先に結論:腎機能が低下した人の造影CT

  • ヨード造影剤のあとに起こる腎機能の悪化は、以前の造影剤腎症(CIN)に代わって、造影後急性腎障害(PC-AKI)や造影剤関連急性腎障害(CI-AKI)と呼ばれ、投与後48〜72時間以内のクレアチニン上昇で判断します。多くは軽く、一時的です
  • 造影剤のせいで腎障害が起こる危険は、以前考えられていたより小さいことがわかってきました。米国放射線学会(ACR)と米国腎臓財団(NKF)の合意声明では、静脈からの造影CTで予防の点滴(生理食塩水)をするのは、eGFR 30mL/分/1.73m²未満(透析中を除く)か急性腎障害のある人、eGFR 30〜44は高リスクの場合に個別に検討、としています
  • クレアチニンの値だけで「いくつ以上はダメ」という一律の基準はありません。クレアチニンに年齢・性別を加えて計算するeGFRで判断し、静脈からの造影CTではeGFR 30未満と急性腎障害が主な注意の目安です(早見表は本文)
  • 造影剤が必要な検査を腎機能だけを理由に一律に中止するのではなく、利益と危険を比べて判断します。国内のガイドラインもあるので、具体的な基準は最新版を確認してください。腎臓の数値が悪いと言われている方は、検査前に必ず担当医に伝えてください

腎機能の悪い人では、ヨード造影剤を用いた造影CTを慎重に判断する必要があります。

特に重度腎機能障害の人では、検査の必要性を慎重に検討したうえで、輸液などの予防策を行います。

では、

  • なぜ腎機能の悪い人に造影CTを行うといけないのか?
  • 重度腎機能障害とは具体的にどの程度の人なのか?
  • 重度じゃないけれども腎機能の悪い人は通常通り行ってもいいのか?

などと様々な疑問が生じてきます。

そこで今回は、造影CTと腎機能の関係について、国内外のガイドラインや臨床試験をもとにまとめました。

腎臓の数値が少し悪いって言われてるけど、造影CTは受けられる?

腎機能(eGFR)によっては、造影剤の量を減らしたり、前後に点滴をしたりします。事前に検査を受ける病院へ必ず伝えてくださいね。

なぜ腎機能の悪い人に造影CTはいけないのか?

それは造影CTで用いるヨード造影剤により腎機能がさらに悪くなる可能性があるからです。

これを以前は造影剤腎症(ぞうえいざいじんしょう)と呼んでいました。

英語ではcontrast induced nephropathy、つまり「造影剤が誘発した腎障害」という意味で、英語の頭文字をとって、CINと呼ばれます。

現在は、造影剤のあとに起こった腎機能の悪化を広く造影後急性腎障害(PC-AKI)と呼び、造影剤が原因と示せる場合を造影剤関連急性腎障害(CI-AKI)と呼び分けることが勧められています3)。造影剤のあとに腎機能が悪くなっても、実際には病気そのものや脱水、ほかの薬など別の原因によることが多いと考えられているためです。

造影剤腎症の定義

以前は、造影剤を使用してから3日以内に

  • 血清Cre(クレアチニン)の値が0.5mg/dl以上もしくは25%を超えて上昇したもの

と定義されていました。

現在は、急性腎障害の国際的な基準(KDIGO)にそろえて、造影剤投与後48〜72時間以内に

  • 血清Creが0.3mg/dl以上、または元の値の1.5倍以上に上昇したもの

で判断することが勧められています3)。

この腎機能の悪化は多くが軽く、2〜3日でピークとなり、通常1〜3週間で元の値(機能)に戻るとされています3)。

透析が必要になるのはまれですが、腎機能がもともと悪い人では注意が必要です。

 

造影CTを腎機能低下・腎機能障害の人に行う場合の基準は?

腎機能が悪い人でも、ヨード造影剤が一律に使えないわけではなく、必要性を慎重に検討したうえで、必要なら予防策をとって使用します。

では、その基準値はいくらなのでしょうか?

腎機能はしばしばクレアチニン(Cre)で評価され、上の造影剤腎症の定義もクレアチニン(Cre)により規定されています。

しかしこのクレアチニンは日によって変動があり、運動をした場合や、肉を大量に食べた場合に上昇し、逆にたんぱく質摂取を制限した時には低くなります。また筋肉量が極端に多い人・少ない人では、クレアチニンからの推算があてにならないことがあります3)。

ですので、血清クレアチニン(Cre)値と年齢、性別の3要素から糸球体濾過量を推測するeGFR(読み方はイージーエフアール、estimated glomerular filtration rateの略)を用いて判断します。

  • 造影CTを受けた人と受けなかった人を比べた大規模な研究では、eGFR 30以上では造影剤による腎障害の増加ははっきりしませんでした。eGFR 30未満で危険が増えるかどうかは、結論が分かれています3)。
  • 米国放射線学会(ACR)と米国腎臓財団(NKF)の合意声明では、維持透析を受けていないeGFR 30未満の人と急性腎障害(AKI)のある人には生理食塩水による予防の点滴を行い、eGFR 30〜44では高リスクの場合に主治医の判断で検討するとしています2)。

とされています。(eGFRの単位はいずれもmL/分/1.73㎡)

一方、カテーテルで腎臓に近い動脈から造影剤を入れる検査(心臓カテーテルなど)では、より高いeGFRの値から予防策を考えることが勧められています3)。

eGFRの目安 早見表(静脈からの造影CT)

欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)の指針4)と、ACR・NKFの合意声明2)をもとに、静脈から造影剤を入れる一般的な造影CTの目安をまとめると次のようになります。(eGFRの単位はmL/分/1.73㎡)

腎機能 考え方の目安
eGFR 45以上 静脈からの造影CTでは、腎機能を理由に特別な予防策をとらないことが多い
eGFR 30〜44 ACR・NKFでは、ほかに危険因子が重なる高リスクの場合に予防の点滴を個別に検討2)
eGFR 30未満(透析をしていない) 静脈からの造影でも危険因子とされ4)、造影剤を使わない検査で代わりにならないかを検討し、行う場合は予防の点滴を考える2)
急性腎障害(AKI)がある・疑われる eGFRの値にかかわらず危険因子。検査の必要性を慎重に判断する2)4)
維持透析中 造影剤を使っても透析の予定を変える必要はないとされる4)

なお、ESURの指針では、カテーテルで腎臓の上流の動脈(左心系や腎動脈より上の大動脈など)から造影剤を入れる検査や、集中治療室の患者ではeGFR 45未満を危険因子としています4)。

クレアチニンの値だけで決めないのはなぜ?

同じクレアチニンの値でも、年齢・性別・筋肉の量によって実際の腎臓の働きは大きく変わります。高齢の小柄な人では、クレアチニンが少し高いだけでもeGFRはかなり低いことがあります。そのため「クレアチニンがいくつ以上は禁忌」という決め方ではなく、eGFRで判断するのが一般的です。

腎機能の検査値はいつのものを使う?

ESURの指針では、予定された検査の場合、急な病気の人・持病が急に悪くなった人・入院中の人は造影の7日以内、それ以外の人は3か月以内に測ったeGFRを使うとしています。緊急の検査で結果を待てない場合は、eGFR 30未満の人に準じた対応をできる範囲で行うとしています4)。

国内にも「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン」があります1)。具体的な基準や予防の方法は改訂されることがあるので、最新版を確認してください。

ただし、ここは施設にもより、腎臓内科の医師の診察の上や立会のもとで必要に応じて造影CTが行われることもあります。

造影CT検査を行う場合の造影剤腎症の予防策とは?

予防策として中心になるのは点滴(輸液)です。

腎機能が低下した人では輸液で造影後の腎障害の危険が下がるとされ、点滴の種類としては生理食塩水と重曹(炭酸水素ナトリウム)の効果は同程度とされています。一方、腎障害を防ぐ効果が一貫して示された薬はありません4)。

ただし、輸液の必要性そのものも見直されています。eGFR 30〜59の患者660例を対象としたAMACING試験では、予防輸液なしは生理食塩水の輸液に対して非劣性で(造影剤腎症2.6% vs 2.7%)、輸液による合併症が5.5%にみられました5)。また、血管造影を受ける高リスク患者のPRESERVE試験では、重曹は生理食塩水に、N-アセチルシステインはプラセボに比べて有益性を示しませんでした6)。

このため、予防の点滴はすべての腎機能低下の人に一律に行うのではなく、eGFRや急性腎障害の有無をみて、点滴による合併症の可能性も考えて判断します。

腎機能低下以外で造影剤腎症のリスクには何がある?

もっとも重要な危険因子は腎機能の低下で、ほかに脱水も重要とされています3)。また、短い間隔(48〜72時間以内)で造影剤をくり返し使うと危険が高まるとされています3)。

加齢や糖尿病などもあげられてきましたが、造影剤を使わなかった人と比べた研究では、造影剤に特有の危険因子とまでは言えないとされています3)。

なお、糖尿病の薬のメトホルミン(ビグアナイド)は腎障害の危険因子ではなく、乳酸アシドーシスを避けるための注意が必要な薬です。欧州泌尿生殖器放射線学会(ESUR)の指針では、eGFR 30未満の人は造影剤の投与時からメトホルミンを中止するとしています4)。また、透析中の人は造影剤を使っても透析の予定を変える必要はないとされています4)。

 

造影CTでよくある疑問(Q&A)

Q. 造影剤を使うと腎臓は本当に悪くなるの?

造影CTを受けた人と造影剤を使わないCTを受けた人を比べた28の観察研究・約10万7千人のメタ解析では、造影CTで急性腎障害(オッズ比0.94)、透析などが必要になる危険、死亡はいずれも増えていませんでした7)。造影のあとに腎機能が悪くなる人の多くは、もともとの病気や脱水など、造影剤以外の要因が関わっていると考えられています。ただし、eGFR 30未満の人や急性腎障害のある人については、慎重な判断が必要です。

Q. 造影CTのあとに気をつけることは?

医師から水分制限を指示されていなければ、検査の前後に水分をしっかりとるよう案内されることが多いです。腎機能が低い人では、検査の数日後に血液検査でクレアチニンを確認することがあります。検査後に尿の量が極端に減った、むくみが強くなったなど気になる症状があれば、検査を受けた医療機関に相談してください。
 

最後に

腎機能低下の有無にかかわらず、造影剤を用いてCTスキャン検査を行うのは、それを上回るメリットがある場合に限ります。

 

CTの造影剤であるヨード造影剤は腎機能低下の人に用いる場合には注意が必要です。

静脈からの造影CTでは、特にeGFR<30の人や急性腎障害のある人で輸液による予防策を考えます。

よほど緊急の場合を除き、腎機能がわからない状態で造影CTをするのはもちろんNGです。

あわせて読みたい:乳酸アシドーシスとは?初期症状・原因(メトホルミンなど)と乳酸値の基準、診断・治療をわかりやすく解説、CT造影剤(ヨード造影剤)は何時間で排出される?4時間で約80%・24時間でほぼ全量、透析・腎機能低下時と胆のうへの排泄、腎性低尿酸血症と運動後急性腎不全(急性腎障害)のCT所見

参考文献

  1. Isaka Y, Hayashi H, Aonuma K, et al. Guideline on the use of iodinated contrast media in patients with kidney disease 2018. Jpn J Radiol. 2020;38(1):3-46. PubMed
  2. Davenport MS, Perazella MA, Yee J, et al. Use of Intravenous Iodinated Contrast Media in Patients with Kidney Disease: Consensus Statements from the American College of Radiology and the National Kidney Foundation. Radiology. 2020;294(3):660-668. PubMed
  3. van der Molen AJ, Reimer P, Dekkers IA, et al. Post-contrast acute kidney injury – Part 1: Definition, clinical features, incidence, role of contrast medium and risk factors : Recommendations for updated ESUR Contrast Medium Safety Committee guidelines. Eur Radiol. 2018;28(7):2845-2855. PubMed
  4. van der Molen AJ, Reimer P, Dekkers IA, et al. Post-contrast acute kidney injury. Part 2: risk stratification, role of hydration and other prophylactic measures, patients taking metformin and chronic dialysis patients : Recommendations for updated ESUR Contrast Medium Safety Committee guidelines. Eur Radiol. 2018;28(7):2856-2869. PubMed
  5. Nijssen EC, Rennenberg RJ, Nelemans PJ, et al. Prophylactic hydration to protect renal function from intravascular iodinated contrast material in patients at high risk of contrast-induced nephropathy (AMACING): a prospective, randomised, phase 3, controlled, open-label, non-inferiority trial. Lancet. 2017;389(10076):1312-1322. PubMed
  6. Weisbord SD, Gallagher M, Jneid H, et al. Outcomes after Angiography with Sodium Bicarbonate and Acetylcysteine. N Engl J Med. 2018;378(7):603-614. PubMed
  7. Aycock RD, Westafer LM, Boxen JL, et al. Acute Kidney Injury After Computed Tomography: A Meta-analysis. Ann Emerg Med. 2018;71(1):44-53.e4. PubMed

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