脳アミロイドアンギオパチーとはどんな病気なのでしょうか?脳内に微小出血を起こしますが、高血圧性脳内出血との違いはどんなところでしょうか?

今回は脳アミロイドアンギオパチーについてまとめました。

脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy:CAA)とは?

  • 全身性のアミロイドーシスに関連しない皮質、皮質下、髄膜の中小血管壁へのアミロイドβの沈着に起因する脳血管障害である。脳小血管病の一つ。
  • 60歳以上の半数に認められるとされ、高齢者ほど頻度が高い。
  • 小脳にも病変が見られうるが、基底核、視床、深部白質、脳幹は保たれやすい
  • 時間的・空間的に多発することが多い(再発を繰り返す脳葉型出血(皮質下出血))。
  • 大脳皮質から皮質下白質に至る皮質下の血腫で、しばしば近傍にくも膜下出血を伴う。(高齢者で脳表に限局するクモ膜下出血、特に円蓋部の陳旧性SAHあるいは脳表へジデローシスで外傷なければCAAを考慮。くも膜下出血は髄膜のアミロイド血管症を反映。アミロイド血管症は、くも膜下腔の小動脈に好発する。)
  • 出血は特に頭頂葉後頭葉に優位に分布する傾向にある。
  • 高齢者(55歳以上)の皮質下出血の20-40%を占める。
  • 初期は無症状であるが、徐々に一過性の神経障害、認知機能の低下をきたす。脳出血発症前にはすでに認知機能障害あり。
  • 徐々に進行するアルツハイマー型の認知障害を呈する。アルツハイマー病の人には96%認められる。
  • 白質脳症を合併することがあり、U-fiberを含み腫脹を伴う白質病変(詳しくは後述)を呈する。
  • 確定診断には病理診断

cerebral amyloid angiopathy

臨床的には(Boston criteria)で以下の3点をチェック。
  1. 脳葉、皮質または皮質下に限局した多発性脳出血、ただし小脳に見られてもよい。
  2. 55歳以上
  3. 他に出血の原因がない

ことを認めれば、probable CAA(正診率100%)、単発だとpossible CAA(正診率62%)。ただし基底核領域に出血があれば除外される。

脳アミロイドアンギオパチーのMR所見は?

  • 通常のMRIでは特徴的な所見は認められない。
  • T2*強調像磁化率強調像(SWI:susceptiblity weighted image)を用いると多数の陳旧性微小出血をとらえられるが、特に磁化率強調像がその検出に優れている。
  • T2*強調像を用いた検討では、微小出血の分布は高血圧性脳出血群では、側頭葉・後頭葉に多く、アミロイドアンギオパチー群では頭頂葉に有意に多いとの報告がある。
  • 皮質下出血の他、クモ膜下出血、硬膜下出血、白質脳症、髄膜の増強効果を生じることあり。

脳アミロイドアンギオパチーによる出血と高血圧性脳出血の鑑別は?

T2*強調像で高血圧性脳出血の好発部位である被殻や視床などに、

  • 微小出血がある高血圧性脳出血
  • 微小出血がないアミロイドアンギオパチー
  • また、アミロイドアンギオパチーはくも膜下出血を伴うことが多く、皮質からの皮質下白質に多数のmicrobleedを認めるため、分布や数も重要な鑑別点となる。
症例 60歳代男性

microbleed

両側基底核や視床、放線冠、皮質下に多数の微小出血あり。

両側基底核や放線冠には多数のラクナ梗塞あり。

被殻、視床にも出血があるので高血圧性の出血と分かる。

症例 60歳代男性 被殻や視床などに微小出血がなく、アミロイドアンギオパチー疑い。

cerebral amyloid angiopathy

被殻や視床といった部位には微小出血は認めておらず、皮質下に複数微小出血を認めています。

出血の分布から、アミロイドアンギオパチーによる出血が疑われます。

症例 80歳代男性 皮質下出血あり。被殻や視床などに微小出血がなく、アミロイドアンギオパチー疑い。

cerebral amyloid angiopathy1

こちらの症例も高血圧性の脳出血を来しやすい部位には微小出血を認めていません。

右後頭葉に脳葉型出血を認めています。

出血の分布からも高血圧性脳出血よりもアミロイドアンギオパチーがより疑われます。

鑑別診断

高齢者の非外傷性円蓋部のくも膜下出血を見た場合は本症を鑑別に考慮する必要がある。高位円蓋部の非外傷性くも膜下出血のその他の原因としては、

  • 動静脈奇形/動静脈瘻(AVM/AVF)、
  • 動脈解離
  • 静脈血栓
  • 血管炎
  • reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)
  • PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)
  • 高度の動脈狭窄
  • 心内膜炎
  • 凝固異常
  • 膿瘍
  • 海綿状血管腫(cavernous malfbrmation)
  • 脳腫瘍など が挙げられる

高齢者において、白質脳症やPRES様の血管性浮腫を見た場合、多発する脳表の出血が存在すればこの組み合わせで本症と診断可能である。

アミロイドアンギオパチーは出血だけではありません。アミロイドアンギオパチーによる炎症/白質脳症 cerebral amyloid angiopathy-related inflammation/leukoencephalopathyも起こすので注意しましょう。

アミロイドアンギオパチーによる炎症/白質脳症cerebral amyloid angiopathy-related inflammation/leukoencephalopathy

cerebral amyloid angiopathy

  • アミロイドアンギオパチー(CAA)による白質病変。亜急性期の認知障害痙攣などで発症。
  • 沈着したアミロイドβに対する炎症反応と考えられている。
  • 多くの症例でステロイド剤、シクロフォスファミドにより高信号は減少ないし消失する。
  • 片側優位にT2*WIでmicrobleedsを認め、その領域に皮質下の高信号を認め、臨床所見が合致すれば診断される。
  • 血管炎によると思われる髄膜の増強効果、小血管性慢性虚血の結果としての特異的脳萎縮も見られうる。
  • T2WI/FLAIRで皮質下を中心に左右非対称の高信号を示す。時に皮質も高信号を示す。
  • 軽度の浮腫を認め、拡散強調像では異常を示さない。

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