2009年放射線科専門医試験問題&解答解説【1-5】基礎
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1.
正しいのはどれか。2 つ選べ。 a 細胞の放射線感受性は S 期で高い。 b 分割照射では再酸素化は重要ではない。 c 酸素効果は LET の増加とともに増加する。 d 低 LET 放射線の効果は線量率に大きく影響を受ける。 e LET が大きくなると放射線感受性は細胞周期にあまり依存しない。
a × G2-M期で最も高く、S期後半が最も低い。
b ×再酸素化は分割照射を行う生物学的根拠の一つである。
c ×酸素効果比はLETの増加に伴い減少する。すなわち、LETの増加に伴い酸素の影響は小さくなる。
d ○高LET 放射線に比べ低 LET 放射線では線量率の違いにより生物効果は大きく変化する。
e ○一般に、低 LET 放射線に比べ高 LET 放射線では放射線感受性の細胞周期依存性は小さい。
2.
次の腫瘍のうち放射線感受性が高いのはどれか。2 つ選べ。 a 悪性黒色腫 b 腎細胞癌 c 精上皮腫 d 骨肉腫 e 胚腫(germinoma)
・放射線感受性の高い細胞は癌化しても高感受性。高感受性腫瘍はWilms腫瘍、未分化胚腫瘍、悪性リンパ腫など。
3,
放射線の人体への影響で正しいのはどれか。1 つ選べ。 a 発癌にはしきい線量がある。 b 不妊は確率的影響に分類される。 c 未分化組織や細胞は放射線感受性が高い。 d 約 0.1 Svの被ばくで血液成分の減少が見られる。 e Bergonie-Tribondeauの法則は人体では当てはまらない。
a ×確率的なのでしきい線量はない。
b ×不妊は確定的。つまりしきい値がある。
c ○未分化ほど感受性が高い。
d × 0.5Gy以上の全身被ばくで末梢血中のリンパ球の減少が認められる。
e ×完全に正しいわけではないが一般論としては人体(ヒト)を構成する細胞にも当てはまる。
Bergonie-Tribondeauの法則とは
・放射線に対する感受性は臓器によって異なる。
・一般的な法則として以下の細胞は放射線感受性が高い。
①細胞分裂が盛んな細胞
②将来行う分裂回数が多い細胞
③形態的・機能的に未分化な細胞
4,
誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a 温熱療法には放射線感受性増感作用がある。 b 薬剤による増感作用には相加や相乗作用がある。 c 抗癌剤による放射線感受性増感作用は癌特異的である。 d 分子標的薬剤にも放射線感受性増感作用を示すものがある。 e 抗癌剤による増感作用には亜致死障害回復阻害や細胞周期同調などが関与している。
a ○
b ○
c ×放射線増感作用を持つと報告されている抗癌剤の増感効果は癌細胞特異的ではなく正常細胞も増感する。特異的と呼べるような放射線増感作用を持つ抗癌剤は存在しない。
d ○:分子標的薬剤の一つ EGF 受容体阻害剤は放射線増感作用があるという報告あり。
e ○:抗癌剤による放射線増感作用発現の機序は、①DNA損傷の修復阻害や②放射線高感受性な細胞周期(G2-M 期等)への同調など。
5,
放射線による人体影響のうち確率的影響はどれか。1 つ選べ。 a 不妊 b 発癌 c 白内障 d 白血球減少 e 胎児の被ばくによる精神発育遅延
・癌、白血病や遺伝的影響は確率的。