2012年放射線科診断専門医試験問題&解答解説【56-60】
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56,
50 歳代の女性。慢性腎不全に対する長期透析療法中で,貧血・不整脈もあり通院治療している。軽度肝機能障害があり,腹部単純 CT が施行された。鑑別診断に有用でないのはどれか。1 つ選べ。 a MRI の T2 強調像 b MRI の T2*強調像 c 投薬内容の確認 d 肝実質部 CT 値測定 e 血清フェリチン値測定
・CTで肝のびまん性高吸収。
・鉄、Cu2+、Gd3+沈着では、常磁性体物質なので、MRで鋭敏に検出可能。なので、a、bは○か。
・cもアミオダロンや他、Gdやリピオドールなどで○。
・eも○だろう。だとするとd?高いことが分かっても仕方ない??
肝のびまん性高信号の鑑別診断
・鉄:へモジデローシス、ヘモクロマトーシス ・金:金コロイド療法後 ・銅:Wilson病など ・ヨード:アミオダロンやリピオドール注入後 ・ガドリニウム:MRl造影剤 ・トリウム:トロトラスト ・糖原病 ・ヒ素、タリウムなど
57,
70 歳代の男性。胆石症の術前検査として MRCP が施行された。 本例について考えられるのはどれか。1 つ選べ。 a 膵癌合併が多い。 b 腹側膵炎を来しやすい。 c 十二指腸の狭窄を来しやすい。 d 胆囊癌のリスクが高い。 e 膵頭十二指腸切除が必要である。
・膵胆管合流異常あり、胆管非拡張型では胆嚢がんの発生比率が高い。なので、d。
膵胆管合流異常
・膵管と胆管が十二指腸壁外で合流する先天奇形。
・機能的にOddi括約筋の作用が合流部に及ばないために膵液と胆汁の相互混入が起こる。膵管内圧は胆管内圧よりも高いので、膵液は胆管側に容易に逆流する。
・膵液と胆汁が混和すると膵酵素が活性化し、胆道粘膜に障害を起こし、過形成、化生、異形成を生じ、最終的に胆管がんや胆嚢がんが発生すると考えられている。
・胆管拡張や胆管結石、膵炎の原因にもなると推測されている。
・胆道癌の発生率が高いので、発見されれば分流手術(肝外胆管切除を行い、消化管と胆管を吻合することにより膵液と胆汁の相互逆流を遮断する)が行われる。
・胆管拡張を伴うものでは胆管癌の発生比率が高く、胆管非拡張型では胆嚢がんの発生比率が高い。
・共通管の長さが15mmを超えると合流異常とされる。MRCPで診断できる。
58,
60 歳代の男性。上腹部痛を主訴に来院した。造影 CT(動脈優位相と平衡相)を示す。さらにチェックすべき臓器として重要性が低いのはどれか。1 つ選べ。 a 脾 b 胆道 c 腎 d 尿管 e 前立腺
・膵尾部のソーセージ様腫大。capsule like rim。自己免疫性膵炎(IgG4関連膵炎)の所見。
・IgG4関連疾患はb-eでは起こりうる。
IgG4関連疾患
・IgG4を中心とした疾患範囲は大きく広がり、涙腺、唾液腺、甲状腺、リンパ節、髄膜、大動脈、肺、心膜、胆管、腎臓、前立腺、皮膚など殆どすべての臓器に生じうる疾患と考えられる。
参考)
・自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の画像診断
・IgG4関連疾患まとめ
59,
60 歳代の男性。慢性肝障害で経過観察中に腹部 CT で異常を指摘され精査となった。腹部 MRCPを示す。考えられる疾患について誤っているのはどれか。1 つ選べ。 a 無症状のことが多い。 b 胆管炎を起こしやすい。 c 若年者の膵炎の原因となる。 d 画像上,Santorinicele を認める。 e 主膵管と副膵管の先天的な癒合不全である。
・膵管非融合 pancreas divismの症例。胆管炎じゃなくて膵炎を合併しやすい。
膵管非融合 pancreas divism
・背側膵管と腹側膵管の間に癒合が見られない発生異常。
・背側膵からの膵液すなわち膵液の大部分が小さく狭い小乳頭に流出するため、膵液がうっ滞し、食事と関連した腹痛や膵炎の原因になると考えられている。
・無症状のことも多い。
・背側膵に慢性膵炎が見られることも多いが、稀に腹側膵に満たれることもある。
・太い背側膵管が総胆管の腹側を走行し、小乳頭に向かう。背側膵管の遠位末端に嚢状の拡張を認めることがあり、santoriniceleと呼ばれる。
参考)膵管融合不全の画像診断
60,
50 歳代の女性。検診の超音波検査で膵尾部に囊胞部を持つ充実性腫瘤を指摘され精査となった。Dynamic CT を示す。正しいのはどれか。1 つ選べ。 a 膵炎に合併しやすい。 b 外傷後に生じやすい。 c 癌化する危険性がある。 d SPIO 造影 MRI が有用である。 e 囊胞部は主膵管と交通がある。
・膵尾部に脾と同様の造影効果を呈する腫瘤内に嚢胞性病変あり。膵内副脾から発生した類表皮嚢胞。
類表皮嚢胞
・隔壁様構造をもつ境界明瞭な多房性嚢胞性病変
・嚢胞壁や外周には脾組織が確認される。なので、脾と同じ造影効果を示す。
・CA19-9やCEA高値例が多い。
・充実成分を伴い隔壁様構造を有する境界明瞭な単房性・多房性嚢胞性病変であるが、充実性部分が副脾と断定できるかが診断のポイントとなる。
・異所性脾組織の診断には、99mTc標識スズコロイドを用いた肝脾シンチグラフィーやSPIO造影MRIが有用とされる。造影MRIで脾臓と同程度のSPIOの取り込みがある。
・MRIにてT1WIでhigh、DWIでhigh。
参考)膵類上皮嚢胞(epidermoid cyst)の画像診断(膵内副脾)
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