放射線科専門医過去問頻出問題 治療【乳癌】

乳癌 ・乳房温存療法
=乳房温存術+全乳房照射(接線照射)±ブースト照射                    50Gy    10Gy
・全乳房照射には 4‐6 MV の X 線を用いる。
・相対的禁忌:強皮症、 SLE 、部分的な断端陽性、35歳以下あるいは閉経前でBRCA1/2の変異を有する場合。
・絶対的禁忌:妊娠中、または患側乳房、胸壁への照射の既往がある症例
・腋窩リンパ節に可動性リンパ節を触知しても温存療法は可能。手術の際にリンパ節郭清をすればいいから。
・ただし、腋窩リンパ節転移が 4 個以上の場合のみ同側鎖骨上窩への照射が必要である。
・MLD(maximum lung distance)が2.5cmを超えないように計画する。
・放射線肺臓炎は照射後2-3(6)ヶ月後にピーク。

 

乳房温存療法

・乳房温存術=乳頭、乳輪を温存し、腫瘍を中心とした乳腺を部分的に切除する術式。センチネルリンパ節生検陽性の場合は、腋窩リンパ節郭清を行なう。
※ただし、術前腋窩リンパ節転移が明らかな場合はセンチネルリンパ節生検を行なわずに腋窩リンパ節郭清を行なう。

・全乳房照射は生存率の向上に寄与する。★
※温存術後の放射線治療を省略すると局所再発は3倍増加。死亡リスクが8.6%増加する。(J Natl Cancer Inst96:115-121,2004.&Lancet 366:2087-2106,2005)

・術後病理検査で断端陰性の場合でも全乳房照射する(GradeA)。

乳房温存療法=乳房温存術+全乳房照射(接線照射)±ブースト照射
                50Gy/25回    10Gy/5回
※約10%に対側乳癌が発生し、そちらにも温存術後照射を施行する可能性がある→対側の乳房は照射野から外す
乳頭は必ず含む
腫瘍床に対する10〜16Gyのブースト照射により乳房内再発のリスクを減少する。全例に行なうことが推奨されているが、切除範囲が欧米より広いことや線量増加が美容結果に及ぼす影響への懸念から断端近接あるいは陽性例に限ってブースト照射を追加している施設が多い。ただし、若年者(40歳以下)ではブースト照射による局所再発抑制効果が大きいので、断端陰性でも考慮すべき。

・乳房温存術後の乳房照射において乳房内制御を不良にさせる上位因子は断端陽性若年齢(35歳以下)

・全乳房照射には 4‐6 MV の X 線を用いる。★
※日本人の平均的乳房サイズに対して10MV 以上の X 線は不適当である。

・腫瘍床に対する 10~16Gy のブースト照射により乳房内再発のリスクを減少させることが推奨されている。

腋窩に可動性リンパ節を触知しても温存療法は可能
※乳房切除術、乳房温存手術どちらの場合でも、基本的に腋窩リンパ節郭清はおこなう

DCIS(非浸潤性乳管癌ductal carcinoma in situ)においても乳房温存療法が有用である。

強皮症の患者には禁忌である。
※皮膚炎、間質性は胃炎のリスクが非常に高いため。
※相対的禁忌:強皮症、 SLE 、部分的な断端陽性、35歳以下あるいは閉経前でBRCA1/2の変異を有する場合

妊娠中、または患側乳房、胸壁への照射の既往がある症例は絶対的禁忌である。
相対禁忌や絶対禁忌症例に対しては乳房切除術(全摘術)を施行する。

・傍胸骨リンパ節転移が疑われる場合には手術切除が原則である。× 傍胸骨リンパ節の放射線治療は推奨される根拠がないようだが。

腋窩リンパ節転移が 4 個以上の場合のみ同側鎖骨上窩への照射が必要である。(NCCN practice guidelines in Oncology-v.2.2007)(エビデンスレベル3、推奨A)。

・センチネルリンパ節生検で陽性の場合には腋窩郭清後に腋窩への照射は必要ではない。

※乳癌の所属リンパ節は腋窩・鎖骨上窩・胸骨傍リンパ節の3つ。
※このうち腋窩は郭清が原則。
※胸骨傍リンパ節領域の照射は、同部位の再発を減らすが、生存率の向上については一定の結果がない。よって、胸骨傍リンパ節領域の照射は推奨される根拠はない

・MLD(maximum lung distance)が2.5cmを超えないように計画する。
※これを超えると放射線性肺臓炎のリスクが増大する。
※リスクの予測因子としては、V20(20Gy以上の線量が当たる肺野の容積の割合(%))やMLD(mean lung dose(Gy))。
※放射線肺臓炎は照射後2-3(6)ヶ月後にピーク。すぐは起こらない。治療はステロイドのみ。

・温存術後照射と化学療法の同時併用は避ける。
※化学療法が必要な症例では術後まず化学療法を行ない、その後で術後照射を行なう。同時にはダメ。

乳房切除術

・適応となるのは原則としてⅢ期の乳癌。

・腫瘍径が3cm以上と大きい場合、
・乳癌が乳腺内に広範囲に広がっている場合、
・複数の腫瘍が乳房の離れた場所にある場合、
・温存術後に何らかの理由で放射線治療を受けられない場合
・患者が希望する場合
などにも行なわれる。

・妊娠中であれば、温存療法(=温存術+放射線療法)は行なえないので、適応である。
※妊娠は放射線療法の絶対禁忌。

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