先に結論:子宮内膜症

  • 子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が子宮の内腔以外(卵巣・腹膜など)で増える病気で、エストロゲンに依存します。子宮の筋層の中にできるものは子宮腺筋症として別に扱います
  • 子宮内膜症は20〜40歳代の女性に多く、強い月経痛・性交痛・慢性骨盤痛・不妊の原因になります
  • 卵巣(チョコレート嚢胞)・子宮の後ろ・ダグラス窩・仙骨子宮靭帯に多く、まれに腸・膀胱・肺(月経時の気胸=月経随伴性気胸)・臍などにもできます
  • MRIではT1強調像(特に脂肪抑制)で高信号、T2で信号低下(shading)を示す卵巣嚢胞が典型です。チョコレート嚢胞からはまれに卵巣癌(明細胞癌・類内膜癌)が発生するため、壁の結節や造影される充実部に注意します
  • 腸管子宮内膜症は約9割が直腸〜S状結腸にでき、月経に合わせた便通の変化や腹痛が手がかりで、経腟超音波やMRIで評価します。単純X線(レントゲン)では子宮内膜症はほとんど分かりません

概念および疫学

  • 子宮内膜に似た上皮や間質が子宮内膜・子宮筋層の外に存在し、通常は炎症を伴う疾患(2021年の国際用語集の定義)。
  • 20-40歳の生殖可能年齢の5-10%(Colombo 2026)。
  • 発生部位により、子宮筋層内に発生する内性子宮内膜症と、子宮外の組織や臓器に発生する外性子宮内膜症に分けられる。両者は別の疾患として捉えられており、前者は子宮腺筋症(adenomyosis)とよばれる。
  • 発生と増殖の過程には性ステロイドホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が大きく関与。
  • 月経困難症や不妊症の原因となり、女性のQOLを著しく損なうため社会的にも問題。
  • 進行性の経過をたどり、周期的に出血を繰り返し、周囲に浸潤して強固な癒着を来す。

定型的子宮内膜症と非定型的子宮内膜症

組織学的には、診断が容易である定型的子宮内膜症と、診断が困難な場合もある非定型的子宮内膜症に分けられている。

  • 定型的子宮内膜症:子宮内膜の基本構造である上皮細胞と間質細胞の両成分が観察される。月経周期に伴う出血が病巣に起った場合には、腺腔内出血、周囲間質の出血、血性色素(ヘモジデリン)沈着、色素貪食マクロファージの出現などの所見が見られる。
  • 非定型的子宮内膜症:上皮細胞が欠乏・欠如する場合、間質細胞が欠乏・欠如する場合、さらに両成分がほとんど認められない場合があり、古い病巣やチョコレート嚢胞などに多い。

子宮腺筋症の組織所見

  • 子宮内膜症と同様であるが、子宮内膜組織が正常筋層内に孤立性・散在性に認められる。
  • 子宮腺筋症で見られる異所性内膜組織は、卵巣周期による内分泌学的変化を受けることが少なく、子宮内膜症で見られる出血やヘモジデリン沈着の所見はないことが多い。
  • しかし、正所の子宮内膜と同様に月経周期による出血を繰り返し、adenomyotic cystと呼ばれる血液を容れた嚢胞様の腫瘤を子宮筋層内に形成することがあり、画像診断上重要な病変の一つである。

発生部位

  • 骨盤部内膜症は卵巣に好発し、内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞)を形成。
  • 最も多い部位は卵巣(Woodward 2001)。腹膜の深部病変は子宮頸部の後方(Douglas窩・仙骨子宮靭帯付近)と直腸S状結腸に最も多く、次いで腟・膀胱・尿管にみられる(Chamié 2011)。
  • 腹膜にも好発。膀胱・尿管、腸管、膣、腹壁、皮下、後腹膜、肺、胸腔内、臍、骨盤リンパ節にも発生。「肺子宮内膜症」のように子宮内膜症の前に解剖学的臓器名を付して呼ぶ。
  • 一方、子宮腺筋症では子宮筋層内の病巣によって子宮壁が肥大する。

▶子宮内膜症の好発部位

RadioGraphics, Jul 2011, Vol. 31:E77–E100

臨床症状

  • さまざまであるが、主な症状として、骨盤痛と不妊が挙げられる。
  • 特に、 月経困難症が代表的な症状で、進行すると月経と無関係に疼痛が認められるようになる。ただし症状の強さと病変の広がりは一致しないことがある(Woodward 2001)。
  • 性交痛や内診時の圧痛といった月経時以外の疼痛が合併することがしばしばで、これらは仙骨子宮靭帯や周囲組織との癒着や浸潤によってもたらされる。
  • 不妊は子宮内膜症患者の30~50%に合併する。機序として、卵巣予備能の低下、癒着による骨盤内の解剖の変化、慢性炎症、免疫や子宮内膜の機能の変化などが挙げられている(Colombo 2026)。
  • そのほかに、月経不順、過多月経、不正性器出血などの月経異常が見られることも多い。
  • 骨盤外子宮内膜症の症状は、それぞれの発生部位に応じた自覚症状が出現。月経周期と関連した疼痛、出血あるいは臓器障害が中心。
  • なかでも胸腔の子宮内膜症(胸腔子宮内膜症症候群)では、110例の解析で気胸(月経随伴性気胸)73%、血胸14%、喀血7%、肺結節6%で、結節以外の90%以上が右側に生じていた。成因として横隔膜の欠損孔を通じた腹腔から胸腔への移動などが考えられている(Joseph 1996)。
  •  子宮腺筋症の症状は子宮内膜症と類似したものが多いが、主な症状として月経困難症、過多月経、不正性器出血、性交痛が挙げられるが、症状が認められないことも比較的多い。

診断

  • 従来は腹腔鏡検査あるいは開腹手術による組織診断が基本とされてきたが、ESHREガイドライン(2022)では腹腔鏡・組織診断を唯一の基準とする考え方が見直され、画像検査を含めた臨床診断が重視されている。
  • 問診、内診所見、超音波断層法検査やMR、腫瘍マーカーなどで診断した子宮内膜症は「臨床子宮内膜症」と呼ばれ、確定診断ではない。
  • MRIは、チョコレート嚢胞と皮様嚢腫あるいは卵巣癌との鑑別を行ううえで有用。ただし、小さな腹膜病変や癒着は画像では評価しにくく、画像で異常がなくても子宮内膜症は否定できない。Cochraneレビュー(2016年)では、MRIの感度・特異度は内膜症性嚢胞で0.95・0.91、深部内膜症で0.94・0.77であった。一方、骨盤内膜症全体を手術に代わって診断できる精度をもつ画像検査はなかった。
  • 卵巣癌で感度が高い腫瘍マーカーであるCA125は、子宮内膜症でも上昇することがあり、診断の補助や治療効果の判定に用いられることが多い。 (ただし、子宮内膜症に特異的な値ではない)。

腸管子宮内膜症

  • 腸管の子宮内膜症は深部子宮内膜症のなかでも重いタイプとされ、腸管に浸潤する例の約90%は直腸S状結腸に生じる(Moura 2019)。盲腸・虫垂・小腸はまれだが、直腸S状結腸病変の約3分の1に右側の腸管病変を伴う(Bazot 2021)。
  • 症状は腹痛・骨盤痛、月経困難症、性交痛に加え、月経周期に合わせた便通の変化などで、消化器の病気と紛らわしく診断が遅れやすい(Galica 2025)。
  • 画像では、T2強調像で低信号の病変として見える(Chamié 2011)。直腸S状結腸病変の診断能はMRI・経腟超音波とも感度90%・特異度96%と同等(Moura 2019)。

子宮内膜症の画像でよくある疑問(Q&A)

Q. レントゲンやCTで子宮内膜症はわかりますか?

A. 単純X線写真(レントゲン)では、子宮内膜症の病変そのものはほとんど写りません。画像検査の第一選択は超音波で、MRIは複雑な例や手術前の評価に追加されます(Bazot 2017)。

Q. 内診や画像で異常がなければ、子宮内膜症ではないのですか?

A. 内診で疑うことはできますが、確定には画像検査が必要です(Chamié 2011)。小さな腹膜病変や癒着は画像でも評価しにくいため、異常がなくても否定はできません(Woodward 2001)。強い月経痛や性交痛が続く場合は婦人科を受診してください。

Q. 子宮内膜症があると卵巣がんになりやすいのですか?

A. 子宮内膜症がある人では卵巣がん(主に明細胞癌・類内膜癌)の相対的なリスクは上がりますが、絶対的なリスクは低いとされています(Piacenti 2026)。

参考文献

  1. Woodward PJ, Sohaey R, Mezzetti TP. Endometriosis: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2001;21(1):193-216. PubMed
  2. Becker CM, Bokor A, Heikinheimo O, et al. ESHRE guideline: endometriosis. Hum Reprod Open. 2022;2022(2):hoac009. PubMed
  3. Joseph J, Sahn SA. Thoracic endometriosis syndrome: new observations from an analysis of 110 cases. Am J Med. 1996;100(2):164-70. PubMed
  4. International Working Group of AAGL, ESGE, ESHRE and WES; Tomassetti C, Johnson NP, et al. An international terminology for endometriosis, 2021. Hum Reprod Open. 2021;2021(4):hoab029. PubMed
  5. Nisenblat V, Bossuyt PM, Farquhar C, et al. Imaging modalities for the non-invasive diagnosis of endometriosis. Cochrane Database Syst Rev. 2016;2(2):CD009591. PubMed
  6. Zondervan KT, Becker CM, Missmer SA. Endometriosis. N Engl J Med. 2020;382(13):1244-1256. PubMed
  7. Chamié LP, Blasbalg R, Pereira RM, et al. Findings of pelvic endometriosis at transvaginal US, MR imaging, and laparoscopy. Radiographics. 2011;31(4):E77-100. PubMed
  8. Bazot M, Bharwani N, Huchon C, et al. European society of urogenital radiology (ESUR) guidelines: MR imaging of pelvic endometriosis. Eur Radiol. 2017;27(7):2765-2775. PubMed
  9. Colombo GE, Salmeri N, Leonardi M. Integrating IVF and Surgical Management in Endometriosis-Associated Infertility: A Review. Adv Ther. 2026;43(3):1004-1015. PubMed
  10. Moura APC, Ribeiro HSAA, Bernardo WM, et al. Accuracy of transvaginal sonography versus magnetic resonance imaging in the diagnosis of rectosigmoid endometriosis: Systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2019;14(4):e0214842. PubMed
  11. Bazot M, Kermarrec E, Bendifallah S, et al. MRI of intestinal endometriosis. Best Pract Res Clin Obstet Gynaecol. 2021;71:51-63. PubMed
  12. Galica AN, Galica R, Dumitrascu DL. Intestinal Endometriosis, A Challenge for Gastroenterologists: A Narrative Review. J Gastrointestin Liver Dis. 2025;34(3):381-389. PubMed
  13. Piacenti I, Tius V, Gomba B, et al. Risk, Prevalence and Survival Outcomes of Ovarian Cancer in Women With Endometriosis: The Endocancer Systematic Review and Meta-Analysis. J Minim Invasive Gynecol. 2026;33(9):1251-1262. PubMed

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