前立腺肥大症(BPH:benign prostatic hyperplasia/hypertrophy)

  • 前立腺は、50歳くらいから次第に大きくなり、内部の尿道を圧迫し、様々な排尿障害症状をきたす。
  • 前立腺肥大とは、前立腺上皮及び間質細胞の良性増殖による肥大のこと。
  • テストステロンは細胞内で5αリダクターゼによりジハイドロテストステロン(dihydrotestosterone:DHT)に変換されるが、このDHTへの転換が過剰であることが前立腺肥大の原因と考えられている。
  • 症状は、尿路の閉塞症状と、刺激症状が主。
  • 症状を定量化して評価するために、アンケート形式による国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score;IPSS)が使われる。

※IPSSは、残尿感、2時間以内の排尿、尿線の途絶、尿意切迫感、尿勢の低下、排尿時のいきみ、夜間排尿回数の7項目。

  • 直腸診が大事。正常の前立腺は直腸前壁にクルミ大の弾力性のある腫瘤として触れる。圧痛はない。肥大すると中心溝が消失するが弾性硬で表面平滑。

検査

尿検査・血液生化学検査
  • 尿沈渣、尿一般検査。血性クレアチニン。
  • 前立腺特異抗原(PSA:prostate specific antigen)は前立腺癌を鑑別する上で重要。
エコー
  • 経腹的超音波検査あるいは経直腸的超音波検査(transrectal ultrasound;TRUS)で前立腺を観察する。
  • 前立腺の体積が20ml以上を肥大症とすることが多い。
尿流測定
  • 秒単位あたりの最大尿流率(Qmax)を指標にする。前立腺肥大症では、排尿時間の延長と、Qmaxの低下が見られる。
MRI
  • 前立腺肥大の診断で用いられることはないが、PSAが高値の際に、前立腺癌との鑑別に用いられることがある。
  • 前立腺肥大は通常以降域(PZ)に発生する。しかし、サイズが大きくなり外方増殖をして辺縁域に肥大組織が認められることもある。
  • 加齢とともに、中心域(CZ)が萎縮、移行域(TZ)は腫大、相対的に辺縁域(PZ)は圧排され菲薄化する。
  • 辺縁域(PZ)は圧排されても本来のT2WI高信号を保っていることが多い。
  • 腺組織優位型・間質優位型の2つのタイプがある。
  • 腺組織優位型では、移行域(TZ)に境界明瞭な被膜構造で覆われた過形成結節を認める。
  • 間質優位型では、T2強調像で比較的均一な程信号として描出される。
  • 実際はこれらの2つのタイプが混在することが多い。
  • 前立腺内の充実性結節性病変の鑑別としては、前立腺肥大症に伴う過形成結節があり。
  • 前立腺過形成結節は大半は移行域(TZ)に認められ、境界明瞭、類円形で、T2WIでは中等度の高信号(と一部低信号)が混在する。周囲の移行域と同じように造影される。
  • ただし、DWIで高信号を呈したり、早期濃染されwashoutされることもあり、癌との鑑別は困難なことあり。
  • その場合は、癌はT2WIで均一な低信号であることが多く、浸潤性であるのに対して、過形成結節はT2WIで高信号を呈する腺成分を含み、境界明瞭である点で鑑別する。
  • 前立腺肥大でも、PSAは上昇することが多いため、前立腺容量を測定して、PSA density(PSA/前立腺容量)でフォローすることもある。
  • 前立腺容量V=(横断像での横径)×(矢状断像での縦×横(奥行き))×0.52で計算することができる。
▶症例 70歳代男性 前立腺肥大症

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動画で学ぶ前立腺肥大症

前立腺肥大症の治療法

  • 第1病期:保存的治療(抗アンドロゲン薬、α1受容体遮断薬など)
  • 第2、3病期:手術療法
  • 経尿道的前立腺(電気)切除術(TUR-P)がgold standard。
  • 開放性手術は今日では第一選択ではない。

経尿道的前立腺(電気)切除術(transurethral resection of prostate (TUR-P))

  • 現在では、本法が前立腺肥大症に対する手術療法のgold standard。
  • 非常に有効な治療だが、十分切除し、かつ、切りすぎないようにするのがポイントとなり、術者の腕が非常にモノを言う。
  • 術後合併症として、大量の出血、精巣上体炎、真性尿失禁、尿道狭窄あり。

高齢男性における排尿困難の原因

  • 前立腺肥大症
  • 前立腺癌
  • 神経因性膀胱
  • 尿道狭窄
  • 低活動性膀胱

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