先に結論:かぜ(風邪症候群)と見逃してはいけないのどの痛み
- 発熱・のどの痛みの多くはウイルスによるかぜで、鼻水・のどの痛み・せきが同時にあればウイルス性の可能性が高く、抗菌薬は通常不要です
- 溶連菌による咽頭炎はCentorの基準(発熱・扁桃の白苔・前頸部リンパ節の圧痛・せきがない)で可能性を見積もり、迅速検査で確認します
- つばも飲み込めないほどの強いのどの痛み・こもった声・息苦しさ・口が開けにくいときは、急性喉頭蓋炎・扁桃周囲膿瘍など緊急の病気を疑います
※のどの痛みが強く唾も飲み込めない・息苦しいときは、すぐに受診してください。
風邪症候群とは?
- ほとんどの発熱・咽頭痛はウイルス性上気道炎です。
- 鼻炎、咽頭痛、下気道炎症状の3症状が同時に存在する場合、かぜ、つまりウイルス性以外は考えにくいです。
- 上気道、すなわち鼻炎・咽頭炎と、下気道・肺炎のどこに感染のメインがあるかを考えます。急性喉頭蓋炎、A群溶連菌では咳を伴わないことがあります。
- 鼻汁や咽頭痛があると肺炎の可能性は下がります。
いろいろある風邪症候群
- 鼻炎型:くしゃみ、鼻汁、鼻詰まり → 副鼻腔炎
- 咽頭炎型:咽頭痛、イガイガ感 → GABHS咽頭炎
- 下気道炎型:咳嗽、喀痰など → 肺炎など
見逃してはならない咽頭痛
-
急性喉頭蓋炎
- 嚥下痛
- 嗄声
- 前頸部の圧痛
- 呼吸困難
- 流涎
- 開口障害
-
扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍
- 口蓋垂偏位
- 片側軟口蓋下降
- Lemierre症候群
- その他:急性甲状腺炎、悪性疾患、胃・食道逆流、急性心筋梗塞の放散痛
見逃したくない疾患の特徴
- 開口障害:扁桃周囲膿瘍
- 尋常でない激しい咽頭痛:急性喉頭蓋炎
- 後頚部痛・嚥下障害:咽後膿瘍
- 左右非対称性の頚部腫脹・圧痛:Lemierre症候群。Fusobacterium necrophorumなどによる頚部感染性静脈炎。Ann Intern Med. 2009;151(11):812-5.
診察すべきこと
- 咽頭、口腔内所見
- 頚部リンパ節、甲状腺の圧痛
- 皮疹の有無
各論① 咽頭炎
感染症が疑われる場合は、以下の3つを考えます。
- 細菌性か?
- ウイルス性か? 多くはウイルス性です。
- インフルエンザか?
まずインフルエンザを除外します。迅速キット、関節痛、高熱、全身症状などから判断します。
細菌性咽頭炎の確定診断は咽頭培養です。
ただし、結果を待ってからでは遅すぎる場合があるため、
A群連鎖球菌迅速診断キット、または
The Centor Criteriaを用いて抗生剤の必要性を考慮します。
The Centor Criteria
- 発熱がある
- 咳がない
- 圧痛を伴う前頚部リンパ節腫脹がある
- 扁桃腺に白苔がある
Centorの原報では、A群溶連菌の培養陽性率は4項目で56%、3項目で32%、2項目で15%、1項目で6.5%でした。IDSAの2025年改訂(第1部)では、こうした臨床スコアを咽頭痛の評価に組み込み、主に可能性の低い患者の不要な検査を減らすことに使うよう支持しています。
センタークライテリアの使い方と改良版(McIsaacスコア)
- 4項目に当てはまる数(0〜4点)を数え、点数が高いほど溶連菌の可能性が高いと考えます。点数が低い人では溶連菌の可能性は低く、検査や抗菌薬を控える判断に役立ちます。
- Centorの4項目に年齢を加えて点数を調整した改良版がMcIsaacスコアで、子どもから大人まで使えます。家庭医の外来521例の検討では、溶連菌を見つける感度は83.1%(通常の診療では69.4%)で、スコアに従うと初回の抗菌薬処方を48%減らせると試算されました(McIsaac 1998)。
- スコアだけで確定はできないため、点数が中間の人では迅速検査や培養で確かめます。
合併症として急性リウマチ熱、急性糸球体腎炎などがあるため、抗生剤投与を考慮します。
ただし、溶連菌感染で抗菌薬を使うと症状の期間はやや短くなりますが、
成人ではその後の急性リウマチ熱のリスクはきわめて低いとされています。
治療
Centor criteriaで3つ以上、またはA群連鎖球菌迅速キット陽性の場合は、
伝染性単核球症、マクロライド耐性菌の出現に注意し、咽頭培養後に抗生剤を選択します。
- IDSAガイドライン(2012年)では、A群溶連菌咽頭炎の第一選択はペニシリンまたはアモキシシリンです。内服を続けられない人にはベンザチンペニシリンGの筋注も選択肢です。
- ペニシリンアレルギーでは、第1世代セフェム(アナフィラキシー型でない場合)、クリンダマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンを検討します。マクロライドは耐性菌が多い点に注意します。
- テトラサイクリン系(ミノサイクリンなど)やST合剤は、耐性や除菌できない点からA群溶連菌咽頭炎には勧められていません。
- ただし、EBウイルス感染症にアモキシシリンを使用すると皮疹が出現することがあるため注意が必要です。
- 経口摂取が難しいなど重症のときは点滴の抗菌薬を検討します。用量は最新のガイドラインと添付文書で確認してください。
抗菌薬投与により、以下が期待されます。
- 症状改善までの期間がやや短縮する。
- リウマチ熱などの合併症を予防できる。
対症療法
- 解熱・鎮痛目的:アセトアミノフェンやNSAIDs
- 腫れ止め:トラネキサム酸
- 喉の痛み止め:トローチ
- 用量は添付文書で確認してください。IDSAガイドラインでは副腎皮質ステロイドは勧められていません。
- うがい薬:ポビドンヨードなどのうがい薬
一週間以内に耳鼻咽喉科外来受診を指示します。
各論② 急性喉頭蓋炎
高熱を伴う嚥下痛、嗄声、前頚部の圧痛、呼吸困難、流涎、開口障害を認める場合は、
急性喉頭蓋炎を疑います。
頚部側面X線、軟部条件を施行し、
thumb sign、つまり親指のような喉頭蓋腫脹を確認した場合は、直ちに耳鼻科へコールします。
各論③ 扁桃周囲膿瘍
- 高熱
- 口蓋垂の対側偏位
- 軟口蓋腫脹
これらを認める場合は、耳鼻科受診のうえ、切開・排膿を検討します。
各論④ 伝染性単核球症
- EBVやCMV感染が原因です。
- 扁桃に白苔を認めます。
- 後頚部リンパ節腫脹を認めます。前頚部だけでない点が重要です。系統的レビューでは、後頚部リンパ節腫脹(陽性尤度比3.1)、口蓋の点状出血(5.3)、脾腫、腋窩・鼠径リンパ節腫脹があると伝染性単核球症の可能性が高まり、リンパ節腫脹がまったくなければ可能性は下がります。好発年齢は5〜25歳で、16〜20歳ののどの痛みでは約13人に1人が伝染性単核球症です。
- 肝機能障害、肝脾腫を認めることがあります。
- リンパ球増加を認めます。リンパ球50%超かつ異型リンパ球10%超の組み合わせは特異度0.99(陽性尤度比54)と診断に有用です。
- 末梢血に異型リンパ球が出現します。白血球分画の10%以上が目安です。
- 血小板数の低下を認めることがあります。
- トランスアミナーゼ上昇を認めます。
- EBウイルス抗体を確認します。
伝染性単核球症は kissing disease とも呼ばれます。
- アモキシシリンなどのペニシリン系抗菌薬使用で発疹が出現することがあるため注意します。
- EBウイルスによる伝染性単核球症の子ども238例の検討では、アモキシシリン使用後の発疹は29.5%で、昔報告されたアンピシリンでの約90%より低い頻度でした。抗菌薬を使わなかった子どもでも23.1%に発疹が出ています(Chovel-Sella 2013)。
- 発疹は体や腕に広がる赤い小さな斑点や盛り上がり(斑状丘疹)の形をとることが多く、溶連菌の咽頭炎と思って抗菌薬を使った後に出て気づかれることがあります。
鑑別として、急性HIV感染、トキソプラズマ症、HHV-6、風疹、A型肝炎などがあります。
トキソプラズマ症では猫との接触歴、沖縄ではヤギの生食歴なども確認します。
頚部リンパ節腫脹を来す疾患
急性感染
- 細菌性:A群β溶連菌
- ウイルス性:EBウイルス、サイトメガロウイルス、風疹
- 炎症部位:眼、眼瞼、耳、副鼻腔、頭皮、口腔、歯、咽頭
慢性感染
- 結核
非感染性炎症
- 膠原病
悪性腫瘍
- 悪性リンパ腫
- 甲状腺癌
- 頭頚部癌
- 転移性腫瘍
頚部リンパ節腫脹のカルテ記載
- リンパ節:大きさ、圧痛、硬さ、可動性の4要素を記載します。
- 分布:全身性か限局性かを確認します。
- 部位:耳介前後、後頭部、頤・顎下部、頚部、後頚部、鎖骨上窩、腋窩、鼠径などを記載します。
- 病歴:時間的経過、体重減少の有無、既往歴を確認します。結核、梅毒、膠原病、悪性腫瘍、輸血歴など。
- アレルギー、服薬歴を確認します。フェニトイン、抗生剤、スルホンアミドなど。
- 身体所見:発熱、盗汗、全身倦怠感の有無を確認します。
のどの痛みでよくある疑問(Q&A)
Q. センタークライテリアとは何ですか?
A. 発熱・咳がない・前頚部リンパ節の圧痛を伴う腫れ・扁桃の白苔の4項目で、のどの痛みが溶連菌によるものかを見積もる点数です。
Q. のどの痛みで画像検査が必要なのはどんなとき?
A. 急性喉頭蓋炎を疑うときは頚部側面X線(thumb sign)、扁桃周囲膿瘍や咽後膿瘍を疑うときは造影CTで膿のたまりや広がりを確認します。普通のかぜでは画像検査は通常不要です。
参考文献
- Centor RM, Witherspoon JM, Dalton HP, et al. The diagnosis of strep throat in adults in the emergency room. Med Decis Making. 1981;1(3):239-246. PubMed
- Shulman ST, Bisno AL, Clegg HW, et al. Clinical practice guideline for the diagnosis and management of group A streptococcal pharyngitis: 2012 update by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2012;55(10):e86-102. PubMed
- Linder JA, Watson ME, Wessels MR, et al. 2025 Clinical Practice Guideline Update by the Infectious Diseases Society of America on Group A Streptococcal Pharyngitis: Risk Assessment Using Clinical Scoring Systems in Children and Adults. Clin Infect Dis. 2026;82(Suppl 3):i97-i104. PubMed
- Metlay JP, Kapoor WN, Fine MJ. Does this patient have community-acquired pneumonia? Diagnosing pneumonia by history and physical examination. JAMA. 1997;278(17):1440-1445. PubMed
- McIsaac WJ, White D, Tannenbaum D, et al. A clinical score to reduce unnecessary antibiotic use in patients with sore throat. CMAJ. 1998;158(1):75-83. PubMed
- Ebell MH, Call M, Shinholser J, et al. Does This Patient Have Infectious Mononucleosis?: The Rational Clinical Examination Systematic Review. JAMA. 2016;315(14):1502-9. PubMed
- Chovel-Sella A, Ben Tov A, Lahav E, et al. Incidence of rash after amoxicillin treatment in children with infectious mononucleosis. Pediatrics. 2013;131(5):e1424-7. PubMed
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