腹部CTや骨盤CTを読影していると、本来の撮影目的とは関係なく、陰茎部に複数の球状高吸収構造を認めることがあります。

一見すると石灰化、腫瘤、皮下結節、異物、あるいは感染性・炎症性病変を疑いたくなる所見ですが、陰茎皮下に意図的に挿入された人工物、いわゆるシリコンボール真珠様陰茎小結節人工陰茎小結節であることがあります。

英語では、artificial penile nodulessubcutaneous penile modificationpearlinggenital beadingなどと表現されます。

本記事では、CTで偶然見つかる陰茎の高吸収球状異物について、画像診断上のポイント、鑑別、読影時の注意点を解説します。

陰茎のシリコンボール・真珠様陰茎小結節とは?

陰茎のシリコンボール、真珠様陰茎小結節とは、陰茎皮下に球状あるいは小結節状の人工物を挿入した状態を指します。

文献上は、人工陰茎小結節は「性交時の性的快感を高める目的で、陰茎皮下に挿入された不活性物質」と説明されています。素材としては、シリコン、ガラス玉、プラスチック片、ドミノ、歯ブラシの柄を加工したもの、真珠様の小球などが報告されています。

文化的背景や地域差があり、東南アジア、刑務所関連、特定の社会集団などで報告されることがありますが、欧米でも報告例があります。日本の画像診断でも、腹部CTや骨盤CTの偶発所見として遭遇する可能性があります。

CTでの見え方

CTでは、陰茎皮下に境界明瞭な球状または楕円形の高吸収結節として描出されます。

典型的には以下のような所見です。

  • 陰茎海綿体の外側、皮下に位置する
  • 単発または多発する
  • 球状、楕円形、あるいは不整形の小結節として見える
  • 周囲脂肪織濃度上昇や皮膚肥厚を伴わなければ、無症候性の皮下異物としてよいことが多い
  • 感染を伴う場合は、皮下脂肪織濃度上昇、液体貯留、膿瘍形成、皮膚欠損などを伴う可能性がある

Levyらは、救急外来で撮影された腹部CTにおいて、陰茎皮下に複数の境界明瞭な高吸収結節を認め、病歴聴取と身体診察により、性的快感増強目的で自己挿入されたガラス製人工物であった症例を報告しています。

症例 40歳代男性

陰茎に高吸収な球形の異物を複数認めています。

シリコンボールを疑う所見です。

石灰化との違い

陰茎部の高吸収構造を見たときに、まず鑑別に挙がるのが石灰化です。

ただし、シリコンボールや人工陰茎小結節では、以下の点が石灰化との鑑別に役立ちます。

所見 人工陰茎小結節・シリコンボールを疑う所見 石灰化を疑う所見
形状 球状・楕円形で、形がそろっていることが多い 不整形、線状、斑状など多彩
分布 陰茎皮下に規則的または複数個並ぶ 血管壁、腫瘤内、瘢痕部など病変に一致
境界 境界明瞭な人工物様 病変によりさまざま
周囲所見 感染がなければ周囲変化に乏しい 原因疾患に応じた腫瘤、炎症、血管病変を伴うことがある

複数の球状高吸収構造が陰茎皮下に限局して並んでいる場合は、病的石灰化よりも、まず人工物を考えることが重要です。

鑑別診断

陰茎部の皮下結節・高吸収構造としては、以下が鑑別に挙がります。

  • 人工陰茎小結節、シリコンボール、真珠様陰茎小結節
  • 外傷後・手術後異物
  • 皮下石灰化
  • 血管石灰化、静脈石
  • 感染性結節、膿瘍
  • 炎症性肉芽腫
  • 陰茎腫瘍
  • 梅毒など性感染症に関連する病変
  • 陰茎パラフィノーマ、シリコン肉芽腫などの異物反応性病変

ただし、CTで境界明瞭な球状人工物が複数認められる場合、鑑別の中心は「病変」ではなく「挿入された異物」です。

陰茎パラフィノーマ・シリコン肉芽腫との違い

同じ陰茎増大目的の処置でも、球状異物の挿入と、パラフィン・シリコン・油性物質などの注入では、画像所見が異なります。

パラフィンや鉱物油などの注入では、皮下組織に異物反応が生じ、sclerosing lipogranuloma、いわゆる陰茎パラフィノーマを形成することがあります。

この場合、CTやMRIでは単純な球状人工物というより、皮下軟部組織のびまん性肥厚、線維化、低信号域、造影効果の乏しい病変などとして描出されることがあります。Cormioらは、陰茎パラフィノーマにおいてMRIが皮下組織で生じている組織学的変化の評価に有用である可能性を報告しています。

したがって、境界明瞭な球状構造が並ぶ場合は人工小結節びまん性の皮下肥厚や肉芽腫性変化を伴う場合は注入物による異物反応を考えると整理しやすいです。

合併症として注意すべき所見

無症候性で偶然見つかる場合もありますが、陰茎皮下異物には合併症が生じることがあります。

Kirkhamらは、subcutaneous penile modificationの合併症として、疼痛、感染、異物露出、排膿、出血などを報告しています。また、挿入や摘出の際に陰茎海綿体、動脈、神経、尿道を損傷するリスクがあるとしています。

CTで以下の所見を伴う場合は、単なる偶発所見ではなく、感染・炎症・損傷の可能性を考慮します。

  • 陰茎皮下脂肪織濃度上昇
  • 皮膚肥厚
  • 液体貯留
  • 膿瘍形成
  • 異物の皮膚外露出
  • 周囲ガス像
  • 陰茎海綿体や尿道近傍への深部進展

特に発熱、疼痛、腫脹、排膿、外傷歴、尿道症状を伴う場合は、泌尿器科的評価が必要です。

出典

  1. Levy G, Mercer D, Amosi D, Arad E. Self-implanted artificial nodules: a computed tomography mimic of penile pathology. Acta Radiol. 2008;49(2):236-238. doi:10.1080/02841850701675685. PubMed
  2. Kirkham CL, Monks SM, Crawford SB. Complications of subcutaneous penile modifications: a discussion of emergency department presentations and management. Int J Emerg Med. 2019;12:22. doi:10.1186/s12245-019-0241-z. Springer
  3. Stankov O, Ivanovski O, Popov Z. Artificial penile bodies—from Kama Sutra to modern times. J Sex Med. 2009;6(6):1543-1548. doi:10.1111/j.1743-6109.2009.01230.x. PubMed
  4. Cormio L, et al. Magnetic resonance imaging of penile paraffinoma: case report. BMC Med Imaging. 2014. PMC
  5. Fischer N, Hauser S, Brede O, Fisang C, Müller S. Implantation of artificial penile nodules—a review of literature. J Sex Med. 2010;7(11):3565-3571.

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