています。

ただし、中にはそのまま増悪して透析の導入が必要となることもあるので注意が必要なのです。

 

造影CTを腎機能低下・腎機能障害の人に行う場合の基準は?

重度腎機能障害の人にはCTのヨード造影剤を用いることはできません。

では、その基準値はいくらなのでしょうか?

腎機能はしばしばクレアチニン(Cre)で評価され、上の造影剤腎症の定義もクレアチニン(Cre)により規定されています。

しかしこのクレアチニンは日内変動が10%程度あり、運動をした場合や、肉を大量に食べた場合に上昇し、逆にたんぱく質摂取を制限した時には低くなります。

ですので、近年血清クレアチニン(Cre)値と年齢、性別の3要素から糸球体濾過量を推測するeGFR(読み方はイージーエフアール、estimated glomerular filtration rateの略)を用いて、次のように規定されています。

  • eGFR<60 では造影CTによる造影剤腎症のリスクを増加させる可能性が高い。
  • 特にeGFR<45で行う場合は、造影剤腎症のリスクを患者さんに説明して、検査前後に点滴などの予防策を行う。(腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012 P42)。

とされています。(eGFRの単位はいずれもml/min/1.73㎡)

また、eGFR<30では重度腎障害があるとし、一般的に造影CTは行いません

ただし、ここは施設にもより、腎臓内科の医師の診察の上や立会のもとで必要に応じて造影CTが行われることもあります。

eGFR<45で造影CT検査を行う場合の造影剤腎症の予防策とは?

現状、有効性が認識されているのは、上に述べた点滴(輸液)のみです。

ただし、点滴として具体的に何を用いるかは明確には決まっていません。

そこで、生理食塩水や重曹などの血液と等張性の輸液成分を造影CTの検査前後で行われることが推奨されています。

外来で造影CTを行う場合でも、飲水よりは、可能な限り検査前後で点滴が望まれます。

腎機能低下以外で造影剤腎症のリスクには何がある?

  • 加齢
  • 腎機能低下を伴う糖尿病
  • 利尿薬(特にループ阻害)
  • NSAIDs
  • ビグアナイド(乳酸アシドーシス)

が報告されています。(腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2012 P6-12)。

 

最後に

腎機能低下の有無にかかわらず、造影剤を用いてCTスキャン検査を行うのは、それを上回るメリットがある場合に限ります。

 

CTの造影剤であるヨード造影剤は腎機能低下の人に用いる場合には注意が必要です。

特にeGFR<45の場合には、輸液による予防策が必要とされています。

よほど緊急の場合を除き、腎機能がわからない状態で造影CTをするのはもちろんNGです。

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