アルツハイマー病(Alzheimer disease)における脳血流SPECTの画像診断

  • アルツハイマー病は認知症の原因として最多。次にレビー小体型認知症(DLB)が多い。
  • 認知症の脳血流SPECTを見る上で、まず前頭葉などの前方系の血流低下が目立つか、後方系の血流低下が目立つかを見る。
  • 後方系の血流低下を示す疾患は少なく、アルツハイマー病、レビー小体型認知症(DLB)、プリオン病(CJD)があげられる。一方で前方の血流低下をきたす認知症は多数あり。なので、まず後方の血流低下があるか否かをチェックする。

65歳以前の場合

  • 代謝・血流低下は後部帯状回・楔前部、頭頂側頭連合野から始まり、病期の進行に伴い前頭連合野(前頭葉の運動野より前の部分)に進展する。
  • 一方で、一次感覚運動野・橋・線条体・視床・一次視覚野(後頭葉)は温存される。(※Lewy小体型認知症では後頭葉が低下する。)
  • なので、アルツハイマー病では後ろから前に血流低下部位が広がっていくイメージ。その際に一次感覚運動野をスキップして前に進んでいく。(逆に正常では、この一次感覚運動野が相対的にやや低めに見えることが多い。)
  • 早期・軽症の段階では、海馬を含んだ内側側頭葉の代謝・血流低下はほとんど観られない。
  • 軽度の左右差はある。進行してもその左右差は保たれる。
  • eZIS(eazy Z-score imaging system)では、後部帯状回、楔前部、頭頂葉皮質に関心領域を置き、血流の低下の程度、その領域の割合、さらには全脳の血流低下領域の割合との比較を検討し、AD初期診断の識別精度を上げている。

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つまり、若年性ほど、後部帯状回・楔前部・頭頂葉皮質にまず血流低下が起こりやすいので、診断しやすいと言えます。

65歳以降の場合

  • 辺縁系の障害が目立つことにより間接的に後部帯状回の低下を示す事となる。ただし、典型例が少なく、早期診断には若年発症よりも困難なことが多い。
  • 内側側頭部に萎縮が見られるようになる。この場所は萎縮が見られても、血流・代謝は保たれる傾向にある。
つまり、高齢発症の場合は、脳血流シンチでは特に早期では診断が困難。

進行すれば、海馬や海馬傍回に萎縮・血流低下が目立つので、診断がしやすくなる、といえます。

症例 80歳代男性(eZIS、Z=2.66 HDS-R=18点)

Alzheimer disease

後部帯状回-楔前部および側頭頭頂連合野さらには前頭連合野に血流低下あり。

典型的な進行したアルツハイマー病を疑う所見。

アミロイドPETとは?

  • アミロイドβタンパク(アルツハイマー型認知症の病理である老人斑はこのアミロイドβタンパクからなる)の沈着へ集積を認め、アルツハイマー型認知症やその前段階の診断に有用とされるPET検査。
  • Pittsburgh Compound-B(11C-PiB)が最も研究されているアミロイドPET製剤。
  • 陽性例では、後部帯状回から楔前部、頭頂葉、前頭前野などの大脳皮質や線条体において集積を認める(Alzheimers Dement 7:257-262,2011)
  • 逆に小脳皮質や中心溝周囲皮質、後頭葉、内側側頭葉では集積が低い。中でも小脳が低い点が参考になる。
  • 軽度認知障害患者であってもアミロイドβの沈着は6-7割に見られ、アルツハイマー型認知症に高率に移行するとされる。
  • 認知症がなくても、アポリポプロテイン E4 (ApoE4)保因者では非保有者と比べて陽性率が高い。

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