高いところから飛び降りた際など、足に強い衝撃が加わり、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を起こすことがあります。
文字通り踵(かかと)の骨が折れることなのですが、足の骨にも種類がたくさんありますので、どこの部分の骨がどのように折れるのが分かりにくいですよね。
そこで今回は、踵骨骨折(英語表記で「Calcaneal fracture」)について
- 症状
- 分類
- 診断
- 治療
- 治療期間
などを図(イラスト)と実際のレントゲン・CT画像を用いて解説したいと思います。
先に結論:踵骨骨折のX線・CT
- 踵骨骨折は、高い所から飛び降りて・落ちてかかとから着地したときに起こる骨折で、足根骨の骨折で最も多く、関節面(後距踵関節)に骨折線が及ぶことが多いのが特徴です
- レントゲン側面像のベーラー角(Böhler角)の減少が手がかりで、CTで関節面の壊れ方を評価し(Sanders分類など)、手術するかを判断します
- 同じ転落で腰椎の圧迫骨折・反対側の踵骨骨折を伴うことがあるため、あわせて確認します。治療期間は数か月かかり、歩行時の痛みが残ることもあります
※高い所から落ちてかかとが痛み体重をかけられないときは、すぐに整形外科を受診してください。
踵骨骨折とは?
踵骨骨折は、高所から飛び降りた際などに、踵(かかと)から着地して(踵に強い衝撃を受け)起こる足の骨折です。
踵骨は、足の後方にあり、踵を触った際に触れる骨のことをいいます。

踵骨は、複雑な形状をしており、関節面の占める割合が大きいため、骨折線がその関節面にまで及んでしまうことが多くあるのです。踵骨は足根骨のなかで最も骨折が多い骨で、全骨折の約2%を占めます。踵骨骨折の70〜75%は軸圧による関節内骨折で、関節外骨折は25〜30%です(Daftary 2005)。
踵骨骨折の症状は?
踵(かかと)に
- 強い疼痛
- 発赤
- 腫脹
- 皮下出血
などが見られます。
そのため、踵に荷重がかけられなくなり、歩行に差し支えの出ることが多くあるようです。
高い所からの転落では、腰椎などの脊椎骨折を一緒に起こしていることがあります。外傷性脊椎骨折358例の検討では43例に踵骨骨折を伴い、その72.09%は腰椎の骨折でした(Boruah 2022)。かかとだけでなく、腰や背中の痛みも確認します。
踵骨骨折の分類は?
先ほど、関節面に骨折線が及ぶこともあると申しましたが、この踵骨骨折は、関節外か内かで分類が異なります。
関節外骨折
外というのは、骨折線が後距踵関節に及ばないものです。
- 踵骨突起骨折
- 骨折が踵立方関節に及ぶもの
などが、この関節外骨折に分類されます。
関節内骨折
こちらは逆に、骨折線が後距踵関節に及ぶものです。
- 転位のないもの
- 舌状型
- 陥没型
- 載距突起単独骨折
- 粉砕型
などが関節内骨折に分類されます。
また踵骨全体像をみて、Essex-Lopresti分類(エセックス・ロプレスティ分類)により、関節陥没型と舌状型に分けられます。
Essex-Lopresti分類:舌状型と関節陥没型の違い
| 舌状型(tongue type) | 関節陥没型(joint depression type) | |
|---|---|---|
| 骨折線の走り方 | 二次骨折線が後方へ抜け、後距踵関節面と踵骨隆起の上部が1つの舌のような骨片になる | 二次骨折線が後距踵関節面のすぐ後ろで上へ抜け、関節面の骨片が単独で陥没する |
| レントゲン側面像 | 後方の骨片が舌状に持ち上がって見える | 関節面が踵骨体部に落ち込み、ベーラー角が減少する |

外から加わった力を示すのが矢印です。
踵骨骨折の診断は?
臨床症状から踵骨骨折を疑い、骨折を確認するために、X線検査やCT検査などの画像検査が必要です。
側面・軸射像・アントセン撮影の3方向からのX線検査により、骨折の状態を診断し、複雑な形状なものはさらに細かく見るためCT撮影をして治療方針が検討されます。関節内骨折では、CTの半冠状断で後距踵関節面の最も広い断面の骨折線の数と位置からSanders分類(TypeⅠ〜Ⅳ)を行うのが一般的で、転位のないTypeⅠは保存療法、TypeⅡ・Ⅲは手術を検討することが多く、分類は予後とも相関します。
ベーラー角(Böhler角)とは:正常値と測り方
- レントゲン側面像で、踵骨隆起の上端と後距踵関節面の最も高い点を結ぶ線と、後距踵関節面の最も高い点と前方突起の上端を結ぶ線のなす角です。関節面が陥没すると角度が小さくなり、平坦化・マイナスになることもあります。
- 正常値には幅があり、骨折のない英国人のレントゲン側面像の検討では平均36.4°、95%が入る範囲は28.2〜44.5°でした(Willmott 2012)。中国人の検討では31.6±5.19°(20.08〜47.19°)で、人種によって差があるとされています(Ma 2019)。
- 正常範囲が広いため、骨折かどうか迷うときは反対側のかかとのレントゲンと比べることが勧められています(Willmott 2012)。
Sanders分類(CT)のタイプ
| タイプ | 後距踵関節面の骨折 | 手術成績(優・良の割合、Sanders 1993) |
|---|---|---|
| TypeⅠ | 転位のないもの | (保存療法で治療) |
| TypeⅡ | 2つに分かれるもの | 73% |
| TypeⅢ | 3つに分かれるもの・陥没を伴うもの | 70% |
| TypeⅣ | 4つ以上・高度粉砕 | 9% |
症例 60歳代男性

左足関節レントゲンにおいて、左踵骨に骨折線を認めています。

左足関節のCT検査の矢状断像において骨折の程度がより明瞭です。

横断像においては骨片が多数あることがわかります。
左踵骨の関節内骨折と診断されました。
症例 40歳代男性

左足関節のレントゲンで、骨折線を認めています。

左足関節のCT検査の矢状断像において骨折の程度がより明瞭です。

左足関節のCT検査の横断像においても骨折の様子がよくわかります。
踵骨のみを3D再構成すると全体の様子がわかります。

左踵骨の関節内骨折と診断されました。
踵骨骨折の治療は?
保存療法もしくは、手術療法が治療法としてあります。
保存療法
- 徒手整復(骨片を可能な限り元の状態に戻す)
- 大本法(牽引)
- ギプス・テーピング(固定)
などの方法があります。
手術療法
- Westhues法(骨を持ち上げた状態で固定)
- プレート固定(プレートとスクリューで固定)
などが方法としてありますが、腫脹がある間は縫合が困難となったり、感染症を起こしやすくなるため、腫脹が引くのを待って行うことが多いです。
症例 60歳代女性

右踵骨骨折(関節内骨折)に対してWesthues法が施行されました。
骨の癒合を認めたためスクリューは後日、抜去されました。
踵骨骨折の治療期間は?
保存療法の場合だと完治までに時間を要しますが、手術の場合は術後6週を過ぎたあたりから部分的に荷重をかけたリハビリを開始し、10〜12週目頃には(全体重をかけた)通常歩行が可能となります(日本骨折治療学会)。1)
しかし、後遺症を伴うことも多くあり、手術を選択するのか保存療法で済ませるのか、そこの診断が非常に重要です。
関連記事:踵骨骨折の画像診断|ベーラー角とEssex-Lopresti分類・Sanders分類(CT)
参考文献:
整形外科疾患ビジュアルブック P401・402
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P174
1)参考サイト:一般社団法人 日本骨折治療学会
踵骨骨折でよくある疑問(Q&A)
Q. 踵のレントゲンは何方向で撮りますか?正常ではどう見えますか?
A. 側面像・軸射像が基本で、必要に応じてアントセン撮影を加えます。正常では側面像で後距踵関節面がなめらかに保たれ、ベーラー角が保たれています。角度の正常範囲は人によって幅があるため、左右で比べることがあります(Willmott 2012)。
Q. Essex-Lopresti分類とSanders分類はどう使い分けますか?
A. Essex-Lopresti分類はレントゲン側面像で骨折線の走り方(舌状型か関節陥没型か)を見る分類、Sanders分類はCTで後距踵関節面がいくつに割れているかを見る分類で、治療方針や予後の判断に使われます(Daftary 2005)。
最後に
踵骨骨折についてのまとめです。
- 高所から飛び降りた際などに、踵(かかと)から着地して起こるのが踵骨骨折
- 踵に、強い疼痛・発赤・腫脹・皮下出血などがみられる
- 関節外骨折と関節内骨折に分類される
- 画像検査で骨折の状態を確認する
- 保存療法もしくは、手術療法が選択される
- 手術を行なった場合、10〜12週ほどで通常歩行可能となる
踵骨骨折は、ムリをして歩行を続けると、骨折線がさらに波及してしまう可能性があります。
そのため、受傷後すぐに受診するようにしましょう。
- Sanders R, Fortin P, DiPasquale T, et al. Operative treatment in 120 displaced intraarticular calcaneal fractures. Results using a prognostic computed tomography scan classification. Clin Orthop Relat Res. 1993;(290):87-95. PubMed
- Daftary A, Haims AH, Baumgaertner MR. Fractures of the calcaneus: a review with emphasis on CT. Radiographics. 2005;25(5):1215-26. PubMed
- Willmott H, Stanton J, Southgate C. Böhler’s angle – What is normal in the uninjured British population? Foot Ankle Surg. 2012;18(3):187-9. PubMed
- Ma ZJ, Bai LP, Zhang GM, et al. Natural Value of Böhler’s Angle in Normal Chinese Population. Orthop Surg. 2019;11(6):1201-1208. PubMed
- Boruah T, Sareen A, Sreenivasan R, et al. Concomitant spine and calcaneum fractures: a possible indication of less extensive injury. Spinal Cord Ser Cases. 2022;8(1):1. PubMed
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