
先に結論:FDG集積=転移ではない。骨・リンパ節・肝臓・前立腺・下垂体などに「転移や腫瘍に似た良性の集積」があり、CT所見・治療歴・経過と合わせて判断する
| 部位 | 転移に似る良性の集積 | 手がかり |
|---|---|---|
| 骨 | 不均一な造血髄(bone pseudometastasis) | 食道扁平上皮癌の病期診断で8.3%。CTで溶骨性変化がない。上位の椎体ほど集積が高い |
| 縦隔・肺門リンパ節 | サルコイド様反応 | 治療後に出現(中央値27か月)し、多くが自然に消退。左右対称のことが多い |
| 静脈 | 深部静脈血栓 | 血栓の範囲に沿った集積。時間とともに低下 |
| 肝臓 | 類洞閉塞症候群(SOS) | 化学療法後。肝のSUVが上がり、病変と肝の比が変わる |
| 前立腺 | BCG膀胱内注入療法後の肉芽腫性前立腺炎 | BCG療法後の35%。1年以内に多く、経過で低下 |
| 下垂体 | 甲状腺機能低下(TSH高値)による集積 | TSHと相関。CT・MRIで形の異常がない |
FDG-PETの偽陽性とは
FDG(フルオロデオキシグルコース)はブドウ糖に似た薬で、糖をたくさん使う細胞に集まります。がん細胞はその代表ですが、炎症細胞、肉芽腫、活発な骨髄なども糖を使うため、がんでない場所にも集積します。これが偽陽性です。
脳・心筋・腸管・褐色脂肪などの「正常でも集まる場所」はFDG-PETの生理的集積とアーチファクトに、PETの基本と読影手順はPET検査(FDG-PET/CT)の基礎知識と読影手順にまとめています。この記事では、とくに転移と取り違えやすい集積を部位ごとに整理します。
骨:骨転移に似る「bone pseudometastasis」
食道癌の病期診断のPET/CT 83件を調べた日本の研究では、転移のように限局した高集積があるのに、その後進行しなかった「bone pseudometastasis」が7例(8.3%)にみられました。7例とも男性の扁平上皮癌で、5例はT1aの早期癌でした(Okuyama 2019)。
特徴は次のとおりです(Okuyama 2019)。
- CTでは正常、または境界不明瞭なやや高吸収で、溶骨性変化がない
- 上位の椎体ほど集積が連続して高い(contiguous accumulation)
- MRIではT1強調像・T2強調像で低信号だが、脂肪抑制T2強調像では目立たない
- 骨髄の強い脂肪変性を伴う不均一な分布が背景にある
続く研究では、食道癌の患者で胸椎の集積が腰椎より高いパターンが多く(48.9%、他のがんでは20.3%)、腰椎の集積の低下を伴う不均一な骨髄の分布が仕組みと考えられています(Okuyama 2020)。
早期の食道癌で骨に限局した集積があっても、CTで骨の破壊がなければ、すぐに骨転移と決めず、MRIや経過で確かめることが勧められます。
リンパ節:サルコイド様反応
サルコイド様反応は、悪性腫瘍に伴って非乾酪性の類上皮肉芽腫ができる反応で、縦隔・肺門リンパ節に多く、FDGが集まります。
悪性腫瘍の治療後にPET/CTで縦隔・肺門のサルコイド様反応がみられた16例の研究では(Kaneko 2019)、
- SUVmaxは3.8〜13.6(平均6.8)で、転移と同じくらい強く集まることがある
- 肺門リンパ節の集積は75%で左右対称
- 治療開始から出現までは9〜86か月(中央値27.1か月)
- 経過を追えた14例のうち11例(79%)が自然に消退(中央値8.5か月)
治療後しばらくたって左右対称に出てくる縦隔・肺門の集積は、再発だけでなくサルコイド様反応も考えます。
症例 70歳代男性 サルコイド様反応(前立腺癌の治療前)

引用:Radiopaedia(Sarcoid-like reaction)
縦隔と両側の肺門のリンパ節にFDGの集積があります。症例ページでは、前立腺癌の治療前のPET/CTで、周囲への癌の広がりがないことから転移よりサルコイド様反応が最も考えられると記載されています。生検で確かめる方法と、経過を見る方法の両方が挙げられています。
静脈:深部静脈血栓
症状のある深部静脈血栓の患者12例と対照24例の前向き研究では、血栓のある静脈のSUVmaxは2.41で、反対側(1.09)や対照(1.21)より有意に高く、目で見てわかる集積でした。集積は発症からの日数とともに下がり、約84〜91日で正常に戻ると推定されています(Rondina 2012)。
血管に沿って細長く続く集積を見たら、リンパ節転移ではなく血栓の可能性を考え、CTで静脈の中の欠損を確認します。
肝臓:類洞閉塞症候群(SOS)
類洞閉塞症候群は化学療法の副作用として起こる肝障害です。化学療法の前後でPET/CTを比べた35例の研究では、SOSの発症後に肝の平均SUVが2.08から2.27に上がり、肝の体積も増えました(Kim H 2016)。
肝の集積を基準にして病変の集積を比べる効果判定では、基準そのものが上がるため評価がずれる可能性があります(Kim H 2016)。肝に不均一な集積が出たときは、化学療法歴と、SOSの診断に使われるEOB-MRI(ガドキセト酸造影MRI)などの所見を合わせて評価します。
前立腺:BCG療法後の肉芽腫性前立腺炎
膀胱癌の患者395例の研究では、BCG膀胱内注入療法を受けた群の35%に前立腺への集積があり、受けていない群では1%でした。前立腺に集積があった49例では経過中に前立腺癌を疑う例はなく、集積はBCG療法から1年以内に多く、再検査では88%で治療なしに低下しました(Kim CY 2016)。
下垂体:甲状腺機能低下(TSH高値)
分化型甲状腺癌の患者215例と健常者215例の研究で、下垂体のSUVは血中TSHと正の相関を示しました。下垂体に偶然集積を見たときはTSHを確認し、CT・MRIで形の異常がないびまん性の集積は生理的な集積と考えられています(Ding 2019)。
よくある疑問(Q&A)
Q. SUVが高ければ転移と考えてよいですか?
サルコイド様反応のSUVmaxは最大13.6に達した報告があり(Kaneko 2019)、SUVの高さだけでは良悪性を決められません。CT所見、分布、治療歴、経過を合わせて判断します。
Q. 偽陽性を疑ったら何をしますか?
骨ならCTでの骨破壊の有無とMRI、リンパ節なら分布と出現時期、静脈ならCTでの血栓の確認、下垂体ならTSHなど、部位ごとに確かめ方があります。病期が変わる所見であれば、組織での確認も含めて主治医と相談します。
あわせて読みたい:PET以外の核医学の生理的集積と偽陽性、PET検査で甲状腺・耳下腺・腸に集積があると言われたら
参考文献
- Okuyama C, Higashi T, Ishizu K, et al. Bone Pseudometastasis on 18F-FDG PET in Japanese Patients With Esophageal Cancer. Clin Nucl Med. 2019;44(10):771-776. PubMed
- Okuyama C, Higashi T, Nakamoto R, et al. Predominance and homogeneity patterns of physiological FDG accumulation in thoracic and lumbar vertebrae: suspected mechanism of “bone pseudometastasis” on FDG-PET in Japanese patients with esophageal cancer. Ann Nucl Med. 2020;34(3):182-191. PubMed
- Kaneko Y, Kato H, Matsuo M. Hilar and mediastinal sarcoid-like reaction after the treatment of malignant tumors: imaging features and natural course on 18F-FDG-PET/CT. Jpn J Radiol. 2019;37(1):88-94. PubMed
- Rondina MT, Lam UT, Pendleton RC, et al. (18)F-FDG PET in the evaluation of acuity of deep vein thrombosis. Clin Nucl Med. 2012;37(12):1139-45. PubMed
- Kim H, Baek SE, Moon J, et al. Increased hepatic FDG uptake on PET/CT in hepatic sinusoidal obstructive syndrome. Oncotarget. 2016;7(42):69024-69031. PubMed
- Kim CY, Lee SW, Choi SH, et al. Granulomatous Prostatitis After Intravesical Bacillus Calmette-Guérin Instillation Therapy: A Potential Cause of Incidental F-18 FDG Uptake in the Prostate Gland on F-18 FDG PET/CT in Patients with Bladder Cancer. Nucl Med Mol Imaging. 2016;50(1):31-7. PubMed
- Ding Y, Wu S, Xu J, et al. Pituitary 18F-FDG uptake correlates with serum TSH levels in thyroid cancer patients on 18F-FDG PET/CT. Nucl Med Commun. 2019;40(1):57-62. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
