脳血流シンチグラフィ

  • 主に脳血管障害、認知症で撮影される。
  • 脳血管障害では手術適応の有無に重要。予備能を見るためにアセタゾラミド®︎を負荷することがある。
  • 認知症では、アルツハイマー病、DLB、認知症を伴うパーキンソン病、前頭側頭変性症などを分布から鑑別する目的で撮影される。

脳血流シンチグラフィの薬剤

  • 脳血流シンチグラフィを描出できる薬剤には、123I-IMP、99mTc-HMPAO、99mTc-ECDの3種類がある。
  • 薬剤により集積分布の差異があり、99mTc-ECDは後頭葉、小脳、99mTc-HMPAOは小脳に集積しやすく、内側側頭葉には集積がしにくい傾向にある。
  • また、123I-IMPは分解能が悪いが最も脳血流PETの分布に近い。
  • 99mTc-HMPAO、99mTc-ECDは注射をした後すぐに脳に分布し、数時間ほぼ保たれるため、緊急で撮影したり、静止できない人の場合は先に注射をして、鎮静剤をかけた後で撮影することも可能。
  • 一方、123I-IMPの場合は、投与後20-30分後分布に時間がかかりこれくらいの時間から撮影ができる。また、上の二つと異なり経時的に脳の分布から出ていくため、高血流を過小評価する恐れがある点に注意が必要。

脳血管障害における脳血流シンチ

脳の灌流圧の低下に伴う脳虚血の病態を捉えることが目的。

brain spect

動脈圧が低下する病態:脳梗塞、主幹動脈狭窄〜閉塞、脳動静脈奇形周囲、くも膜下出血(血管攣縮期)など

頭蓋内圧が亢進する病態:脳出血、脳腫瘍、脳膿瘍、閉塞性水頭症、くも膜下出血など

血行学的リスクの評価

脳循環予備能の評価は安静時脳血流量測定と脳血管拡張負荷による脳血流量測定の2回の計測で行う。

PETによる評価

Powersらの15O-PETによる病型の分類:安静時脳血流が低下、かつ脳血液量・脳平均循環時間・脳酸素摂取率が上昇した状態をStage2として、最も血行力学的リスクが高いとし、治療の介入が必要とした。

SPECT(脳血流シンチ)による評価

Kurodaらは、一側性の大脳脳虚血において、

  • 安静時脳血流量の低下
  • アセタゾラミド負荷後の脳循環予備能障害

の組み合わせから病型分類を行い血行力学的リスクを推定する。

分類 安静時能血流量 脳血管反応性
Type1
Type2
Type3
Type4

このうちアセタゾラミド負荷後の脳血管反応性の低下が平均値の2標準偏差以上の領域をType3として最もリスクが高いとした。(Stroke 32:2110-2116,2001)

症候性内頚動脈及び中大脳動脈・狭窄症に対する外科的血行再建術の有効性を検証する共同研究であるJapanese EC-IC Bypass Trial(JET study)では、

  • 安静時脳血流量が80%未満かつ
  • アセタゾラミド負荷後の患側の脳の脳血管反応性が10%未満

を示す脳循環予備能障害を外科的血行再建術の適応基準としている。

日本脳卒中学会の脳卒中治療ガイドライン2009においても、EC-ICバイパス術の適応を考慮して良い状態の一つとしてこのJET Studyの適応基準を示している。(ただしエビデンスレベルはグレードB)

また、内頚動脈狭窄に対して

  • 頚動脈内膜剥離術(CEA:carotid end-arterectomy)
  • 頚動脈ステント留置術(CAS:carotid artery stenting)

が検討される場合にもアセタゾラミド負荷により脳循環予備能を測定する。

これが術前に行われるのはCEA後の合併症である術後過灌流症候群の発生を予測するため。

術前の患側能の脳血管反応性が

  • 12%以上→過灌流は発生しない。
  • 12%以上→22%で100%以上の過灌流が発生する。

という報告(Stroke 32:1567-1573,2001)や

術後過灌流症候群の発生の予測因子として

  • 75歳以上の高齢者
  • 術前の安静時能血流量の患側対健側比が0.75以下
  • 術前のアセタゾラミド負荷による脳血管反応性が20%以下

を挙げている報告(AJNR 25:1403-14-8,2004)がある。

脳血流が増加

  • 脳梗塞亜急性期(贅沢)
  • 脳塞栓の再開通時
  • 発作中のてんかん(発作後もしばらくは高集積が遅延することがある。)
  • 脳炎
症例 70 歳代の男性。2 日前から異常行動。麻痺はない。

Epilepsy2011年放射線科診断専門医試験問題71より引用。

てんかん発作時に左頭頂葉の血流増加あり。症状消失時には消失している。

脳血流が減少

  • 脳梗塞(ただし亜急性期以外)
  • 脳動脈・頸動脈の狭窄や閉塞による血流低下(血行力学的脳循環障害)
  • 脳出血
  • 左(右)被殻出血時の右(左)小脳
  • 発作間欠時のてんかん
  • 脳神経の機能低下、障害の結果として起こる血流低下(血流・酸素代謝の一致した障害)
症例 70歳代女性 急性期脳梗塞

brainsinti

梗塞部位に一致して、脳血流の低下が認められる。

症例 60 歳代男性。左上肢の脱力発作。発作は月に1回程度の頻度で数分間後には消失する。

ICA stenosis

2010年放射線科診断専門医試験問題61より引用。

脳血流シンチでは、安静時に右のACA-MCA領域を中心に血流低下あり。

アセトゾラミド負荷により、ほぼ安静時と変わりなく、血流予備能の低下が疑われる。

梗塞に至らない場合はプールシンチでは変化がないことが多い。内頚動脈の高度狭窄が疑われる。


症例 慢性期右内頚動脈閉塞例。

15O-PET による脳血流(CBF),脳酸素摂取率(OEF),脳酸素消費量 (CMRO2),脳血液量(CBV)の画像

misery perfusion2006年放射線科診断専門医試験問題61より引用。

右大脳半球後部にCBF低下、OEF上昇、CBV上昇あり。CMRO2では、左右差ははっきりしない。脳血流量が低下しているのに対して、脳組織が酸素摂取率を増加させることで酸素消費を保っている状態と考えられる。脳血流量は低下しており、misery perfusionと考える。CBVの上昇はvasodilatationによる側副血行の発達を示す所見である。

脳血流と脳代謝の関連

  • 正常ならば、脳血流と脳代謝は相関する。
  • misery perfusion:代謝に比べて血流不足の状態。例)脳動脈閉塞
  • luxury perfusion:代謝に比べて血流が過剰の状態。例)脳動脈閉塞再開通、脳梗塞亜急性期(発症1-3週間後)

認知症における脳血流シンチ

認知症を起こす疾患の典型的な血流低下部位を押さえておく必要がある。

正規化された画像を見る場合の注意点として、全脳の血流が低下する場合、全脳平均であるGLBでは、病変を過小評価することがあるので注意。

大脳半球が全体的に血流低下を認めており、小脳の血流が増大している場合は、全脳の血流が低下していると判断する。

アルツハイマー型認知症 Alzheimer’s disease(AD)

頭頂側頭連合野の血流低下 、後部帯状回・楔前部の血流低下を認める。さらに進行すると前頭連合野にも血流低下が及ぶ。

詳しくはこちらにまとめました→アルツハイマー病における脳血流シンチの画像診断は?

前頭側頭型認知症Frontotemporal dementia(FTD)

前頭葉、側頭葉前方部の血流低下を認める。

レビー小体型認知症Dementia with Lewy bodies(DLB)

頭頂側頭連合野の血流低下 ・後頭葉の血流低下を認める。

詳しくはこちらにまとめました→レビー小体型認知症(DLB)の画像診断の特徴!



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