脳卒中に適した画像はCTなのでしょうか?それともMRIなのでしょうか?

MRIは脳梗塞に強いと言われますが、実際の所どうなのでしょうか?

脳卒中に適した画像についてまとめてみました。

脳卒中に適した画像の撮影モダリティとは?

脳卒中は脳梗塞と脳出血に大きく分かれる事はわかりました。ところで、脳卒中が疑われる患者さんがきたら、何の画像を撮影すればいいんですか?

日本では、第一選択はCTというところが多いです。CT撮影は24時間対応可能な施設も多いです。


なるほど。では、CTを取れば脳梗塞か脳出血かわかるということですか?

厳密にはわかりません。CTでは脳出血を診断できますが、急性期の脳梗塞はよほど広範であるものでないとわからないことが多いです。

逆にMRIは脳梗塞の早期診断に優れています

じゃあ、結局両方撮らないといけないんじゃないですか?
そうですね。CTもMRIも両方撮れる施設では、脳卒中が疑われるとき、まずCTを撮影して、出血がなければ、MRIを撮影するということもあります。

しかし、CTしかない施設では、CTで出血を除外し、臨床所見から脳梗塞が疑わしいときは、脳梗塞として治療を開始したり、場合に寄っては、MRIが撮影できる施設に転送されることもあります。

ただし、

「MRI検査により治療開始時間が遅れる可能性がある場合は、MRIを施行しないよう考慮するべきである」

(急性期脳梗塞画像診断実践ガイドライン2007)

と記載されています。

施設の状況や患者さんの状態などにより、臨機応変に対応しなくてはいけません。

ここまでのまとめ
  • CTが第一選択。
  • CTは急性期脳出血に強い。
  • MRIは急性期脳梗塞に強い。
  • MRIが撮影できない施設はたくさんある。今ある状況でベストを尽くす。

頭部CT

脳卒中が疑われる場合の第一選択

・脳実質内出血、クモ膜下出血、硬膜下血腫、硬膜外血腫など急性期頭蓋内出血の描出に優れる

脳出血の描出はMRIより上。ただし、例外もある。

・急性期脳梗塞の描出には弱いが、わかることもあるので、その特徴を覚えておく。→early CT sign(早期虚血サイン)とは?

なるほどところで、造影CTはどうですか?

造影したら、コントラストがついて見やすくなるんじゃないですか?



頭部の場合は、造影は基本的に必要ありません。

逆に出血が見えにくくなります。基本は単純CTです。

ただし、血管を描出するCTAは一部の場合では撮影した方がよいことがあります。

CTAが有用であるという報告
  • 椎骨・脳底動脈閉塞を疑う場合。
  • 経動脈的血栓除去術など急性期再開通療法を考慮する場合。
  • CTAの元画像が早期虚血サインの診断に有用。

頭部MRI

急性期脳梗塞の描出に優れる。CTより上。

DWI

・特に発症6時間以内の急性期脳梗塞の診断で最も診断能が高い。最重要。

・見かけの拡散係数ADCが低下していることを確認することも重要。ただし、発症直後や病変が小さい場合は判定困難なことあり。

・他、痙攣後脳症や脳炎、脳膿瘍の診断にも有用。

FLAIR

・梗塞や虚血性病変の検出。

・皮質枝閉塞(intraarterial singal)の描出に優れる。

・側副路の評価もある程度可能。

・急性期〜亜急性期のくも膜下出血の検出に強い。

T2WI

・FLAIRが弱い後頭蓋窩の虚血性病変の描出に優れる。

・しかし、DWIで代用できるため、省略可。

参考)脳梗塞の画像の経時的変化

T1WI

・脂肪、出血(メトヘモグロビン)、マンガン沈着、メラニン沈着などが特異的な高信号を呈する。

・ただし、急性期においてこれらの検出を第一目的とすることは少ないため、必ずしも急性期のルーチンに入れる必要はない。

T2*WI

・出血の検出力はCTより上。磁化率変化に鋭敏。穿通動脈レベルのヘモジデリン沈着の検出=microbleedの検出。

・ただし、古い出血(亜急性期のメトヘモグロビンや陳旧性のヘモジデリン)か新しい出血(デオキシヘモグロビン)かわからないことがあるので、解釈には慎重に。

・皮質枝塞栓の検出(塞栓子や血栓のsusceptibility sign)。

SWI

・皮質枝塞栓の検出(susceptibility sign)。

・穿通動脈レベルのヘモジデリン沈着の検出=microbleedの検出。

MRA(MR angiography)

・閉塞部位の特定に有用。

・ただし、血管の径の評価はCTAより下。狭窄を過大評価することあり。

灌流画像

・DWIと併用することにより、梗塞巣やペナンブラの評価に有用。


やはり急性期脳梗塞の診断には、DWI(diffusion)が最重要なんですね。

よくわかりました。

CTが有用な疾患、MRIが有用な疾患まとめ

CTが有用
  • 脳出血急性期
  • クモ膜下出血急性期
  • 頭部外傷急性期
  • 頭蓋底、顔面頭蓋外傷
MRIが有用
  • 脳梗塞超急性期
  • クモ膜下出血亜急性期
  • 前頭葉や側頭葉に限局する脳挫傷や軸索損傷
  • その他の中枢神経救急疾患全般

参考)ここまでわかる頭部救急のCT・MRI 

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