2009年放射線科専門医試験問題&解答解説【71-75】診断
問題原本はこちらからご覧ください。
71,
鉄沈着症をきたす病態と沈着部位の組み合わせで誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a 溶血性貧血 ――骨髄 b 鎌型赤血球症 ――腎皮質 c 発作性夜間血色素尿症 ――腎髄質 d 特発性ヘモクロマトーシス ――膵 e 輸血によるヘモジデローシス ――脾
a ○2次性鉄過剰症の原因。
b ○微少血栓形成による梗塞症状と溶血をきたし、腎皮質に沈着。
c ×皮質に沈着。
ヘモクロマトーシス(Hemocromatosis)
・最近では、遺伝性疾患の鉄過剰症(超粘膜からの鉄の過剰吸収)をヘモクロマトーシスとし、その他は二次性鉄過剰症とされる。
・鉄過剰症は、多臓器(肝、脾、骨髄、膵、腎臓など)に鉄沈着を来す。
参考)ヘモクロマトーシスの画像診断
72,
進行肝癌の動注化学療法を行う際に,神経障害を来す危険性が高い肝外栄養血管はどれか。2 つ選べ。 a 左胃動脈 b 肋間動脈 c 内胸動脈 d 大網動脈 e 腎被膜動脈
a ×左胃動脈→胃粘膜障害。
b ○肋間動脈→Adamkiewicz動脈から脊髄障害、皮膚障害。
c ○内胸動脈→Adamkiewicz動脈から脊髄障害、皮膚障害。
d ×大網動脈→胃・十二指腸粘膜障害
e ×腎被膜動脈→腎障害
Adamkiewicz artery
・脊髄は、典型的には1本の前脊髄動脈と2本の後脊髄動脈によって栄養される。
・前者が2/3の領域を支配している。
・胸腰部の前脊髄動脈は、肋間または腰動脈から分岐する複数の前根髄質動脈から血流を受けるが、これらのうち最も太いものがAdamkiewicz動脈(別名:大神経根動脈: great anterior radiculomedullary artery)である。
・分岐する肋間、腰動脈は個人差が大きいが、Th8~L1の間で左側から起始する頻度が高い。太さは0.8~1.3mm程度であり、前脊髄動脈と合流する際に特徴的な”ヘアピンカーブ”を形成する。
73,
自己免疫性膵炎について誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a ステロイドが奏効する疾患である。 b 膵炎症状で発症することはまれである。 c 血中 IgG 4 値の上昇が高率に認められる。 d 膵管狭細像と膵腫大の画像所見が診断に必須である。 e 原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholangitis : PSC)は類縁疾患である。
・c:○血中 IgG4 高値(陽性率 90.4%:高 IgG血症だと 70.5%)。ただし、IgG4高値の膵癌症例もあるので要注意。
・PSCはステロイドでは治らないので、きちんと鑑別する必要がある。当然、類縁疾患ではない。
自己免疫膵炎は、びまん性膵腫大がある場合は、例えばIgG4上昇があるだけで診断がつきます。膵管狭細は必須ではありません。
この問題は、原発性硬化性胆管炎を、自己免疫膵炎の類縁と見なしているのだと思います。なか先生
参考)自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の画像診断
74,
胆道系の癌の危険因子として可能性が低い疾患はどれか。1 つ選べ。 a 胆石 b 総胆管囊腫 c 胆囊腺筋腫症 d 膵管胆管合流異常 e 原発性硬化性胆管炎
a 胆石 ×:胆嚢癌に胆石合併頻度は 50-60%。一方、胆石症に胆のうがんが合併する頻度は 2-3%。なので一応危険因子なのか。ただし、症状がない群では、evidenceがないとサマーセミナーで言ってはったが。
b 総胆管囊腫×膵管胆管合流異常との合併にて、胆道癌リスクあり。胆嚢癌では 20-30%。
c 胆囊腺筋腫症 ○-△正しく診断され、無症状の場合には積極的な治療は必要無い。画像上胆嚢癌との鑑別がしづらい症例もあり、注意が必要。癌のリスクがあるという報告とそれを否定する報告がある。
d 膵管胆管合流異常 ×:胆道癌リスク高く、発見次第手術適応。
e 原発性硬化性胆管炎 ×10~15%は胆道癌へ。
75,
膵囊胞性病変について誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a 漿液性囊胞腫瘍は乏血性である。 b 膵リンパ上皮囊胞は良性病変として扱われる。 c 粘液性囊胞腫瘍は組織学的に卵巣様間質を有する。 d 分枝型の膵管内乳頭粘液性腫瘍は膵鉤部に好発する。 e 主膵管型の膵管内乳頭粘液性腫瘍は分枝型に比べ悪性化しやすい。
a ×腫瘍内の隔壁や間質は濃染。「染まる水」と覚える。
e ○malignant potentialとしてフォローする。
非腫瘍性嚢胞の特徴のまとめ
仮性嚢胞 | なんでもあり。常に疑う。 | |
貯留嚢胞 | PKや膵石→分枝膵管の閉塞 ただし、単房性→pseudocyst、多房性→IPMN,MCN もあり。MPDとの交通はあってもよい。 |
|
先天性嚢胞 | MPDとの交通なし、mural noduleなし、類円形 | |
リンパ上皮嚢胞 | 嚢胞内面=扁平上皮、
T1high DWIhigh CA19-9↑ |
男>女、膵外に突出、境界明瞭、石灰化、壁は厚く不整 |
類上皮嚢胞 | 副脾から発生=尾部! | |
類皮嚢胞 | 20代(若い!) |
参考)
・膵槳液性嚢胞腺腫(SCN:serous cystic neoplasm)SCTの画像診断
・粘液性嚢胞腫瘍(MCN)の画像診断
・膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の画像診断
ご案内
腹部画像診断を学べる無料コンテンツ
4日に1日朝6時に症例が配信され、画像を実際にスクロールして読影していただく講座です。現状無料公開しています。3000名以上の医師、医学生、放射線技師、看護師などが参加中。画像診断LINE公式アカウント
画像診断cafeのLINE公式アカウントで新しい企画やモニター募集などの告知を行っています。 登録していただくと特典として、脳の血管支配域のミニ講座の無料でご参加いただけます。
関連記事はこちら

いつも大変お世話になっております。
こちらのサイトを軸に勉強させて頂いたおかげで、21日は頑張れそうです。
試験直前ですが、一つだけ質問させて下さい。
問題73についてなのですが、自己免疫膵炎はIgG4関連疾患として、IgG4関連硬化性胆管炎との関連はあるが(類縁疾患であるが)、原発性硬化性胆管炎とは関連がない、という認識で良いでしょうか。
原発性硬化性胆管炎とIgG4関連硬化性胆管炎は全くの別の疾患と考えたほうが良いのでしょうか
>こちらのサイトを軸に勉強させて頂いたおかげで、21日は頑張れそうです。
そう言っていただけると作った甲斐があります。
>IgG4関連硬化性胆管炎との関連はあるが(類縁疾患であるが)、原発性硬化性胆管炎とは関連がない、という認識で良いでしょうか。
原発性硬化性胆管炎とIgG4関連硬化性胆管炎は全くの別の疾患と考えたほうが良いのでしょうか
おっしゃる通りです。別疾患であり、PSCと鑑別することが重要です。
随分と遅い投稿で恐縮ですが、やはり73の解答は、少なくともこの問題的にはdだと思われます。
自己免疫膵炎は、びまん性膵腫大がある場合は、例えばIgG4上昇があるだけで診断がつきます。膵管狭細は必須ではありません。
この問題は、原発性硬化性胆管炎を、自己免疫膵炎の類縁と見なしているのだと思います。
診断基準については難病情報センターを参照しました。
http://www.nanbyou.or.jp/entry/4505
なか先生
いつもありがとうございます。遅くなり申し訳ありません。自己免疫膵炎の類縁ということですか。確かにおっしゃる通りだと思います。ありがとうございます。