CTの被ばく ゼロからの画像診断 #09

ゼロからの画像診断 #09

「CTの被ばくって大丈夫ですか?」患者さんに聞かれて、うまく答えられますか。研修医のハジメくんと技師のマルオさんと一緒に、単位・量のめやす・減らし方を図で整理します。

先に結論

  1. 体が受けた量はGy(グレイ)、体全体への影響に直したものはSv(シーベルト)。CTの話はmSv(ミリシーベルト)で比べることが多い。
  2. 胸のCT 1回はおよそ数mSvで、胸のX線写真(およそ0.06mSv)の数十〜百倍以上。日本の自然の放射線1年分(およそ2.1mSv)と同じくらい〜数倍。
  3. CTの線量は範囲・回数・1回の強さで決まる。「本当に必要か」と「必要な分だけ」を考えるのが基本。

「レントゲンと同じくらいです」?

ハジメハジメ(研修医)
先生、さっき患者さんに「CTの被ばくは大丈夫?」と聞かれたので、「レントゲンと同じくらいなので大丈夫です」と答えてきました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
うーん、安心させたい気持ちはわかります。でも、CT 1回と胸のX線写真1枚は、本当に同じくらいでしょうか?今日は数字で確かめてみましょう。まず単位からです。

GyとSv、2つの単位

ごろ〜ごろ〜(指導医)
体がX線から受け取ったエネルギーの量がGy(グレイ)です。ただ、同じ量でも、体のどこに当たるかで影響の受けやすさがちがいます。それを考えに入れて、体全体への影響に直したものがSv(シーベルト)です。
図1 GyとSvのちがい 模式図。Gyは「当たって吸収された量」。Svは、臓器ごとの影響の受けやすさを考えに入れて「体全体への影響」に直した量。ちがう検査をくらべるときはmSvを使うことが多い。
図1 GyとSvのちがい 模式図。Gyは「当たって吸収された量」。Svは、臓器ごとの影響の受けやすさを考えに入れて「体全体への影響」に直した量。ちがう検査をくらべるときはmSvを使うことが多い。
ハジメハジメ(研修医)
じゃあ、検査どうしを比べるときはmSvを見ればいいんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
はい。では、いろいろなものをmSvで並べてみます。目盛りが10倍ずつ大きくなるので注意してください。
図2 被ばくの量のくらべっこ 代表的な目安(環境省の資料などで示される値)。目盛りは10倍ずつ。CTは撮る範囲や撮り方で大きく変わるので幅で示した。
図2 被ばくの量のくらべっこ 代表的な目安(環境省の資料などで示される値)。目盛りは10倍ずつ。CTは撮る範囲や撮り方で大きく変わるので幅で示した。
ハジメハジメ(研修医)
胸のCTは、胸のX線写真の何十倍、多いと百倍以上…。「レントゲンと同じくらい」はまちがいでした。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうですね。一方で、図のいちばん右の100mSvより低いところでは、がんが増えるかどうかは、はっきりわかっていません。「ゼロではないけれど、必要な検査なら得るもののほうが大きい」と、正直に説明するのがいいと思います。

CTの線量を決める3つのもの

マルオマルオ(技師)
撮る側からひとこと!CTの線量は、ざっくり言うと撮る範囲の長さ×撮る回数×1回の強さで決まります。造影で何回も撮ると、そのぶん増えるんです!
図3 範囲と回数で線量が増える 模式図と計算例。1回の強さを同じとすると、範囲が2倍なら2倍、同じ範囲を3回撮れば3倍になる。
図3 範囲と回数で線量が増える 模式図と計算例。1回の強さを同じとすると、範囲が2倍なら2倍、同じ範囲を3回撮れば3倍になる。
ハジメハジメ(研修医)
胸だけでいいのに「ついでにおなかも」とか、単純と造影を何回も、とかで、どんどん増えるんですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。だから依頼を出す側の「どこを・何回」の判断が大事なんです。実際の線量は、画面の記録でも見られます。
図4 線量の記録の例 架空の数字で作った見本。CTDIvolは1回の強さ(mGy)、DLPはそれに範囲の長さをかけたもの(mGy・cm)。表示のしかたは装置やビューアでちがう。
図4 線量の記録の例 架空の数字で作った見本。CTDIvolは1回の強さ(mGy)、DLPはそれに範囲の長さをかけたもの(mGy・cm)。表示のしかたは装置やビューアでちがう。
マルオマルオ(技師)
この記録は検査ごとに残っていて、多くの施設で線量の管理に使っています。それから、医療スタッフ自身を守るのは時間・距離・遮へいの3つ。とくに距離は、離れるだけで大きく減りますよ!
図5 距離が2倍で、量は4分の1 計算した模式図。X線が出るところ(装置や、散乱線を出す患者さんの体)から広がるので、受ける量はおおよそ距離の2乗に反比例する(目安としての考え方)。
図5 距離が2倍で、量は4分の1 計算した模式図。X線が出るところ(装置や、散乱線を出す患者さんの体)から広がるので、受ける量はおおよそ距離の2乗に反比例する(目安としての考え方)。
ハジメハジメ(研修医)
1m離れていたところから2mにするだけで、4分の1。ポータブル撮影のとき、近くでぼーっと立っていないようにします。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いい心がけです。最後に、患者さんの被ばくについての考え方をまとめておきます。
図6 患者さんの被ばくの考え方 まず「その検査は本当に必要か」(正当化)。必要なら「必要な画質を保って、線量はできるだけ少なく」(最適化)。子どもと妊娠の可能性には特に気をつける。
図6 患者さんの被ばくの考え方 まず「その検査は本当に必要か」(正当化)。必要なら「必要な画質を保って、線量はできるだけ少なく」(最適化)。子どもと妊娠の可能性には特に気をつける。
ハジメハジメ(研修医)
さっきの患者さんに、もう一度ちゃんと説明してきます。「胸のX線写真よりは多いけれど、今回は必要な検査です」って。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
それがいいですね。わからないことは、技師さんや放射線科にいつでも聞いてください。

よくある勘違い

Q. CTの被ばくは、胸のX線写真と同じくらい?

いいえ。胸のCT 1回はおよそ数mSvで、胸のX線写真1枚(およそ0.06mSv)の数十〜百倍以上が目安です。

Q. CTを1回撮ると、がんになる?

100mSvより低い線量で、がんが増えるかどうかははっきりわかっていません。必要な検査なら得るもののほうが大きいと考えます。不要な検査を減らすことは大切です。

Q. GyとSvは同じもの?

Gyは体が吸収した量、Svは臓器ごとの影響の受けやすさを考えて体全体への影響に直した量です。検査どうしを比べるときはmSvを使います。

今日のまとめ

  1. Gyは吸収した量、Svは体全体への影響に直した量。比べるときはmSv。
  2. 胸のCTは数mSvで、胸のX線写真の数十〜百倍以上。100mSvより低いところでは、がんの増加ははっきりしていない。
  3. 線量は範囲・回数・強さで決まる。「本当に必要か」と「必要な分だけ」。スタッフは時間・距離・遮へい。

図はすべてコードで描いた模式図で、実際の画像ではありません。

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