2013年放射線科診断専門医試験問題&解答解説【76-80】
問題原本はこちらからご覧下さい。
76,50 歳代の女性。両側下肢に腫瘤を触知する。67Ga シンチグラムを示す。 可能性が高いのはどれか。1 つ選べ。
a 皮膚筋炎
b 悪性リンパ腫
c 深部静脈血栓症
d アミロイドーシス
e サルコイドーシス
正解 e
・両側下腿に複数の集積あり。さらに腫瘤を触知する。a、b、d、eにはいずれも集積をする。このうち腫瘤を形成するのはe。肉芽がボコボコできている。
・bはこんなに両側まだらにこない。下肢だけというのも微妙。
Gaシンチの主な適応疾患
・主な適応疾患はSLIMである。
・Sarcoidosis(サルコイドーシス), lymphoma(悪性リンパ腫), inflammation(炎症・感染), malignant melanoma(悪性黒色腫)である。
筋サルコイドーシス
・サルコイドーシスのうち、5%程度に骨・関節・軟部領域にも病変を認める。
・筋サルコイドーシスは、MRIのT1WI/T2WI/STIRにて冠状断像あるいは矢状断像でストライプ状の異常信号(高信号)を呈する。中心に星芒状の瘢痕(dark star)を低信号として認める。
77,50歳代の男性。18F-FDG PET の冠状断像を示す。可能性が高いのはどれか。1つ選べ。
a 検査前に食事をした。
b 減弱補正をしなかった。
c 検査前に全身運動をした。
d コントロール不良の糖尿病患者である。
e 18F-FDGを注射して3時間後の画像である。
正解 b→c
・全身の筋肉の集積亢進あり。脳への集積は正常。また、口蓋扁桃や唾液腺への集積がはっきりしない。減弱補正をしていない状態が疑われる。
・d:コントロール不良の糖尿病→高血糖だがインスリンが出にくい。直前にインスリンを打ったり、内服をしたのであればインスリンが高くなるが、そのような記載はない。
・a:食後ならば、高インスリン状態となり、全身の筋への集積あり。
検査前に食事摂取してしまった方のFDG-PET画像
・c:全身運動の定義が不明。ここまで全身に集積するのか!?
脳への集積が低下を見たとき
・インスリン分泌能正常→筋への取り込み上昇→全身の筋への集積あり。
・インスリン分泌能低下→筋への取り込み低下→全身の筋へは集積されず、脳のみ低下あり。
・a 食後であれば高血糖となり、筋肉への集積は合致しますが、インスリンの作用によりよりびまん性に左右対称性に筋肉に分布する、心臓への集積が非常に強くなる、脳への集積が低下する、があげられます。教科書やネットなどでみられる食後の画像はもっとびまん性に筋肉に入っているように思います。
・b 減弱補正前、であれば減弱補正の理論上体表面の集積が亢進するはずです。特に頭蓋骨の集積などは目立ってくることが多く、脳の外の頭蓋骨の部分に輪っかのような集積がある画像が多いです。また肩周りなども体表面の集積が目立つとはいえず、減弱補正前として合致しにくいような気がします。
・d は慢性的な高血糖という意味と思いますが、それですとやはり脳への集積は低下するべきと思います。
cを前向きに押す理由が薄いですが、前腕部など筋肉の集積に若干の左右差があることや、上腕部や大腿部など大きく使う筋肉に集積が多い点、脳集積の低下がないこと、などからcを否定する理由はないように思います。
(なにかの雑誌でゴルフ後のPET/CTで同じようにやや左右差のある大きな筋肉の集積、拇指球筋の集積の画像を見たことがあります)
T先生ありがとうございます!!!
78,60 歳代の女性。胸部 X 線撮影で異常を指摘されて来院した。18F-FDG PET 冠状断像を示す。可能性が高いのはどれか。1 つ選べ。
a 肺癌
b 肺膿瘍
c 肺結核
d 肝細胞癌
e 腎細胞癌
正解 a
・左肺尖部にリング状の異常集積あり。
・右副腎にも集積あり。肺癌の副腎転移と考えるのが最も妥当。
79,60 歳代の男性。ろ胞性リンパ腫に対する90Y イブリツモマブチウキセタン治療を行う目的で来院した。111In イブリツモマブチウキセタン投与 48 時間後に全身像を撮像した。正しいのはどれか。2 つ選べ。
a 骨髄への集積亢進を認める。
b 左腎への強い集積を認める。
c 不適格生体内分布と判定できる。
d 90Y イブリツモマブチウキセタンの投与は慎重に行う。
e 90Y イブリツモマブチウキセタン投与の適応評価のためには追加撮像が必要である。
正解:a,c?
・2012年の問題に比べて骨髄への集積が著明。
・脾臓に集積あり。腎はL1-2レベル。
90YイブリツモマブチウキセタンによるRI標識抗体療法
・治療前に、111INインジウムで標識したイブリツモマブチウキセタンを投与→撮影して、適応症例を決定する。
・まず診断薬剤のインジウム111標識ゼヴァリン(111In ゼヴァリン)を注射
→48時間後に体内分布をシンチグラフィーにより撮影し体内分布を確認。問題なければ(骨髄などに異常集積あれば、重篤な骨髄抑制などを起こす可能性あり治療はしない)
→1週間後に、治療目的でイットリウム90標識ゼヴァリン(90Y ゼヴァリン)を静注。
→β線による内部照射による放射線治療を行なう。
111In-イブリツモマブチウキセタン(ゼヴァリン)による判定-異常な体内分布とは?
・著明な骨髄へのびまん性の取り込み(骨シンチのスーパースキャンに似た集積)
・肝臓、脾臓、骨髄への局在的な集積(網内系への取り込み)
・正常臓器への集積異常
①肺>肝へのびまん性集積
②後面像で、腎>肝への集積
③正常腸管>肝への集積かつ経時的変化がみられないもの
80,50 歳代の男性。両肩の痛みで来院し,横紋筋融解症と診断された。シンチグラムを示す。投与された放射性医薬品はどれか。1 つ選べ。
a 67Ga citrate
b 99mTc-DTPA
c 99mTc-MDP
d 99mTc-MIBI
e 111InCl
正解 c
・急性腎不全の原因となる横紋筋融解症の診断には、骨シンチが有用。
・横紋筋に集積が見られる。
骨シンチによる変性性石灰化への集積
・組織変性部位にCaのoverloadが起こる→Ca沈着部位に集積。
・横紋筋融解症、筋挫滅、脳梗塞、心筋梗塞、腫瘍壊死など。
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ありがたいです。
感謝、感謝です。
Matsuda先生
コメントありがとうございます。?だらけの解答で申し訳ないです。少しでもお役に立てられれば幸いです。
いつも勉強させていただいています。
77なのですが、脳の集積は減少していません。しかし、筋肉には集積しています。
これは、体を動かしてしまったことによる筋肉への集積上昇を考え、cを選ぶ問題だと思いますがどうでしょうか?
脳に集積しているにもかかわらず、食後状態を選ばせる問題というのは違和感があります。ご検討いただければ幸いです。
いつもこのサイトで勉強させてもらっています。
さて、77ですがcではないでしょうか。
この画像では脳への集積が認められています。
食後であるなら脳の集積は低下するはずではないでしょうか。
脳の集積が有り、筋肉の集積があるということで、運動後状態を選ばせる問題だと思います。
ご検討いただければ幸いです。
なか先生
コメントありがとうございます。
返信遅くなり申し訳ありません。
ご指摘の通り、aではなさそうですが、cも微妙で、頚部などの生理的集積が見られない点から、bではないかという案が浮上してきました。
お世話になっております。
話題になっている77番ですがやはりCではないでしょうか。
画像からわかることとして、比較的広い範囲で筋肉への集積が強い(がびまん性とはいえない)、脳の集積は低下していない、心臓にほとんど集積していない、といえます。
・a 食後であれば高血糖となり、筋肉への集積は合致しますが、インスリンの作用によりよりびまん性に左右対称性に筋肉に分布する、心臓への集積が非常に強くなる、脳への集積が低下する、があげられます。教科書やネットなどでみられる食後の画像はもっとびまん性に筋肉に入っているように思います。
・b 減弱補正前、であれば減弱補正の理論上体表面の集積が亢進するはずです。特に頭蓋骨の集積などは目立ってくることが多く、脳の外の頭蓋骨の部分に輪っかのような集積がある画像が多いです。また肩周りなども体表面の集積が目立つとはいえず、減弱補正前として合致しにくいような気がします。
・d は慢性的な高血糖という意味と思いますが、それですとやはり脳への集積は低下するべきと思います。
cを前向きに押す理由が薄いですが、前腕部など筋肉の集積に若干の左右差があることや、上腕部や大腿部など大きく使う筋肉に集積が多い点、脳集積の低下がないこと、などからcを否定する理由はないように思います。
(なにかの雑誌でゴルフ後のPET/CTで同じようにやや左右差のある大きな筋肉の集積、拇指球筋の集積の画像を見たことがあります)
難しい問題だと思うのですが、いかがでしょうか・・・。
詳細にありがとうございます。勉強になります。
全身運動の定義がよくわからないですが、確かにおっしゃるようにcを否定する理由がないですね。
消去法からしてもcなのかもしれませんね。