高いところから飛び降りた際など、足に強い衝撃が加わり、踵骨骨折(しょうこつこっせつ)を起こすことがあります。
文字通り踵(かかと)の骨が折れることなのですが、足の骨にも種類がたくさんありますので、どこの部分の骨がどのように折れるのが分かりにくいですよね。
そこで今回は、踵骨骨折(英語表記で「Calcaneal fracture」)について
- 症状
- 分類
- 診断
- 治療
- 治療期間
などを図(イラスト)と実際のレントゲン・CT画像を用いて解説したいと思います。
踵骨骨折とは?
踵骨骨折は、高所から飛び降りた際などに、踵(かかと)から着地して(踵に強い衝撃を受け)起こる足の骨折です。
踵骨は、足の内側後面、踵を触った際に触れる骨のことをいいます。
踵骨は、複雑な形状をしており、関節面の占める割合が大きいため、骨折線がその関節面にまで及んでしまうことが多くあるのです。
踵骨骨折の症状は?
踵(かかと)に
- 強い疼痛
- 発赤
- 腫脹
- 皮下出血
などが見られます。
そのため、踵に荷重がかけられなくなり、歩行に差し支えの出ることが多くあるようです。
踵骨骨折の分類は?
先ほど、関節面に骨折線が及ぶこともあると申しましたが、この踵骨骨折は、関節外か内かで分類が異なります。
関節外骨折
外というのは、骨折線が後距踵関節に及ばないものです。
- 踵骨突起骨折
- 骨折が踵立関節に及ぶもの
などが、この関節外骨折に分類されます。
関節内骨折
こちらは逆に、骨折線が後距踵関節に及ぶものです。
- 転位のないもの
- 舌状型
- 陥没型
- 載距突起単独骨折
- 粉砕型
などが関節内骨折に分類されます。
また踵骨全体像をみて、Essex-Lopresti分類(エセックス・ロプレスティ分類)により、関節陥没型・舌状型そして、Ⅰ〜Ⅲ度の重症度に分けられます。
外から加わった力を示すのが矢印です。
踵骨骨折の診断は?
臨床症状から踵骨骨折を疑い、骨折を確認するために、X線検査やCT検査などの画像検査が必要です。
側面・軸射像・アントセン撮影の3方向からのX線検査により、骨折の状態を診断し、複雑な形状なものはさらに細かく見るためCT撮影をして治療方針が検討されます。
症例 60歳代男性
左足関節レントゲンにおいて、左踵骨に骨折線を認めています。
左足関節のCT検査の矢状断像において骨折の程度がより明瞭です。
横断像においては骨片が多数あることがわかります。
左踵骨の関節内骨折と診断されました。
症例 40歳代男性
左足関節のレントゲンで、骨折線を認めています。
左足関節のCT検査の矢状断像において骨折の程度がより明瞭です。
左足関節のCT検査の横断像においても骨折の様子がよくわかります。
踵骨のみを3D再構成すると全体の様子がわかります。
左踵骨の関節内骨折と診断されました。
踵骨骨折の治療は?
保存療法もしくは、手術療法が治療法としてあります。
保存療法
- 徒手整復(骨片を可能な限り元の状態に戻す)
- 大本法(牽引)
- ギプス・テーピング(固定)
などの方法があります。
手術療法
- Westhues法(骨を持ち上げた状態で固定)
- プレート固定(プレートとスクリューで固定)
などが方法としてありますが、腫脹がある間は縫合が困難となったり、感染症を起こしやすくなるため、受傷後7〜10日経過し腫脹が減退して行います。
症例 60歳代女性
右踵骨骨折(関節内骨折)に対してWesthues法が施行されました。
骨の癒合を認めたためスクリューは後日、抜去されました。
踵骨骨折の治療期間は?
保存療法の場合だと完治までに時間を要しますが、手術の場合は術後6週を過ぎたあたりから部分的に荷重をかけたリハビリを開始し、10〜12週目頃には(全体重をかけた)通常歩行が可能となります。1)
しかし、後遺症を伴うことも多くあり、手術を選択するのか保存療法で済ませるのか、そこの診断が非常に重要です。
参考文献:
整形外科疾患ビジュアルブック P401・402
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P174
1)参考サイト:一般社団法人 日本骨折治療学会
最後に
踵骨骨折についてのまとめです。
- 高所から飛び降りた際などに、踵(かかと)から着地して起こるのが踵骨骨折
- 踵に、強い疼痛・発赤・腫脹・皮下出血などがみられる
- 関節外骨折と関節内骨折に分類される
- 画像検査で骨折の状態を確認する
- 保存療法もしくは、手術療法が選択される
- 手術を行なった場合、10〜12週ほどで通常歩行可能となる
踵骨骨折は、ムリをして歩行を続けると、骨折線がさらに波及してしまう可能性があります。
そのため、受傷後すぐに受診するようにしましょう。