「異状死は24時間以内に警察へ」と習ったものの、実際に当直で迷う場面は少なくありません。このページでは、医師法第21条(異状死体の届出)について、厚生労働省の通知と質疑応答集に沿って、当直医が知っておきたいポイントをまとめました。
結論:異状を認めたら24時間以内に所轄警察署へ
- 死体を検案して異状があると認めたら、24時間以内に所轄警察署に届け出る
- 体の表面に異常がなくても、見つかったいきさつや場所などの状況も考えて判断する
- 届け出るかどうかは、検案した医師が個々に判断する
- 迷ったら、上級医や病院の管理者に相談する
医師法第21条とは
医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。
ここでいう「検案」とは、最高裁判所の判決(都立広尾病院事件、平成16年)で、死因などを判定するために死体の外表を検査することとされています。
厚生労働省の通知(平成31年)
厚生労働省は、平成31年2月8日の通知で、次のように示しています。
- 死体の外表に異常所見がない場合でも、死体が発見されるに至ったいきさつ、発見場所、状況など諸般の事情を考慮し、異状を認める場合には届け出ること。
背景には、「外表に異常がなければ届け出なくてよい」と考えて、薬物中毒や熱中症などが届け出られていない、という懸念がありました。
質疑応答集(平成31年4月)のポイント
その後に出された質疑応答集では、次のように整理されています。
- 通知は、考慮すべき事項を示したもので、届出の範囲を新たに広げるものではない。
- 届け出るかどうかは、検案した医師が個々の状況に応じて判断する。
- 最高裁判決の「検案=外表の検査」という考え方を変えるものではない。
- 医療事故などについても、届出の範囲を広げるものではない。
当直医が迷いやすい場面
実際の判断は個々の状況によりますが、次のような場面では、外表だけでなく状況も含めて慎重に考え、上級医や管理者に相談しましょう。
- 自宅や施設などで亡くなっているのが見つかり、生前の状況がわからない
- 転倒や転落、外傷、中毒などが疑われる
- 入浴中や屋外など、状況から病気以外の原因が考えられる
- 診療していた病気だけでは説明しにくい急な死亡
医療事故調査制度との違い
医療に起因する(または起因すると疑われる)予期しなかった死亡は、医療法に基づく医療事故調査制度の対象になることがあります。これは、病院の管理者が医療事故調査・支援センターに報告する制度で、医師法第21条の警察への届出とは別のものです。当直医は、病院の報告の流れを確認しておきましょう。
届出とあわせて考えること
- 書類:異状があり届け出た場合は、検視などの結果も踏まえて死体検案書を交付します。書き方は当直医のための死亡診断書の書き方をどうぞ。
- カルテ:確認した所見、状況、相談した相手、判断の理由を記録しておきましょう。
- ご家族への説明:警察への届出が必要な理由を、丁寧に説明しましょう。
まとめ
異状死の届出は、外表の所見に加えて、見つかったいきさつや状況も考えて、検案した医師が判断します。迷ったときは一人で抱え込まず、上級医や病院の管理者に相談しましょう。死亡確認の流れは医師の死亡確認の手順もどうぞ。
参考資料
※このページは一般的な制度の解説です。個々の事例の判断は、勤務先の手順に従い、上級医や病院の管理者にご相談ください。
最終更新:2026年10月