多発性硬化症(MS:multiple sclerosis)

  • 空間的、時間的に中枢神経病変が多発する炎症性脱髄疾患。
  • 脱随性疾患の中で最多。
  • 髄鞘のミエリン蛋白に対する自己免疫疾患。ほか、ウイルス感染症の関与が考えられている。
  • 30歳前後を中心として15〜50歳の発症が多い。
  • 女性に多い傾向あり。(1.5:1)
  • 髄液中のオリゴクローナルバンドの検出率が高い(90-95%)ことが特徴である。
  • 多くのMSは寛解・再燃型であり、その最初の臨床徴候(初回発作)がCIS(clinically isolated syndrome suggestive of MS)である。MS患者の85%、単相性の臨床症状を呈する。6割がMSに進展する。CISの代表的な症状は、横断性脊髄炎と視神経炎(NMO)である。
  • 発症早期のインターフェロンβの投与が再発抑制に有用とされ、早期診断の重要性が高まった。
  • MRの普及、発展により典型的MSの症状がないにも関わらずMS様の画像を呈する症例が存在することが知られてきており、radiologically isolated syndrome(RIS)と呼ばれている。高率にCISやMSに移行するため、画像診断の果たす役割は大きくなっている。

MSのマクドナルド診断基準(2010)とは

▶︎空間的多発性:以下の4カ所のうち2カ所以上にT2延長病変がみられる。

空間的多発性
  • 脳室周囲、皮質下、テント下、脊髄
  • 時間的多発性:以下のいずれかがみられる。
  • 造影病変と非造影病変が同時にみられる。
  • 新規のT2延長病変が出現する。

 

MSの画像所見

Ovoid lesion(Dawson’s finger)

  • 側脳室壁と垂直の方向に長い、卵円型の深部白質病変。髄質静脈周囲の炎症を反映している、よく見られるが特異性はそれほど高くない(虚血性病変などでも見られ得る)

T1 black hole

  • 軸索消失や脱髄の程度が強い病変はT1強調像にて低信号を呈する。臨床症状とよく相関する。acute lesionは浮腫のため一時的に低信号を呈することがある。真のT1 black hokeは6ヶ月以上低信号が続く病変をいう。

▶動画で学ぶovoid lesionとT1 black hole

Enhancing lesion

  • 新しい病変や増大しつつある病変(active lesion)は血液脳関門の破綻を反映して、Gdにて高率に造影される。
  • リング状に造影される場合、造影が途切れることがある(open-ring sign)。脱髄疾患に割と特徴的。

Callosal-septal interface lesion:MSに特徴的。

  • 脳室壁と垂直方向に広がる脳梁内病変。
  • 血管走行に沿い、炎症を反映すると考えられる。
  • 感度、特異度ともに高い。
  • 薄いスライスの矢状断FLAIR像がMSの早期診断に役立つ。

Isolated U-fiber lesion

  • 皮質下白質に沿って広がる病変。約半数のMS患者で少なくとも1個見られる
  • MSに比較的特異的な病変であることが認められ、新診断基準のMRI criteriaに採用された。

Tumefactive MS lesion

  • 一見したところ脳腫瘍(glioblastoma)の様に見えるMS病変。Glioblastomaよりはmass effectに乏しい。リング状造影効果を呈しうるが、リングが途切れていることがある(open ring sign)のが特徴的。

Spinal cord lesion

  • 脊髄の炎症・脱髄疾患の中で最多。
  • 2/3で頭蓋内病変を伴い1/3で脊髄のみに病変を認める。頸髄に多い(脊髄病変の2/3)。
  • 感覚障害、筋力低下、膀胱直腸障害などが主な臨床症状となる。
  • 30-40歳代の女性に多い。
MSによる脊髄症の画像所見
  • 画像所見はT2WI高信号、T1WIで等〜低信号を呈する。
  • 造影で活動性病変は造影効果を伴う。
  • 長さは2椎体以下、断面積は脊髄の半分以下とされる。やや背側優位(後索44%、側索25%)に分布する。
  • 脱髄性病変であるため、髄鞘が存在する白質優位(=辺縁優位)に存在するが、限局するものは少なく中心部の灰白質も含むことが多い。
  • 半数以上で多発性の病変。
  • 脊髄および視神経に病変の主座をおくタイプのMSが近年注目され、NMOとして区別される。
  • 臨床経過と画像所見の関係:30%は症状の改善もしくは不変があるのに、画像所見は進行。症状が進行した患者の多くは、画像は不変。60%で画像の進行と症状の進行が一致。治療後1ヶ月以上経過しても腫大のある脊髄病変は他の疾患を考慮して検索。

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