勤務医の特定支出控除

「医学書や学会費は経費にならないの?」という質問をよく受けます。勤務医の給与には、経費にあたる給与所得控除が最初から差し引かれているため、自営業の人のように自由に経費にすることはできません。ただし、条件を満たせば「特定支出控除」という制度を使える場合があります。このページでは、そのしくみをまとめました。

結論:使えるのは「支出が多い人」に限られる

  • 勤務医の給与には給与所得控除が自動で差し引かれていて、書籍代などを個別に経費にはできない
  • ただし、仕事に必要な支出が多い場合は、特定支出控除で上乗せの控除を受けられることがある
  • 控除されるのは、特定支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超えた部分だけ
  • 多くの勤務医は給与所得控除が大きいため、実際に使える人は限られる

特定支出控除とは

給与をもらっている人が、仕事のために一定の支出(特定支出)をしたとき、その合計が給与所得控除額の2分の1を超えると、超えた部分を給与所得から差し引ける制度です。確定申告で申請し、多くの支出は勤務先の証明が必要です。

特定支出に含まれるもの

種類 例
通勤費 通勤に必要な交通費(勤務先から支給されない分)
職務上の旅費 勤務先の仕事での出張の交通費など
転居費 転勤に伴う引っ越しの費用
研修費 仕事に必要な技術や知識を身につけるための研修の費用
資格取得費 仕事に直接必要な資格を取るための費用
帰宅旅費 単身赴任の人の帰宅の交通費
勤務必要経費 仕事に関係する図書費・衣服費・交際費など(合計65万円まで)

いずれも、勤務先から支給・補てんされていない分が対象です。

勤務医が実際に使えるかを計算してみる

給与収入が850万円を超えると、給与所得控除額は上限の195万円になります。この場合、特定支出の合計が97.5万円(195万円の2分の1)を超えた部分だけが控除されます。

特定支出の合計 控除される額
50万円 0円
100万円 2.5万円
150万円 52.5万円

書籍代や学会費だけで年100万円を大きく超える医師は多くないため、実際に効果があるのは、研修費や単身赴任の帰宅旅費などが多い一部の医師です。

勤務医が経費を考えるなら

  • 勤務先の制度を使う:学会出張費や研究費として勤務先から支給されるなら、そちらを優先します。
  • 副業の経費として扱う:執筆・講演・ブログなどの副業がある場合、その仕事に必要な支出は副業の経費にできることがあります(医療記事の監修で稼ぐ)。
  • 法人化:事業が大きくなれば、法人の経費として整理する方法もあります(医師が会社を作るメリット)。

勤務医が使える控除の全体は医師の節税対策をどうぞ。

まとめ

勤務医の書籍代や学会費は、原則として個別に経費にはできません。特定支出控除で控除を受けられるのは、支出の合計が給与所得控除額の2分の1を超えた場合だけなので、まずは勤務先の制度や、副業の経費としての扱いを考えましょう。

参考資料

※一般的な制度の紹介です。くわしい要件は国税庁の資料や税理士にご確認ください。

最終更新:2026年10月