勤務医の給与は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税のもとで、半分近くが税金になることもあります。一方、副業などで事業の収入が大きくなってきたら、会社(法人)を作ることで税金や働き方の選択肢が広がります。このページでは、医師が会社を作るメリットと注意点をまとめました。
結論:会社を作るのは「事業の利益が大きくなってから」
- 勤務医の給与そのものを会社に移すことはできない。法人化の対象は副業などの事業の収入
- 事業の利益が大きくなると、個人の高い税率より、法人の税率のほうが低くなることがある
- 設立費用・毎年の最低限の税金・社会保険・事務の手間がかかる
- 始める前に勤務先の兼業ルールと、税理士への相談を
会社を作るメリット
1. 税率の差を生かせる
個人の所得税は最高45%(住民税を合わせると約55%)です。勤務医の給与に事業の利益が上乗せされると、その利益に高い税率がかかります。法人の場合、税率は利益の額によって決まり、中小法人は一定の所得までは軽減税率があります。事業の利益を法人に残すことで、税金を抑えられる場合があります。
2. 経費の範囲が明確になる
事業に必要な機材、外注費、交通費、通信費などを、法人の経費として整理できます。ただし、事業と関係のない私的な支出を経費にすることはできません。
3. 家族に仕事を任せられる
家族が実際に事業の仕事をしているなら、その仕事に見合った給与を払うことができます。仕事の実態がない、または仕事に見合わない給与は、税務調査で否認されることがあるので注意しましょう。
4. 退職金や保険などの選択肢が広がる
役員への退職金の支給や、法人での保険の活用など、個人ではできない方法を選べるようになります。小規模企業共済(経営者の退職金のための共済)に役員として加入できる場合もあります。
5. 信用と事業の整理
取引先と法人として契約でき、個人のお金と事業のお金を分けて管理できます。
会社を作るデメリット・注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立費用 | 株式会社は登録免許税や定款の認証手数料などで20万円台〜、合同会社なら10万円前後から |
| 毎年の最低限の税金 | 赤字でも法人住民税の均等割(最低で年7万円程度)がかかる |
| 社会保険 | 役員報酬を払うと、原則として法人で健康保険・厚生年金に加入する必要がある |
| 事務の手間 | 帳簿、決算、法人税の申告など。多くの場合は税理士への依頼費用がかかる |
| お金の出し入れ | 法人のお金は自由に個人で使えない。役員報酬は原則として年1回しか変えられない |
また、株式会社などの一般の法人では、病院や診療所を開くことはできません(医療機関は医療法人などが開設します)。法人化の対象は、診療以外の事業です。
医師が始めやすい事業
医師の知識や経験を生かせる事業には、次のようなものがあります。
- 医療情報の発信(ブログ・動画・SNS)
- 教材や講座、書籍の制作・販売
- 講演・執筆・医療記事の監修
- アプリやWebサービスの開発
くわしくは医師が法人化する際に選ばれやすい事業もどうぞ。私自身も、法人で医療教育の講座やサイト、アプリを運営しています。
会社を作る前に確認すること
- 勤務先の就業規則:兼業や役員就任が認められているか。公務員の医師は特に注意が必要です。
- 事業の利益の見込み:設立費用や毎年の費用を払っても、法人化したほうが得になるか。
- 税理士に相談:所得の状況や家族構成によって、得になるかどうかは大きく変わります。
まとめ
医師が会社を作るのは、副業などの事業の利益が大きくなってからが基本です。税率の差や経費の整理などのメリットがある一方、設立費用や社会保険、事務の手間もかかります。勤務先のルールを確認し、税理士と相談しながら判断しましょう。節税全体については医師の節税対策もどうぞ。
※このページは一般的な考え方を紹介するものです。実際の判断は、税理士などの専門家にご相談ください。
最終更新:2026年10月