先に結論:アルツハイマー病の脳血流SPECT

  • アルツハイマー病の脳血流SPECTでは、後部帯状回・楔前部・側頭頭頂連合野の血流低下が早期から見られ、進行すると前頭葉へ広がります。一次感覚運動野・後頭葉(一次視覚野)・小脳は保たれます
  • 若年発症では後部帯状回の低下が目立ち診断しやすい一方、高齢発症では内側側頭葉の萎縮が主で、SPECTだけでは早期診断が難しいことがあります
  • eZIS・3D-SSPなどの統計画像で確認します。アミロイドβの沈着そのものはアミロイドPETで評価します
  • 後部帯状回・楔前部は大脳の内側面(左右の脳の向かい合う面)の後ろ寄りにあり、横断像より内側面の統計画像で低下が見つけやすい部位です

アルツハイマー病(Alzheimer disease)における脳血流SPECTの画像診断

  • アルツハイマー病は認知症の原因として最多。変性性認知症では次にレビー小体型認知症(DLB)が多いとされる(順位は調査により異なる)。
  • 認知症の脳血流SPECTを見る上で、まず前頭葉などの前方系の血流低下が目立つか、後方系の血流低下が目立つかを見る。
  • 後方系の血流低下はアルツハイマー病のほかレビー小体型認知症(DLB)でもみられる(DLBでは一次視覚野も低下する)。一方、前頭側頭型認知症では前頭側頭部の低下が主体となる(Ishii 2002)。なので、まず後方の血流低下があるか否かをチェックする。

65歳以前の場合

  • 代謝・血流低下は後部帯状回・楔前部、頭頂側頭連合野から始まり、病期の進行に伴い前頭連合野(前頭葉の運動野より前の部分)に進展する。
  • 一方で、一次感覚運動野・橋・基底核・視床・一次視覚野(後頭葉)・小脳は比較的保たれる(Ishii 2002)。(※Lewy小体型認知症では後頭葉が低下する。)
  • なので、アルツハイマー病では後ろから前に血流低下部位が広がっていくイメージ。その際に一次感覚運動野をスキップして前に進んでいく。
  • 早期の段階では、海馬を含んだ内側側頭葉は萎縮に比べて血流低下が目立たないことが多い(Matsuda 2010)。
  • eZIS(easy Z-score imaging system)は、SPECTを標準脳に合わせて健常者データベースと比べ、血流低下をZスコアで表示する統計解析ソフトで、早期から低下する後部帯状回・楔前部などの低下の程度や範囲を数値で評価し、診断を補助する(Matsuda 2010)。

alz alz2

つまり、若年性ほど、後部帯状回・楔前部・頭頂葉皮質にまず血流低下が起こりやすいので、診断しやすいと言えます。

65歳以降の場合

  • 後部帯状回・楔前部・頭頂葉の血流低下は若年発症より目立たず、早期診断には若年発症よりも困難なことが多い。統計画像(3D-SSP)を用いた検討でも、ADと健常者を区別するAUCは若年発症群0.88に対し高齢発症群0.61と低かった(Mitsumoto 2009)。
  • 内側側頭部の萎縮が若年発症より目立つ。この場所は萎縮が見られても、血流は比較的保たれる傾向にある(Matsuda 2010)。
つまり、高齢発症の場合は、脳血流シンチでは特に早期では診断が困難。

MRIでの海馬・海馬傍回の萎縮の評価(VSRADなど)を組み合わせると診断の助けになる、といえます。

アルツハイマー病で血流が低下する部位・保たれる部位

区分 部位
早期から低下 後部帯状回・楔前部、頭頂側頭連合野
進行すると低下 前頭連合野
比較的保たれる 一次感覚運動野、一次視覚野(後頭葉)、基底核、視床、橋、小脳
萎縮のわりに血流低下が目立たない 海馬などの内側側頭葉

(Ishii 2002、Matsuda 2010より作成)後部帯状回は、脳梁の後ろ半分を取り囲む帯状回の後方部分で、楔前部はその上後方にある頭頂葉の内側面です(脳梁の前を取り囲むのが前部帯状回)。どちらも左右の大脳の内側面にあるため、3D-SSPやeZISの内側面の表示で確認します。

症例 80歳代男性(eZIS、Z=2.66 HDS-R=18点)

Alzheimer disease

後部帯状回-楔前部および側頭頭頂連合野さらには前頭連合野に血流低下あり。

典型的な進行したアルツハイマー病を疑う所見。

アミロイドPETとは?

  • アミロイドβタンパク(アルツハイマー型認知症の病理である老人斑はこのアミロイドβタンパクからなる)の沈着へ集積を認め、アルツハイマー型認知症やその前段階の診断に有用とされるPET検査。
  • Pittsburgh Compound-B(11C-PiB)が最も研究されているアミロイドPET製剤。
  • アルツハイマー病では、前頭葉皮質で最も集積が高く、頭頂葉・側頭葉・後頭葉の皮質や線条体にも集積を認める(Klunk 2004)。
  • 逆に皮質下白質・橋・小脳では健常者と差がなく、中でも小脳が低い点が参考になる(Klunk 2004)。
  • 軽度認知障害患者でもアミロイドβの沈着は年齢とともに増え、50歳で約3割、90歳で約7割に見られる(Jansen 2015)。
  • 認知症がなくても、アポリポプロテイン E4 (ApoE4)保因者では非保有者と比べて陽性率が高い。メタ解析では、認知機能が正常な人でもアミロイド陽性率は50歳で約1割、90歳で約4割に達し、ApoE ε4保因者の陽性率は非保因者の2〜3倍でした。高齢者ではアミロイドPET陽性だけで認知症の原因をアルツハイマー病と決めつけないよう注意します。2024年のAlzheimer’s Associationの改訂診断基準では、アルツハイマー病を症状ではなく生物学的な過程として定義し、アミロイドPET・承認された髄液バイオマーカー・精度の高い血漿バイオマーカー(特にリン酸化タウ217)などのCore 1バイオマーカーが異常であれば診断を確立できるとしています。一方で、併存病理や認知予備能によって臨床症状との関係は修飾されうるとされています。2025年にはアミロイドPET・タウPETの適正使用基準(AUC)も更新されました。

あわせて読みたい:脳血流シンチ(脳血流SPECT)の画像診断と読影のポイント

あわせて読みたい:認知症の脳血流SPECT・FDG-PETパターン早見

参考文献

  1. Matsuda H. Role of neuroimaging in Alzheimer’s disease, with emphasis on brain perfusion SPECT. J Nucl Med. 2007;48(8):1289-300. PubMed
  2. Minoshima S, Giordani B, Berent S, et al. Metabolic reduction in the posterior cingulate cortex in very early Alzheimer’s disease. Ann Neurol. 1997;42(1):85-94. PubMed
  3. Ishii K. Clinical application of positron emission tomography for diagnosis of dementia. Ann Nucl Med. 2002;16(8):515-25. PubMed
  4. Matsuda H. [Neuroimaging for patients with Alzheimer disease in routine practice]. Brain Nerve. 2010;62(7):743-55. PubMed
  5. Mitsumoto T, Ohya N, Ichimiya A, et al. Diagnostic performance of Tc-99m HMPAO SPECT for early and late onset Alzheimer’s disease: a clinical evaluation of linearization correction. Ann Nucl Med. 2009;23(5):487-95. PubMed
  6. Klunk WE, Engler H, Nordberg A, et al. Imaging brain amyloid in Alzheimer’s disease with Pittsburgh Compound-B. Ann Neurol. 2004;55(3):306-19. PubMed
  7. Jansen WJ, Ossenkoppele R, Knol DL, et al. Prevalence of cerebral amyloid pathology in persons without dementia: a meta-analysis. JAMA. 2015;313(19):1924-38. PubMed
  8. Jack CR, Andrews JS, Beach TG, et al. Revised criteria for diagnosis and staging of Alzheimer’s disease: Alzheimer’s Association Workgroup. Alzheimers Dement. 2024;20(8):5143-5169. PubMed
  9. Rabinovici GD, Knopman DS, Arbizu J, et al. Updated appropriate use criteria for amyloid and tau PET: A report from the Alzheimer’s Association and Society for Nuclear Medicine and Molecular Imaging Workgroup. Alzheimers Dement. 2025;21(1):e14338. PubMed

画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
無料講座

腹部画像診断を症例で学ぶ

4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。

講座に参加する(無料) →
胸部レントゲンの正常解剖を31日で
無料講座

胸部レントゲンの正常解剖を31日で

1日3分、全31日で胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学ぶ参加型の講座です。全日程に簡単な動画解説が付いています。

講座に参加する(無料) →
画像診断LINE公式アカウント
登録特典あり

画像診断LINE公式アカウント

新しい企画やモニター募集のお知らせを配信しています。登録すると特典として、脳の血管支配域のミニ講座に無料で参加できます。

LINEで友だち追加 →