胚細胞腫瘍(Germ cell tumor:GCT)

  • 胚(芽)腫(germinoma):40%
  • 胎児性癌(embryonal carcinoma)
  • 卵黄嚢腫瘍(yolk-sac tumor)
  • 絨毛癌(choriocarcinoma)
  • 奇形腫(teratoma):20%

に分類される。
※約1/3はこれらが混合する混合胚細胞腫瘍(mixed GCT)に分類され、30%を占める。中でも胚腫と奇形腫の組み合わせが多い。

  • 主に10-20歳代に好発。
  • 画像での鑑別はしばしば困難で、血清、髄液中の腫瘍マーカーは重要。

胚細胞腫瘍と腫瘍マーカー

AFP HCG
胚腫germinoma
Germinoma with STGC +
胎児性癌 embryonal carcinoma
卵黄嚢腫瘍 yolk sac tumor ++
絨毛癌 choriocarcinoma ++
奇形腫teratoma
– mature
– Immature or 悪性転化 +/- +/-
混合腫瘍 mixed tumors +/- +/-

※STGC:syncytiotrophoblastic giant cells(合胞体栄養細胞性巨細胞)

胚(芽)腫(germinoma)

  • 原発性脳腫瘍の2-3%。
  • 胚細胞腫瘍のうち大型の明るい胞体を持つ細胞とリンパ球様の小細胞が密に存在する、いわゆるtwo cell patternを示すものを指す。
  • 精巣のseminoma、卵巣の未分化胚細胞腫(dysgerminoma)とは同じもの
  • 若年者に好発する。
  • 胚腫は松果体、鞍上部に好発。他、基底核。
  • 好発年齢は10-25歳。
  • 男性:女性は2~2.5: 1だが、発生頻度が部位により異なり松果体では男性>>女性、鞍上部では男女差なし。松果体では男性>>女性、鞍上部では男女差なし。
  • しばしば髄液播種を来す。
  • 鞍上部病変は尿崩症が必発基底核病変は病側脳が萎縮傾向(hemiatrophy)
  • 松果体部では、頭痛、嘔吐、めまい、Parinoud兆候、Argyll-Robertson瞳孔、思春期早発(男児)など。
  • 放射線感受性が高く、放射線治療は必須。
  • 5年生存率は91%で、治癒が期待できる。悪性腫瘍であるが9割以上は治癒する。

胚(芽)腫の画像所見

  • 単純CTで軽度高吸収を示す。
    参考)単純CTで高吸収を示す腫瘍:髄芽腫、胚腫、悪性リンパ腫
  • T2WIで灰白質と比べ等-高信号を示し、造影で強く増強される。
  • 拡散強調画像で高信号を示す。
  • しばしば石灰化を伴うが、松果体部、鞍上部に発生する他の腫瘍(髄膜腫、松果体細胞腫、頭蓋咽頭腫)もしばしば石灰化を来すため、あまり鑑別点にはならない。
  • ただし、松果体の場合は松果体自体の石灰化を内部に取り込む傾向にある。
  • 鞍上部では下垂体後葉の高信号が消失する。
  • CTが最も役に立つのは、基底核に発生した場合。基底核発生の胚芽腫は、早期よりCTで基底核の高吸収域と萎縮を示す。
  • 基底核・視床発生例では、同側の大脳半球、大脳脚の萎縮が知られているが、後期に見られる所見。

症例 30歳代男性 頭痛と視覚症状の増加。

引用:radiopedia

CTで腫瘍内部に石灰化を認める(生理的石灰化を内部に取り込む形態)。T2WIで嚢胞を複数認めており、両側視床に浸潤所見あり。胚腫に特徴的。

関連記事:松果体実質腫瘍のCT、MRI画像所見

基底核胚腫について
  • 早期の基底核胚細胞腫は実質性腫瘍を形成せず、MRIではT2WIで淡い高信号として認めるのみ。造影効果も示さない。
  • 基底核に生じた胚腫が、小嚢胞を腫瘍内に複数有することがある。
  • 病側の基底核や大脳半球の萎縮が認められる事がある。梗塞性病変と誤診される事が多いが、単純CTにて基底核病変が高吸収を示していれば、胚腫を疑う

早期の基底核胚腫の診断における磁化率強調画像SWI

  • 早期胚細胞腫は、SWIでは明瞭な低信号域として描出される。

germinoma

AJNR Am J Neuroradiol 30:1694 –99, 2009 October)

occult germinoma

  • 尿崩症で発症する小児例でみられ、発症時に腫瘤や異常信号がとらえられない。発症から数年を経て下垂体に腫瘤が出現する。
  • 尿崩症がほぼ必発であり、初発症状であることが多い。
  • 早期には下垂体後葉の高信号消失、下垂体柄の腫大のみ見られることがある。
  • 小さな腫瘍は特発性尿崩症として診断されて、その後画像が撮られないことがあるので、この疾患があることを知っておき、フォローが必要。
  • 大きな腫瘍は鞍内に進展したり、海綿状脈洞を侵すことあり。

参考)尿崩症の鑑別診断

  • 胚腫 germinoma
  • リンパ球性下垂体炎
  • リンパ腫
  • 結核やサルコイドーシスなどの肉芽腫性疾患
  • LCH

奇形腫(Teratoma)

  • 成熟奇形腫、未熟奇形腫、悪性転化を伴う奇形腫。
  • 先天性脳腫瘍で最も多く、しばしば巨大腫瘤を形成。
  • 混合性の不均一な信号パターン。
  • 石灰化や脂肪を同定できることもある。

画像所見

▶CT所見:

  • 脂肪、軟部組織、骨などの成分により多彩。

▶MRI所見:

  • T2WIは多彩。T1WIは脂肪成分は高信号。充実成分はよく増強される。
  • 未熟奇形腫では周囲脳にしばしば浮腫性変化。

r06jn28g09x

Sagittal T1-weighted MR image shows mixed-signal-intensity lesion in the pineal region (straight arrow) with multiple hyperintense droplets scattered through the subarachnoid space (curved arrows). Moderate hydrocephalus is present. Ruptured dermoid cyst was confirmed at surgery.

(radiology 2006;239:650-664)

Malignant nongerminomatous GCT

  • 胚腫を除くGCTをNongerminomatous GCTという。
  • Malignant nongerminomatous GCTには胎児性癌、卵黄嚢腫瘍、絨毛癌、悪性奇形腫などが含まれ、HCGやAFPが上昇しやすい。
  • 松果体や鞍上部の不均一な腫瘤。

画像所見

▶CT所見:

  • 嚢胞や出血などの成分により多彩な腫瘤

▶MRI所見:

  • T2WIは多彩。不均一な増強効果。
  • 周囲脳にしばしば浮腫変化。
  • 画像による鑑別は難しく、血清、髄液中の腫瘍マーカーは必須。

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