転移性肝腫瘍

  • 転移性肝腫瘍の多くは乏血性(中心の変性壊死を反映し、辺縁が動脈相で多血で、中心部はdelayed enhancementを呈する(大腸癌など))。
  • リング状の造影効果の実態は、腫瘍自体の造影効果(辺縁部に腫瘍細胞が多く密集するため)と腫瘍周囲の肝の造影効果(perilesional enhancement)が合さったものである。
  • 結腸直腸癌の転移などのいわゆる乏血性転移では、これは主に腫瘍による圧迫に起因する腫瘍周辺の正常肝のAPシャントや、線維間質の増生、炎症、血管新生による造影効果を見ている。
  • 一方、多血性腫瘍で腫瘍辺縁優位にviableな腫瘍が残存している場合に造影されているのは、主に腫瘍自体である。
  • 典型的な転移性肝腫瘍はMRIでT2WIで正常肝よりも高信号、膿瘍や血管腫よりは低信号となる。(ただし、後述する壊死の高度な転移や粘液癌の転移ではT2WIで非常に高信号になることがある。)

症例 40歳代女性 乳癌 多発肝転移

DSC06540

多発肝転移を認めています。

辺縁部に一部リング状造影効果あり。内部は乏血性です。

注意すべき転移性肝腫瘍とは?

  • 多血性肝腫瘍
  • 石灰化を含むもの
  • 脂肪肝がベースにある場合
  • 嚢胞との鑑別が困難なもの
  • MRでの注意点

多血性転移性肝腫瘍

  • 多血性を示すものは、腎細胞癌(淡明細胞型)、カルチノイド、膵神経内分泌腫瘍、甲状腺癌、褐色細胞腫、悪性黒色腫、GIST、肉腫など。時に乳癌も。
  • 動脈相で強く造影されることが特徴であり、動脈相を含めて撮像することが必要。門脈相では周囲肝とほぼ等吸収値を示し、検出率が低下する。
  • 古典的肝細胞癌との鑑別が問題となることがある。
  • 胃癌や通常乏血性に分類される結腸癌であっても、多血性転移のパターンを示すことがあり、しばしば診断に苦慮する。

動画で学ぶ多血性肝転移(インスリノーマからの転移)

石灰化を含むもの

  • 転移巣にしばしば石灰化を認めることがある。
  • 化学療法後に石灰化が顕在化することもある。
  • 胃癌や大腸癌からの転移に多い。大腸癌の場合、肝転移に石灰化が30%程度でみられるとされている。
  • 原発腫瘍の組織型に関係なく、原発腫瘍にも石灰化がない場合も、肝転移では石灰化を伴うことが多いことも知られている。

症例 40歳代男性 S状結腸癌 化学療法中

石灰化を有する転移性肝腫瘍のCT画像所見

肝両葉に石灰化を有する多発腫瘤あり。

石灰化を有する多発肝転移を疑う所見です。(化学療法により石灰化はより顕在化(化学療法前非提示))

脂肪肝がベースにある場合

  • 腫瘍と背景肝とのコントラストが減弱し、腫瘍が指摘しにくくなる。

嚢胞と鑑別が困難なもの

  • 粘液成分が豊富な腫瘍や壊死が高度な転移では、嚢胞と区別が困難なことがある。

MRでの注意点

  • 小さな肝転移と肝血管腫の鑑別に苦慮するときは、heavily T2で血管腫は高い高信号を示すことを参考にする。

参考)

  • 画像診断 Vol.43 No.11増刊号 2023 P118-121
  • 画像診断2010年2月 転移の画像診断 肝、胆、膵 東京大学 佐藤次郎先生

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