骨シンチの正常像は?
生理的な集積を認めることが多い部位
- 肩峰
- 烏口突起
- 胸鎖/胸肋関節
- 胸骨角
- 肩甲骨下角
- 仙腸関節
- 股関節
- 甲状軟骨
- 舌骨
- 上腕骨近位部(三角筋粗面)
- 脛骨近位部(脛骨粗面)
生理的集積を認めることがある部位
- 肋軟骨石灰化部位
- 頭蓋骨縫合部
- 前頭蓋骨のびまん性集積(女性)
- 剣状突起
- 利き腕側の肩関節周囲
- 膝関節
- 恥骨結合(出産後の女性の場合)
- 胸壁乳腺(女性)
生理的集積を診断する上での注意点
- 小児の場合は、骨軟部組織への集積が多い。特に骨端板に左右対称の集積を認める。→左右対称ではない場合は、骨髄炎や神経芽細胞腫などの転移を考える。
- 注射漏れによる集積に注意する。
- 尿汚染による集積に注意する。
- 乳がん術後、豊胸術後による左右差に注意する。
- 齲歯による集積に注意する。
- 副鼻腔炎による集積に注意する。
- 放射線治療をした後2-3ヶ月以降の照射部に一致した集積低下に注意。
骨シンチグラフィで骨転移を示唆する所見は?
①転移性骨腫瘍は骨髄で増殖するため、骨の長軸方向に進展しやすい。
※骨折は長軸に垂直に生じやすい。
②転移性骨腫瘍は骨の中に生ずる。
※変性性変化は関節面の両側に生ずる。
③転移性骨腫瘍は病変の中央よりも周辺の方に集積が強い(ドーナツ型)。
※他の原因によるものは中央部に集積が強い。 但し、前立腺癌の骨転移は例外である。
④骨転移の集積は、不均一な分布である。
⑤骨転移は、赤色骨髄の分布もしくは Batoson’s plexusの分布に一致する。但し、肺癌や胃細胞癌では例外がある。
症例 60歳代男性 前立腺癌
骨シンチにて左第7肋骨に骨に沿って異常集積あり。
同部位はCTにおいても骨硬化を示している。骨転移の所見。
骨シンチの注意点
- 多くの骨転移巣は、骨シンチで集積の増加=hot spotとして表現されるが、場合により周囲よりも低集積=cold spotとなることがあるので注意が必要。
- 骨梁間型の骨転移は骨シンチでほとんど正常な所見を呈するので注意が必要。
- びまん性に骨転移をきたした場合、一見正常所見と間違えることがある。これを、superscanあるいはbeautiful bone scanと呼ぶ。正常像との鑑別は、腎臓がきちんと描出されているか確認することである。(正常の場合は、腎臓は描出されて、superscanの場合は描出されない)
症例 60歳代男性 前立腺癌
CTの骨条件ではびまん性に骨硬化像を認めており、全身骨への転移を疑います。
骨シンチでは一見正常に見えますが、両側腎臓への集積を認めず、びまん性骨転移を示唆するSuperscanの状態です。
骨シンチ画像を見ただけで直ちに診断できるもの
SAPHO症候群
Sternocostoclavicular hyperostosis (SAPHO syndrome)とも呼ばれる。
Insufficiency fracture:脆弱性骨折
- 特に骨盤で見られ、低栄養、骨粗鬆症、放射線治療などが原因で脆弱化した骨が、日常的な外力により骨折に陥るもの。
- シンチで、H字型の集積増加がみられるのが特徴で、HONDAサインと呼ばれる。
症例 70歳代女性
仙骨にHondaサインあり。不全骨折(脆弱性骨折)を疑う所見。右恥骨にも集積あり。
Hypertrophic osteoarthropathy:肥厚性骨関節症
- 肺癌によることが多い。
- プロスタグランジンの代謝異常に起因するといわれている。
- 骨シンチで、上下肢、特に脛骨の骨幹に沿ったびまん性の集積増加が特徴。→肥大性骨関節症の症状、骨シンチ画像診断
症例 50歳代男性 肺癌
骨シンチとFDG PETの比較
- FDG-PETは溶骨性の骨転移の診断により有用。骨シンチよりも特異度が高い(骨シンチは偽陽性が多い)
- 骨シンチは造骨性の骨転移の診断により有用。
- 乳癌の場合は、溶骨性、造骨性両方あり、むしろ溶骨性が多いので、シンチのみでは転移なしと断定はできない。
- また溶骨性転移でも骨シンチで集積することあり、これは溶骨周囲に反応性の造骨があるから。
- CTでは溶骨性、造骨性ともに判定可能。ただし、難しい症例もかなりの割合あり。
骨シンチ | FDG PET | |
偽陽性 | 変性、骨棘 | 炎症 |
偽陰性 | 溶骨性転移 びまん性転移 膀胱の近傍 |
造骨性転移 脳や膀胱の近傍 |
特徴 | 感度が高い | 特異度が高い |
症例 40歳代女性 乳癌
症例 50歳代女性 乳癌
骨シンチの Computer Assiated Diagnosis
- BoneNavi®は前立腺癌では予後因子として使える。
骨シンチによる変性性石灰化への集積
- 組織変性部位にCaのoverloadが起こる→Ca沈着部位に集積。
- 横紋筋融解症、筋挫滅、脳梗塞、心筋梗塞、腫瘍壊死など。