腸管の浮腫性変化を見たときには、炎症や虚血がまず鑑別に挙がりますが、中でも右側結腸に浮腫性変化を認めており、かつ炎症が疑わしいときには、どのような疾患が考えられるのか、それぞれの特徴とともにまとめました。

右側結腸の腸炎の鑑別診断

右側結腸に好発する腸炎

  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 腸炎ビブリオ
  • エルシニア
  • O-157腸炎
  • 薬剤性腸炎(出血性)
  • アメーバ腸炎
  • 赤痢菌
  • 好中球減少性腸炎

 

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サルモネラ、カンピロバクター

  • 回盲部の粘膜下層に侵入することで炎症反応を誘導する。
  • 下痢症状を起こす。
  • 生食、加熱不足、二次汚染が原因となる。
  • カンピロバクターは回盲弁上に潰瘍を形成することが多い。

腸管出血性大腸菌 O-157腸炎

  • 生肉の摂取が禁止され、今後減ると考えられる。
  • 右側結腸粘膜に付着して、増殖し、ベロ毒素を産生する。
  • 下痢・腹痛で始まる。→1-2日後に血性下痢が出現。が典型的。
  • 著明な壁肥厚と層状濃染を呈する。
  • 終末回腸が比較的保たれる傾向にあり、鑑別の一助となる。
  • まれに、溶血性尿毒症症候群(HUS)血栓性血小板減少性紫斑病急性脳症を合併し、時に重篤な経過をたどる。単なる腸炎では片付けられない!!
  • 診断は便中ベロ毒素、便培養
  • 特徴的な高度の右側結腸壁肥厚(3層構造)の所見から早期にその可能性を考慮することが重要。虚血性腸炎のような浮腫性変化が特徴。内視鏡所見、病理所見ともに虚血性腸炎に類似すると言われる。

※同様に高度の壁肥厚を呈するものに偽膜性腸炎が知られる。O-157による出血性大腸炎は壁肥厚15-18mmと報告あり。

※炎症所見、壁の浮腫の強い割りに回腸末端には炎症が軽微なのが特徴ともされる。

右側結腸炎を見たときにまず鑑別に挙げる疾患
  • サルモネラ
  • カンピロバクター
  • 腸炎ビブリオ
  • エルシニア
  • O-157

 

出血性腸炎(薬剤性)(抗生物質起因性出血性腸炎)

  • 抗生物質(広域ペニシリン、セフェム系など)の経口投与後(1−7日後)に腹痛、水様下痢、トマトケチャップ様の血便を認める。
  • 毒素産生型であるKlebsiella oxytocaが高頻度に検出される。
  • アレルギー、菌交代などが考えられているが不明。
  • 抗菌薬投与後数日で起こる。
  • 偽膜性腸炎と比べて熱発は軽度。壁肥厚は軽度から中等度。
  • 大腸内視鏡はびまん性の表層性の出血が特徴。偽膜形成はない。
  • 上行結腸〜下行結腸に好発。直腸〜S状結腸には少ない。
  • CTでは高度浮腫状壁肥厚を認める。
  • 診断は臨床経過、便培養(感染性腸炎との鑑別のため便培養は必須。)
  • 抗生剤中止と補液で急速に回復。
66M ユナシン・サワシリンによる薬剤性出血性腸炎

Klebsiella oxytocae

横行結腸から下行結腸、一部上行結腸に広範な浮腫性変化を認めている。特に横行結腸で炎症所見は強く、周囲の脂肪織濃度上昇も認められる。

好中球減少性腸炎(neutropenic enterocolitis:NE)

  • 免疫低下例、特に好中球減少時に発症する無顆粒性蜂窩織炎。
  • 盲腸、右半結腸、回腸末端を好発部位とした重篤な腸管の炎症性疾患。
  • 基礎疾患は白血病など悪性腫瘍における化学療法後、反復性好中球減少症、再生不良性貧血、後天性免疫不全症候群(AIDS)など。
  • 化学療法に起因した好中球減少性腸炎では盲腸に病変を認めることが多い。
  • 起炎菌としてはClostridium属が多いと言われる。
  • 病因は明らかではないが、化学療法による消化管上皮の破壊、抗生物質投与による常在菌叢の変化が挙げられる。盲腸に多いのは血流が乏しく、消化管運動が減退し、内容物が停滞するといった部位的な特徴が関与していると考えられる。
  • 死亡率は50-100%とされていたが、近年は減っている。

参考文献

画像診断 Vol.41 No.4 増刊号 2021 P144-146

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