先に結論:延髄外側梗塞(Wallenberg症候群)

  • ワレンベルグ症候群(Wallenberg症候群)は延髄外側症候群とも呼ばれ、延髄の外側(後外側)にできる脳梗塞(延髄外側梗塞)で起こる症状のまとまりです
  • 延髄外側梗塞は椎骨動脈または後下小脳動脈の閉塞で起こり、比較的若い人では椎骨動脈解離が重要な原因です
  • 症状はめまい・嘔吐・嚥下障害・嗄声・同側の顔の温痛覚障害とHorner症候群・同側の小脳失調・反対側の体の温痛覚障害で、手足の麻痺がないのが特徴です
  • MRIでは拡散強調像(DWI)で延髄の後外側に高信号が見られます。発症早期はDWIでも写らないことがあり、薄いスライスや冠状断のDWI、椎骨動脈の評価(MRA・BPAS)を加えます

延髄外側梗塞

・椎骨動脈V4もしくは後下小脳動脈から分岐する延髄短回旋・長回旋動脈閉塞。

・原因は大血管のアテローム硬化(約50%)が最多で、動脈解離(約15%)、小血管病変(約13%)、心原性塞栓(約5%)が続く

・Wallenberg症候群と呼ばれる。

・症状:

・前庭神経核→回転性眩暈、悪心嘔吐、複視
・疑核→嚥下障害、嗄声(孤束核→味覚障害)
・三叉神経脊髄路核→同側の顔面の温痛覚障害
・脊髄小脳路→小脳運動失調
・交感神経下行路→Horner症候群
・外側脊髄視床路→対側の体幹四肢の温痛覚障害
 

なお、発症72時間以内にDWIを撮像した延髄外側梗塞26例では、初回DWIの31%(8例)が偽陰性で、発症からMRIまでの時間が短いほど偽陰性が多かったと報告されています。初回DWIが陰性でも臨床的に疑わしければ、DWIの再検やMRIの追加で確認します。

ワレンベルグ症候群のMRI画像所見

  • 拡散強調像(DWI):延髄の後外側(背外側)に高信号域(拡散制限)が見られます。延髄は小さいため、薄いスライス厚や冠状断・矢状断を加えると見つけやすくなります。
  • ワレンベルグ症候群13例の検討では、急性期〜亜急性期のDWIは12例で陽性で、偽陰性は発症10時間後に撮像した1例だけでした。また、見た目の評価ではADC画像よりb値の高いDWIの方が梗塞と正常部のコントラストが良好でした(Kitis 2004)4)。
  • T2強調像・FLAIR:時間がたつと同じ場所が高信号になります。発症直後は分かりにくいことがあります。
  • 延髄外側梗塞130例の検討では、MRIの病変の高さ(上部・中部・下部)や広がり方で症状が異なり、上部の病変では嚥下障害・顔面神経麻痺・構音障害が多く、下部の病変では強い歩行失調・頭痛が多くみられました。血管造影を行った123例では、椎骨動脈の病変が67%、後下小脳動脈の病変が10%でした(Kim 2003)1)。

原因血管(椎骨動脈・後下小脳動脈)の評価

  • MRAで椎骨動脈・後下小脳動脈の狭窄や閉塞を確認します。
  • 若い人や頸部痛・後頭部痛を伴う場合は椎骨動脈解離を疑い、脂肪抑制T1強調像での血管壁内の血腫(三日月状の高信号)、MRAでの狭窄・拡張、BPAS(血管の外側の形を写す撮像法)での血管の外径の膨らみなどを確認します。

なぜ手足の麻痺が出ないのか

  • 手足を動かす錐体路は延髄の腹側の内側(錐体)を通るため、延髄の外側だけの梗塞では障害されにくく、手足の運動麻痺が出ないのが特徴です。錐体を含む延髄内側の梗塞では麻痺が出ます(延髄内側梗塞・Dejerine症候群)。

ワレンベルグ症候群でよくある疑問(Q&A)

Q. ワレンベルグ症候群と延髄外側症候群は同じですか?
A. 同じ意味で使われます。延髄外側の梗塞によって、めまい・嚥下障害・顔と体の感覚障害・Horner症候群・ふらつきが組み合わさって出る症候群です。

Q. MRIで写らないことはありますか?
A. 発症から間もない時期は、DWIでも異常が写らないことがあります。症状から強く疑われる場合は、時間をおいてMRIを撮り直すことがあります3)。

Q. 気をつける症状は?
A. 急な回転性めまい・吐き気に加えて、飲み込みにくさ、声のかすれ、顔のしびれ、ふらつきが出たときは脳梗塞の可能性があります。気になる症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

症例 60歳代男性 急性発症の構音障害

延髄外側梗塞 MRI拡散強調像 横断像
引用:Radiopaedia(Lateral medullary syndrome)

延髄の高さの拡散強調像で、延髄に明瞭な高信号域を認めます(拡散制限)。症例報告では延髄の左側の急性期梗塞で、T2強調像・FLAIRでも対応する高信号を示し、延髄外側症候群と診断されています。

参考文献

  1. Kim JS. Pure lateral medullary infarction: clinical-radiological correlation of 130 acute, consecutive patients. Brain. 2003;126(Pt 8):1864-1872. PubMed
  2. Hara N, Nakamori M, Ayukawa T, et al. Characteristics and Prognostic Factors of Swallowing Dysfunction in Patients with Lateral Medullary Infarction. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021;30(12):106122. PubMed
  3. Seo MJ, Roh SY, Kyun YS, et al. Diffusion weighted imaging findings in the acute lateral medullary infarction. J Clin Neurol. 2006;2(2):107-12. PubMed
  4. Kitis O, Calli C, Yunten N, et al. Wallenberg’s lateral medullary syndrome: diffusion-weighted imaging findings. Acta Radiol. 2004;45(1):78-84. PubMed

関連記事:延髄内側梗塞とは?画像診断のポイントは?(Dejerine症候群)

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