先に結論:骨シンチグラフィ(骨シンチ)とは・骨転移の見え方
- 骨シンチは、骨の代謝が活発な所に集まる放射性の薬(⁹⁹ᵐTc製剤)を注射し、2〜4時間後ごろに全身の骨を一度に撮影する検査です(EANM 2016)。がんの骨転移を全身で探すときによく使われます
- 骨転移は多くが黒く集まる(集積亢進=hot spot)として見え、背骨・肋骨・骨盤など赤色骨髄の多い骨に、不規則に多発するのが典型です。前立腺がん・乳がんの転移はよく写ります
- ただし骨折・関節の変形(変形性関節症)・炎症でも集まるため、集積の形や場所(関節の両側か、骨の中か、肋骨に並ぶか)で見分け、必要に応じてCT・MRIで確認します。逆に骨を溶かすだけの転移や全身にびまん性に広がった転移(スーパースキャン)は見落としやすい点に注意します
骨シンチの正常像は?
生理的な集積を認めることが多い部位
- 肩峰
- 烏口突起
- 胸鎖/胸肋関節
- 胸骨角
- 肩甲骨下角
- 仙腸関節
- 股関節
- 甲状軟骨
- 舌骨
- 上腕骨近位部(三角筋粗面)
- 脛骨近位部(脛骨粗面)
生理的集積を認めることがある部位
- 肋軟骨石灰化部位
- 頭蓋骨縫合部
- 前頭骨のびまん性集積(女性)
- 剣状突起
- 利き腕側の肩関節周囲
- 膝関節
- 恥骨結合(出産後の女性の場合)
- 胸壁乳腺(女性)
生理的集積を診断する上での注意点
- 小児の場合は、骨軟部組織への集積が多い。特に骨端板に左右対称の集積を認める。→左右対称ではない場合は、骨髄炎や神経芽細胞腫などの転移を考える。
- 注射漏れによる集積に注意する。
- 尿汚染による集積に注意する。
- 乳がん術後、豊胸術後による左右差に注意する。
- 齲歯による集積に注意する。
- 副鼻腔炎による集積に注意する。
- 放射線治療をした後の照射部に一致した集積低下に注意。
骨シンチグラフィで骨転移を示唆する所見は?
①転移性骨腫瘍は骨髄で増殖するため、骨の長軸方向に進展しやすい。
※骨折は長軸に垂直に生じやすい。
②転移性骨腫瘍は骨の中に生ずる。
※変性性変化は関節面の両側に生ずる。
③転移性骨腫瘍は病変の中央よりも周辺の方に集積が強い(ドーナツ型)。
※他の原因によるものは中央部に集積が強い。 但し、前立腺癌の骨転移は例外である。
④骨転移の集積は、不均一な分布である。
⑤骨転移は、赤色骨髄の分布もしくは Batson’s plexusの分布に一致する。但し、肺癌や腎細胞癌では例外がある。
症例 60歳代男性 前立腺癌

骨シンチにて左第7肋骨に骨に沿って異常集積あり。
同部位はCTにおいても骨硬化を示している。骨転移の所見。
骨シンチの注意点
- 多くの骨転移巣は、骨シンチで集積の増加=hot spotとして表現されるが、場合により周囲よりも低集積=cold spotとなることがあるので注意が必要。
- 骨梁間型の骨転移は骨シンチでほとんど正常な所見を呈するので注意が必要。
- びまん性に骨転移をきたした場合、一見正常所見と間違えることがある。これを、superscanあるいはbeautiful bone scanと呼ぶ。正常像との鑑別は、腎臓がきちんと描出されているか確認することである。(正常の場合は腎臓が描出され、superscanの場合は腎臓が描出されないか、ごく淡くしか描出されない)
症例 60歳代男性 前立腺癌

CTの骨条件ではびまん性に骨硬化像を認めており、全身骨への転移を疑います。
骨シンチでは一見正常に見えますが、両側腎臓への集積を認めず、びまん性骨転移を示唆するSuperscanの状態です。
スーパースキャン(super bone scan)とは
- 定義:骨への集積が軟部組織に比べて著しく強く、腎臓・膀胱(尿路)がほとんど写らない、またはごく淡い骨シンチの所見です。正常の骨シンチでは骨とともに腎臓と膀胱が描出されます(Buckley 2007)。
- 原因:前立腺がん・乳がんなどのびまん性骨転移のほか、副甲状腺機能亢進症・腎性骨異栄養症などの代謝性骨疾患でも見られます(Buckley 2007、EANM 2016、Haug 2026)。
- 見落とさないコツ:骨が「きれいに」濃く写っているのに腎臓が見えないときは、スーパースキャンを疑ってCTで骨硬化の広がりを確認します。
骨シンチ画像を見ただけで直ちに診断できるもの
SAPHO症候群
SAPHOは滑膜炎(Synovitis)・ざ瘡(Acne)・膿疱症(Pustulosis)・骨化過剰症(Hyperostosis)・骨炎(Osteitis)の頭文字で、前胸壁、とくに胸鎖関節の病変が典型的である。
Insufficiency fracture:脆弱性骨折
- 特に骨盤で見られ、低栄養、骨粗鬆症、放射線治療などが原因で脆弱化した骨が、日常的な外力により骨折に陥るもの。
- シンチで、H字型の集積増加がみられるのが特徴で、HONDAサインと呼ばれる。
症例 70歳代女性

仙骨にHondaサインあり。不全骨折(脆弱性骨折)を疑う所見。右恥骨にも集積あり。
Hypertrophic osteoarthropathy:肥厚性骨関節症
- 肺癌によることが多い。
- プロスタグランジンの代謝異常に起因するといわれている。
- 骨シンチで、上下肢、特に脛骨の骨幹に沿ったびまん性の集積増加が特徴。→肥大性骨関節症の症状、骨シンチ画像診断
症例 50歳代男性 肺癌

造骨性骨転移とは(溶骨性・混合性との違い)
骨転移は、正常な骨の作り替え(リモデリング)への影響の仕方で3つに分けられます(Macedo 2017)。
| 型 | 骨の変化 | 主な原発巣 |
|---|---|---|
| 造骨性(骨硬化性) | 新しい骨が沈着し、CTで白く(硬化性に)見える | 前立腺がん、カルチノイド、小細胞肺がん、ホジキンリンパ腫 |
| 溶骨性 | 正常な骨が壊され、CTで黒く抜けて見える | 多発性骨髄腫、腎細胞がん、悪性黒色腫、非小細胞肺がん、甲状腺がん |
| 混合性 | 溶骨と造骨が同じ人・同じ病変に混在 | 乳がん、消化管がん、扁平上皮がん |
乳がんの骨転移は溶骨性が主体ですが、15〜20%は造骨性または両方の病変をもちます(Macedo 2017)。骨シンチの薬は骨ができている場所に集まるため、造骨性の転移ほど強く写り、溶骨性だけの病変では集積が低い・欠損することがあります(EANM 2016)。
骨シンチとFDG PETの比較
- FDG-PETは溶骨性の骨転移の診断により有用。骨シンチよりも特異度が高い(骨シンチは偽陽性が多い)
- 骨シンチは造骨性の骨転移の診断により有用。67論文のメタアナリシスでは、患者単位の感度・特異度は骨シンチ86.0%・81.4%、FDG-PET 89.7%・96.8%、MRI 90.6%・95.4%で、PETとMRIは骨シンチより診断能が高かった。
- 乳癌の場合は、溶骨性、造骨性両方あり、むしろ溶骨性が多いので、シンチのみでは転移なしと断定はできない。
- また溶骨性転移でも骨シンチで集積することあり、これは溶骨周囲に反応性の造骨があるから。
- CTでは溶骨性、造骨性ともに判定可能。ただし、難しい症例もかなりの割合あり。
| 骨シンチ | FDG PET | |
| 偽陽性 | 変性、骨棘 | 炎症 |
| 偽陰性 | 溶骨性転移 びまん性転移 膀胱の近傍 |
造骨性転移 脳や膀胱の近傍 |
| 特徴 | 感度が高い | 特異度が高い |
症例 40歳代女性 乳癌

症例 50歳代女性 乳癌

骨シンチの Computer Assisted Diagnosis
- BoneNavi®は前立腺癌では予後因子として使える。
骨シンチによる変性性石灰化への集積
- 組織変性部位にCaのoverloadが起こる→Ca沈着部位に集積。
- 横紋筋融解症、筋挫滅、脳梗塞、心筋梗塞、腫瘍壊死など。
骨シンチでよくある疑問(Q&A)
Q. 骨シンチで骨折はわかりますか?
A. わかります。多くの骨折は受傷から24時間以内に集積として描出されますが、骨粗鬆症のある高齢者では遅れて写ることがあり、日を置いて撮り直すことがあります(Love 2003)。骨折の集積は肋骨に縦に並ぶ・骨の長軸に垂直、といった形で転移と見分けます。
Q. 骨シンチの正常画像で腎臓や膀胱が写るのはなぜですか?
A. 骨に取り込まれなかった薬は尿に出るため、正常では腎臓と膀胱が描出されます(Buckley 2007)。逆に腎臓が見えないときは、スーパースキャンや腎機能の低下を考えます。
あわせて読みたい:骨シンチの見方と偽陽性、核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ
参考文献
- Van den Wyngaert T, Strobel K, Kampen WU, et al. The EANM practice guidelines for bone scintigraphy. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2016;43(9):1723-38. PubMed
- Buckley O, O’Keeffe S, Geoghegan T, et al. 99mTc bone scintigraphy superscans: a review. Nucl Med Commun. 2007;28(7):521-7. PubMed
- Himuro H, Kurata S, Nagata S, et al. Imaging features in patients with SAPHO/CRMO: a pictorial review. Jpn J Radiol. 2020;38(7):622-629. PubMed
- Przepiera-Będzak H, Brzosko M. SAPHO syndrome: pathogenesis, clinical presentation, imaging, comorbidities and treatment: a review. Postepy Dermatol Alergol. 2021;38(6):937-942. PubMed
- Love C, Din AS, Tomas MB, et al. Radionuclide bone imaging: an illustrative review. Radiographics. 2003;23(2):341-58. PubMed
- Yang HL, Liu T, Wang XM, et al. Diagnosis of bone metastases: a meta-analysis comparing ¹⁸FDG PET, CT, MRI and bone scintigraphy. Eur Radiol. 2011;21(12):2604-17. PubMed
- Macedo F, Ladeira K, Pinho F, et al. Bone Metastases: An Overview. Oncol Rev. 2017;11(1):321. PubMed
- Haug LP, Brown PJ, Bishay SE, et al. Practical Interpretation of Bone Scintigraphy: Metastases, Fractures, and Beyond. Radiographics. 2026;46(2):e250055. PubMed
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