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2010年放射線科専門医試験問題&解答解説【26-30】診断
問題原本はこちらからご覧ください。
26,
頭部 CT の初期虚血変化(early CT sign)について正しいのはどれか。1 つ選べ。 a 発症 24 時間以降に認める。 b 頭頂葉に見られることが多い。 c 拡散強調画像よりも客観性が高い。 d 皮質の吸収値はわずかに上昇する。 e 初期虚血変化部分の面積と予後に関連がある。
a ×:脳梗塞の超急性期に認められる変化。
b ×:島部~基底核部にて最もよく観察される。
d ×皮質の吸収値はわずかに低下する。
e ○ このサインが広汎に認められると tPA静注療法の予後が悪く出血のリスクが増えるとされている。1/3ルール。
earlyCT signのチェックポイント
①皮質・白質の境界消失(皮髄境界消失) (loss of gray-white matter differentiation)
※島皮質はMCAが閉塞した場合、ACAとPCAからのcollateralから最も遠く、分水嶺となる。そのため、この部位の皮髄境界消失を特に、「loss of the insular ribbon」と呼ぶ。また、表示Window幅を十分狭くしないと皮髄境界は明瞭とならない。(80以下を推奨)
②Silvius裂の狭小化、脳溝の狭小化・消失(effacement of the cortical sulsi)
③レンズ核の不明瞭化(obscuration of the lentiform nucleus)
④hyperdenseMCAsign(MCAにひっかかった塞栓性血栓による所見)
1)どの血管と比較しても高濃度
2)石灰化ではない
※広義のearlyCTsignに入れるが、血栓溶解療法の決定に影響は与えない。
1/3MCArule
・MCA領域の1/3を超えるようなearlyCTsign(+)のcaseでは出血のリスクが高いため血栓溶解療法の適応とならない。(1/3MCArule)
27,
頭部外傷について誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a 急性硬膜外血腫は骨折を伴うことが多い。 b 脳挫傷は CT で高吸収域と低吸収域が混在する。 c 脳幹の背側は軸索損傷の好発部位のひとつである。 d 脳ヘルニアに二次的に生じる脳幹の出血を Duret出血と呼ぶ。 e 急性硬膜下血腫の CT 診断では狭いウインドウ幅が有効である。
・e:急性硬膜下血腫は WWを多少広く(200 前後)することで観察しやすくなる。
びまん性軸索損傷の好発部位
・高頻度:脳梁(特に体部と膨大部)、大脳皮質下、中脳背外側部
・時々:海馬、脳弓、基底核、視床
デュレー出血(Duret hemorrhage)
・テント切痕ヘルニアにおいて脳幹部に発生する二次性出血。
・中脳、脳底部血管の屈曲、牽引により出血を来しやすい。
28,
頸部囊胞性疾患と発生部位との組み合わせで誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a がま腫 ――舌下腺 b 側頸囊胞 ――第 2 鰓裂 c Zenker憩室 ――中咽頭 d Tornwaldt囊胞――上咽頭 e 囊胞性リンパ管腫(hygroma) ――後頸三角
・ bは頚部食道(咽頭食道移行部)に発生する仮性憩室。
ガマ腫
・唾液の流出障害によって生じる粘液貯留嚢胞。
・口腔底の舌下腺管や小唾液腺管の閉塞が原因となる。
第2鰓裂嚢胞=側頸嚢胞
・扁桃から舌骨レベル、側頚部上方に多い。
・Baileyの分類 Ⅰ型:胸鎖乳突筋前縁、Ⅱ型(最多):胸鎖乳突筋前縁で頸動脈鞘側方で顎下線後方、Ⅲ型:内外頸動脈の間から内側に進展、Ⅳ型:咽頭粘膜間隙内。
Tornwaldt嚢胞
・上咽頭正中。成人の3%。無症状。
リンパ管腫lymphangioma
・胎生期の未熟リンパ組織が中枢のリンパ管に接合できず、分画されて嚢腫状に発育したと考えられる血管奇形である。
・70~80%のリンパ管腫は頸部、特に後頸三角部に発生する 。
29,
頭頸部癌の TNM 分類において T3 に該当するのはどれか。1 つ選べ。 a 甲状腺癌で喉頭浸潤 b 上顎癌で前頭洞浸潤 c 上咽頭癌で頭蓋骨浸潤 d 中咽頭癌で下顎骨浸潤 e 下咽頭癌で甲状軟骨浸潤
・甲状腺癌、中咽頭癌、下咽頭癌のT3 は、最大径が 4cm をこえる腫瘍。
・上顎癌の T3 は、上顎洞後壁の骨、皮下組織、眼窩底または眼窩内側壁、翼突窩、篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍。
症例 50歳代男性 左上顎癌。扁平上皮癌 T3N0M0stageⅢ(眼窩底への進展あり)
上咽頭癌の病期分類
上咽頭癌T分類(UICC 2009)
T1 上咽頭に限局 or 中咽頭 and/or 鼻腔進展
T2 傍咽頭間隙に進展*
T3 頭蓋底骨組織 and/or 副鼻腔に進展
T4 頭蓋内進展 and/or 脳神経・下咽頭・眼窩 or 側頭下窩・咀嚼間隙に進展
*傍咽頭間隙への進展=後外側への進展
・T2aであった中咽頭・鼻腔進展がT1へ区分
・T2は傍咽頭間隙進展で統一された。
・上咽頭癌の骨浸潤は、主に2つ。頭蓋底への直接浸潤、後方へ進展して、頸椎に進展するパターン。
※特にT2が大事。
※Rosenmüller 窩への進展は傍咽頭間隙にも到達していないので、T1。
30,
副鼻腔真菌症について正しいのはどれか。1 つ選べ。 a 前頭洞に好発する。 b 骨変化を伴うことは稀である。 c air-fluid level を呈することが多い。 d 起因菌はクリプトコッカス菌が多い。 e T2 強調像で著明な低信号を認める。
・上顎洞、篩骨洞に多く発生する。
・air-fluid level は細菌性の副鼻腔炎を示唆する所見である。
・起因菌はアスペルギルスが多い
副鼻腔真菌症のMRI所見
・T2 強調像では著明な低信号を呈することが多い。その理由としては、ムチンの中に含まれる濃縮された蛋白成分とマンガンや鉄などの金属の存在が挙げられる。
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