2012年放射線科専門医過去問診断26−30
問題はこちらから参照して下さい。
a 上衣腫 ○ 最多。
b 星細胞腫 × 2番目に多い。小児はこれが一番。
c 神経鞘腫 ×
d 血管芽腫 × 3番目。
e 神経節膠腫 ×
脊髄上衣腫(ependymoma)
・中心管、終室の上衣細胞から発生。
・髄内のグリオーマの60%を占め、成人の脊髄髄内腫傷では最も多い。
・病理組織学的に、細胞性上衣腫(cellular)と粘液乳頭状上衣腫(myxopapillary)があり、発生部位、発生年齢、画像所見が異なる。
・細胞性上衣腫は30~40歳代に好発し、小児には少ない。頚髄に好発し、3~4椎体以内に限局することが多い。頚部痛や背部痛,運 動感覚障害をきたす。
・粘液乳頭状上衣腫は脊髄上衣腫の約3割を占め、そのほとんどが脊髄円錐と終糸に起こる。より若年者に多く、出血の頻度が高い。腰仙部痛や下肢脱力、膀胱直腸障害をきたす。
・神経線維腫症2型(NF2)を伴っている場合があるので、上衣腫を見たら聴神経腫瘍や髄膜腫にも注意を払う必要あり。
a 上衣腫 ○
b 髄膜腫 ○
c 血管芽腫 × von Hipple Lindau病
d 神経膠腫 ×
e 上衣下巨細胞星細胞腫 × 結節性硬化症 両側聴神経鞘腫→NF2のこと。つまりNF2に合併するものを選べという問題。
神経線維腫症2型(NF-2,neurofibromatosis with bilateral acoustic schwannomas)
・常染色体優性遺伝(22ql2;腫傷抑制遺伝子であるmerlinの異常)であるが,約50%は突然変異にて生じる。
・頻度は50,000人に1人ほどである。
・両側聴神経鞘腫はほぼ必発で,発症年齢は平均約20歳と単発の聴神経鞘腫と比べ若い。
・小児期の症状としては痙攣,顔面神経麻痺などで,難聴は少ない。
・成人では難聴を呈する。
・皮膚症状は少なくカフェ・オレ斑は約25%で見られる。また,皮膚の神経鞘腫が見られることがある。
・約半数で白内障を伴う。
NF2
ME2 (meningioma ependymoma)と覚える。
NF2のMR所見
・両側聴神経鞘腫(90~95%)および他の脳神経(主に第3,5,7脳神経)鞘腫(約50%),髄膜腫(約50~60%)が見られる。
・個々の腫瘍の所見は単発のものと変わりない。
・主な病変が聴神経鞘腫,髄膜腫のため,造影MRIが必要である。
・脊髄病変(神経鞘腫、上衣腫、髄膜腫など)の合併にも注意が必要である。
a 眼窩 T4
b 副鼻腔 T3
c Meckel 洞 T4?
d 傍咽頭間隙 ○ T2はここへの伸展のみ。覚える。
e Rosenmüller 窩 T1
まず円錐とは4つの外眼筋がつくる円錐。円錐内には眼窩の血管, 外眼筋を支配する感覚・運動神経, 視神経, 視神経鞘などが含まれる。
a 髄膜腫 ○
b 類皮腫 ×
c 神経膠腫 ○ 視神経原発腫瘍のうち80%を占める。
d 悪性黒色腫 ○転移。
e 悪性リンパ腫 ○
類皮腫 dermoid
・胎生期の外胚葉の迷入によって発生する嚢胞性腫瘤であり,真の腫腫ではない。
・表皮成分および毛嚢・皮脂腺などの皮膚付属器を含む真皮成分からなっており,文字通り皮膚に類似した腫瘤である。嚢胞壁は角化を示す重層扁平上皮,皮膚付属器,線維結合組織で構成され, 嚢胞の内容物はこれらか排泄される角質や脂肪などが混在する。
・発症年齢は小児〜中年と幅広い。
・正中近くに発生する傾向があり,頭蓋内ではトルコ鞍近傍や前頭蓋底に好発する。
・後頭蓋窩(特に正中の小脳虫部~第四脳室)やその他の脳室内などにも認められる。眼窩(顔面では眼窩上外側の発生が最も多いとされる。つまり円錐内ではない。)や頭蓋骨(特に縫合付近)にも発生する。
・後頭部や鼻前頭部の皮膚洞に合併することがあり、その場合は感染のリスクがある。破裂すると,くも膜下腔や脳室内に内容物が広がってchemical meningitisを生じ,頭痛・痙攣・意識障害・血管攣縮・水頭症などを来す。
・鞍上部の病変では視野障害なども生じうる。
・稀に悪性転化することがあり,その場合の組織型は扇平上皮癌である。
a 乳頭癌は最も頻度が高い。○ 85%。
b 濾胞癌は最も予後が良い。×それは乳頭癌。次に濾胞癌>髄様癌>悪性リンパ腫>>未分化癌の順。
c 未分化癌は若年者に発生する。× 60歳以上。
d 悪性リンパ腫は慢性甲状腺炎(橋本病)に発生する。○
e 髄様癌は多発性内分泌腫瘍症 1 型に属する。×2型。 MEN1=膵、下垂体、副甲状腺腺腫(すいすい不幸)、 MEN2=髄様、褐色細胞、副甲状腺腺腫(ずいずい不幸)
→31-35へ
27についてです。
神経膠腫はあくまで家族にNF-2の方がいる場合の診断基準なのかなと思うのですがどうでしょうか。解説でも述べられているように、問題文は「両側」聴神経鞘腫とあるので、NF-2に合併しやすいものとしてはa,bでいいのではないかと思いました。試験的にもひっかけたいのはNF-1に合併しやすいものだと思うので、作成者は神経膠腫はNF-1に合併しやすいものというつもりで作っているのではと思いました(問題的には選択肢が神経膠腫ではなく視神経膠腫だとbetterなのかと思います)。
あくまで診断基準を吟味したうえでの個人的な意見です。
ありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。修正しました。